第5話
その翌日にはダンジョンの調査を始めるのに、キエラの雲移動で即座に移動。入り口に到着したら、まずはミュラーが人型からも本性に戻すだけでなく、さらに体格を立派なものに変化させた。
『どれだけ反応するかだよな!!』
雄叫びを上げ、手前にいるらしい魔物を誘き寄せる。彼が口にした通り、どれだけたむろっているかわからないからね。弱い強い関係なく、フェンリルの雄叫びに反応して対抗してくるか様子を見るのは僕らの初手のひとつだ。
慣れてはいるが、耳を突き抜けるかのような大きな声は相変わらず威力がすごい。少し距離を置いても至近距離と同じくらいに聞こえるんだから。それがダンジョンの入り口でも岩壁で音が反響するから魔物たちにはたまったもんじゃないだろう。
少し待つと、中から人影のようなものが出てきた。
『ギャーギャー!』
『グギギギ!!』
『ギイギイ!!』
ゴブリン、オーク、オーガとかが出てきた。個体としてはノーマルクラスだけど、僕らの敵じゃないね! 数も十数体程度ならミュラーひとりで対処出来る。
『リュート! 狩っていいか!?』
「いいよ! 思いっきりやっちゃって!」
『よっしゃ! 空破斬!!』
ミュラーの口から風魔法が現れ、それがいくつもの風の刃に変化してから魔物たちに突撃していく! 当然、風の速さだから彼らには避けられない。弱いゴブリンはすぐに真っ二つになったが、オークやオーガは固いから裂傷を負ったとかの個体が何体かいた。それでも、今の攻撃でだいぶ数は減ったね。
『次は我の番だ』
キエラが僕の隣で右腕を前に出した。既に準備は出来ていて、中には何故か桜のはなびらを巻き込んだ雲の塊。何をしようとしているのだろう?
「キエラ? それは?」
『村の美しい桜を散らそうとするかもしれんからな。少し木に力をわけてもらった。派手に動くぞ!』
ふっと塊に向けて息を飛ばせば、その塊も瞬時に残っていた魔物の上に移動した。そして弾け、首とか体に木の蔓と雲のふわふわとした縄が巻き付き。それらが体を締め上げて、彼らは泡をふいて息絶えた。実にキエラらしい戦闘方法だ。
『あ~。キエラ、あたしの分―!』
『まだ中にいくらでもいるだろう。コアを壊さぬ限りいくらでも沸いて出てくる』
『むー。じゃ、次の先導はあたしにやらせて? リュート』
「いいよ」
綿ウサギって特殊な魔物ということもあって。可愛い見た目に反して実は結構強いんだよね。ライラも本性に戻りながら地面に降り、たんって足が着いたと同時に尻尾の大きな綿をふるふると震わせて分身体を作った。
『むふふ~? おいでおいで? 弱い弱い魔物たち?』
可愛い声でちょっと怖い発言をしているけど、一番戦闘狂であるのはミュラーよりもライラなのだ。分身をさっさと奥に出動させたら、ものの数秒で阿鼻絶叫が僕らの耳に届く。今回も容赦していないのだろう。
それは本来の目的のひとつだから大丈夫。奥に進んでコアを見つけなくちゃいけない。村に被害を及ぼす前に、壊さないと脅威が去らないからだ。
「僕も取りこぼしは対処するから、みんな頑張って!」
『『『承知!』』』
僕だって徒手空拳くらいは昔のルーノと鍛えただけでなく、冒険者となっても鍛錬をしてきたからちょっと強くはなっている。だから、みんなと連携して次々に来る魔物らを討伐していったんだけど。
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