第15話 フジマウンテン越え

イースはジェガンの小屋を出ると、森の中をどんどん抜け、フジマウンテンを目指した。


季節が秋になり、フジマウンテン周辺の動物や魔獣は冬眠前に栄養を蓄えるため、活動が活発になる。


イースが森の中を進んでいくと、Cランク魔獣のフジウルフ、フジスタッグ、フジボア、フジベア、フジスネーク等が次々にイースを襲ってきた。


イースはジェガンとの鍛練のおかげで戦闘技術が上がり、その結果、ほとんどの魔獣を素手で倒して、食料にしていた。


イースは1人で野宿しながら、一週間くらいでフジマウンテンの入口に到着した。


フジマウンテンには、Cランク魔獣の他に、この時期はAランク魔獣の竜種のワイバーンやヴァジリスク等も現れる。


そのため、この時期にフジマウンテンを越えようとする旅人はいないのが常識だ。


が、イースは学校にも行っておらず、町でも情報を聞いていない常識外れのため、何の疑いも無く、ジョーカー連邦への最短ルートのこの道を進んでいた。


もし、イース以外に、この時期にこのルートを進む者がいれば、それは一秒でも早くジョーカー連邦に行く必要がある者だけだ。


イースは1人でCランク魔獣を退治しながら進んでいた。


イース「何か動物多いな。人もいないし。才能ある人達は、きっと動物なんて気にしないで、さっさとすすんでるんだろうな。やっぱり才能無しの俺とは違うんだろうな。」


イースはそんな事をぼやき、キセルを吸いながら歩いて行く。


イース「キセルも最初は苦しかったけど、もう慣れちゃったな。というか無いと吸いたくなるから逆にきついよ。」


イースの独り言は止まらない。


ぼっちだからだろうか、気づくと1人て話していた。


イース!

ぼっちやめて仲間を作ろ!

話相手作ろ!


天の声が突っ込むのだった。


イースは野宿しながらフジマウンテンの頂上を目指して進んでいく。


半月後、イースはフジマウンテンの頂上に着き、ジョーカー連邦に向かって山道を下る。


すると、空に複数のワイバーンの姿を発見した。


イース「羽の生えたトカゲか。けっこうでかいな。食べるところはありそうだな。」


ワイバーン達はイースに向かっていき、足でイースを掴むと、空に戻ろうと羽ばたいた。


イースを高いところまで持ち上げ、落として殺すつもりなのだろう。


イースはワイバーンの足を逆に掴み、地面に叩きつけた。


イースは地面に叩きつけたワイバーンに拳を何回も叩きつけた。


イースの拳がワイバーンの首にヒットし、首の骨をへし折るとワイバーンは絶命した。


イースはワイバーンを一匹仕留めると、次々にワイバーンを殺していく。


イースが戦った後ろの地面にはワイバーンの死体の山が築かれていた。


イースはそのワイバーンの死体の山の上に座り、キセルを吸う。


さながら、どこかのアニメに出てきそうな悪役のようだった。


イースがキセルを吸っていると、後方から爆発音が聞こえ、よく見ると、数人の冒険者のような人達がフジウルフの群れと交戦していた。


イースは思う。


戦闘系の才能かな。

爆発起こせるとか、やっぱすごいな。


と。


冒険者のような人達は、誰かを守りながら戦ってるようで、数が多いフジウルフにおされていた。


そのうち、冒険者のような人達とフジウルフの群れがイースのところまで移動してきた。


冒険者「皆!姫だけは絶対に守れ。必ずジョーカー連邦にお連れするのだ。」


他の冒険者のような人達は返事をすると、その後ろにいた


金髪のサラサラロングヘア、胸にはメロン2つ、クビレがあるがお尻には張りがあるイースと同年代の女性がいた。


女性が必死の形相でイースの方に逃げてきた。


そして、女性がイースの姿を見て固ま。


次に冒険者のような人達とフジウルフの群れもイースを見ると固まる。


イースは1人、何も起こっていないかのようにキセルを吸い続ける。


フジウルフは、イースを見ると唸りながら後退りしたかと思うと、どこかに逃げて行ってしまった。


姫と呼ばれる女性と冒険者のような人達はイースを見てから動かない。


イースはキセルを吸い終えると、黙って立ち上がり、荷物を持って山を下り始めた。


イースは


才能ありの人なら狼くらい大丈夫だよな。動物だし。

てか、狼逃げちゃったし。

何で逃げたんだろ。

この人達には勝てないと思ったのかな。


と思っていた。


天の声は


違うよ!イース!

あれ、動物じゃなくて魔獣だから!

あとフジウルフが殺されると思った相手はイースだから!

見て!さっきまで座ってた場所!

ワイバーンの死体の山だよ!

そりゃ、そこに座ってるイースは怖いでしょ!

もう誰が見ても、魔王だよ!

だから人間側もビビって固まってるんだよ!


と突っ込む。


イースの勘違いは続くのであった。


イースがその場を離れて行くと、女性と冒険者のような人達は、その場で座り込んでしまう。


女性「これはいったい・・・」


冒険者「ワイバーンの死体の山を築きあげるなんて人間じゃないですよ。きっと魔王の一角では無いでしょうか。」


女性「私達は殺す価値も無いと思われて見逃してもらったのね。」


冒険者「姫様。あんな化け物がいるところからは一刻も早く離れましょう。」


女性「そうね。急ぎましょう。」


こうして、女性達も山を下っていく。


先に出たイースは、下山ルートから少し離れたところで野宿したため、いつの間にか女性達に抜かされていた。


いずれにしても、イースもジョーカー連邦の手前まで来ていたのだった。

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