第3話

「あの廣澤っておとこにはよからぬ

噂があるのよ」

杏奈の親友、葉杉美穂が会社の帰り

居酒屋で杏奈にそっと耳打ちした。

「悪い噂って?」

「女の子をだましては風俗に売り飛ばして

マカオや東南アジアにも送り込んでるって」

「まさか」

わたしは笑い飛ばそうとしたけど

なぜだか顔がひきつっちゃったの。

そういう、危なげなところも廣澤さんの

最大の魅力のひとつでもあるから。

そのときふいに大寺くんの顔が

浮かんだんだけどね。

「まっ、オトコは金だからしかたがないか」

「大寺くんにわるいかな」

「まだつきあってるの、あの貧乏人と」

美穂が呆れたように泡盛を飲み干したわ。

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