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 駅直通、街で買い物をすると言えばここ。と大々的に宣伝しているのが今いるスーパーである。ここで何をしているのか、それはもちろんアルバイトだ。


「いらっしゃいませ、商品お預かりします!」


 お客様に笑顔を見せながら話しかける。担当は基本的にレジ。


 業務内容自体は簡単で、お客様が来たらレジ打ちをするだけ。暇になった時は、品出しをしている事もある。


 レジ打ちの間にやる事とと言えば、お金の受け渡しとポイントカードや袋の確認のみ。レジは半自動なので、お金を突っ込めば勝手に計算してもらえる超楽仕様。駅直通で客も当然多いが、セルフレジが多く導入されており、レジに並ぶ人数はそれなりといったところだ。


 これだけ楽な仕事で、給料もそこそこ貰えるのだからやりたい人は多いと思うかもしれない。実際、パートをしているおば様方には人気な仕事だろう。


 しかし、実際仕事をやってみると辞めていく者も多い。その理由も幾つかあるのだが、今まさに目の前で起きているも主な理由の1つだろう。


「どうなっているんだ、これは!」


 前方2つ前の3番レジ、アハトとそれほど年齢の差が見えない少女が、くたびれたスーツを着た50歳前後の男に怒鳴られている。


 怒鳴り声はレジ周り一体に響き渡っており、怒鳴られているレジの少女だけでなく、並んでいる客や違うレジの店員までも萎縮してしまっている様子だ。


「お前が!今、袋に入れたパックご飯!パンに潰されてる!どうしてくれるんだ!」


 怒声を聞くに、どうやら袋に入れたパックご飯がパンに潰されたと怒っているらしい。基本的にレジ係の裁量に任されてはいるが、店の方針としては商品詰めを断っている。


 しかし、彼女は商品詰めを引き受けたらしく、そのせいで文句をつけられているようだ。こういういざこざがよく起こった故の、商品詰めお断りという方針である。


 そうなると、彼女が怒られているのもあまり擁護できないが、あのおじさんに限ってはそうとも言えない。


 毎週決まった曜日、時間に彼はこのスーパーにくる。そして毎度の如く、レジ店員の粗探しをして怒鳴りつける。それも若い女性店員か気の弱そうなパートの女性店員を狙ってだ。


 偶々、他のレジが混んでいる時にこちらまで来た事があるが、その時はこちらを睨みつける程度で、今みたいに怒鳴ったりはしていなかった。


「申し訳ありません!今、代わりをお持ちしますのでお待ち頂けますか?」


 レジ係の少女は下手も下手に話しかけている。安牌な選択ではある。が彼相手では、増長させるだけで効果がない。現に今、目に見えて調子に乗り始めている。


「代わりなんて要らん。これをタダにしてくれ」


 毎回、こんな風にゴネるので誰も相手をしたくないのだが、何故か出禁にされていないので誰かは相手をしなくてはいけない。


 本当に最初の頃は社員が間に入って対応していたのだが、何を言われたのか放置しておけと言われてしまった。なので誰も助けに入らないのが現状だ。


「そう言われましても、無料にする事はできかねます」


「じゃあ、何なら出来るんだ?俺を納得させることができるなにかをしてくれるんだろうな?」


 レジ店員の少女は今にも泣きそうな顔をしている。しかし、自分を含めて誰も助けに入ろうとしない。まるでこの場ではこの男に逆らってはいけない、そんな雰囲気が漂っていた。


「すいません」


 レジ打ちの途中で手を止めて黙って現場をみていると、対応中だった客が話しかけてくる。


「助けに入らないのですか?」


 その声には聞き覚えがあった。そう、昨日初めて聞いた声。客の方をみるとそこにはまだ学生服を着ているアハトが立っていた。


「お前、どうしてここに」


「要る物を買いに」


 よく見ると彼女の手には色のついた袋がある。これは上の階で服を買った時についてくる袋なので、着替えを買いに来たところか。


「そ、そうか。助けに入ると言っても、俺にはそんな権限ないからな。異能力者ならばまだしも」


「気づいていないのですか?あのおじさんは私や貴方と同じ異能力者です」

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