ダンチューバー!
@suritati333
第1話 初ダンジョン!
「おいおい、あれだろ今話題のヒューマンでダンチューバーなろうとしてるやつ」
とある酒場でモニターを見ながら盛り上がるおじさんたちがいた。
「昔はいたけどなーヒューマンでも挑戦する奴ら、なんでまた今更挑戦しようなんて思ったんだか」
この人たちが言う通りヒューマン族には攻略者がいない、何故なら魔法が使えない上に身体能力までもが低いため戦闘には向いていないからだ。
「まあ憧れる気持ちは分かるがな、なんたって攻略者は華がある」
攻略者のほとんどはダンジョン攻略を配信にのせており、沢山の人々に見られる仕事となっている。そのため誰もが一度は夢見る職業であり、娯楽の少ないこの世界では最も注目される存在である。
「よく見たら天空族のお守り付きかよ」
「おっ、初戦闘が始まるっぽいぞ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここは異種族国家イーストンの東に位置する第一ダンジョンの二層
そこに現れるモンスター、ホーンラビットに対峙するはヒューマン族の少年アルス。
「アル、本当に大丈夫?」
その少年の後ろで天空族の少女ソフィエルは心配そうにアワアワと忙しなく動いている。
「大丈夫だって、これくらい」
そう言うと同時にアルスは地面を蹴りホーンラビットへと向かい走り出す。
(最初は足に魔力を集中...それから、その魔力を腕に流して叩き切るっ!)
「ふんっ!」
ヒューマンの少年が放った一撃は目の前にいたホーンラビットの胴体を真っ二つに切り裂いた。
第二層に現れる最弱の魔物スライムの次点で弱いとされるホーンラビット、しかしヒューマンからすればそのツノも己の命を奪い得る危険な凶器に足る。
そのホーンラビットを真正面から切り伏せたヒューマンの少年はドヤ顔をしながら後ろにいるソフィエルの方を向いた。
「な?言ったろ、大丈夫だって」
「大丈夫?本当に?怪我はない?」
ソフィエルはすぐにアルスに駆け寄ると、そのふんぞり返ったドヤ顔についていた返り血をハンカチで拭き取る。
「あ、ちょっ、やめろって」
ほっぺたをハンカチでブニブニと揉まれ返り血を拭き取られていく。
「一応ね、[ヒール]」
ソフィエルがヒールの呪文を唱えるとかざすと、手が緑色に光り癒しをアルスの体に届ける。
「怪我なんてしてないって!」
むーっと嫌がるアルスを強引に回復させるソフィエル、何を隠そうこの天空族の少女、とんでもなく過保護なのである。
7年前迷宮でアルスを拾って以来、この少年は幾度となく怪我をしてきた。小石で躓いては膝に擦り傷を、段差で躓いては膝にかさぶたを。
空間把握能力が低く身体能力も低い、それなのにも関わらず危険な行動を繰り返しすぐに怪我を負う最弱の種族ヒューマンを実の家族の様に思い一緒に過ごしてきた当時のソフィエルは思った。
(アルには私がいないとダメなんだ)
「これでよしっ、でどうする?もう帰る?」
「ホーンラビットも楽勝そうだし、もうちょい狩ってく」
そう言うとアルスは次の獲物を探し求めダンジョンの奥に歩いて行った。
ソフィエルは「えーー」なんて言いながらもアルスの後ろをてくてくと着いていったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます