探偵が謎と恋を解き明かしていく。

柊銀華

PROLOGUE

「お願い! 私のボディーガードになって!」

「はい?」

(いきなり、何?)


 春見頃の桜が散り、葉桜が生い茂ようとしてきた頃に1人の男子学生に女子学生がお願いをすることをきっかけに人生が一変することとなった。




 事件とはなにか。

 人が事件を起こすのではない。事件が人を起こす。

 これは、とある映画の名言であり、サイコパスの心理とも言える。

 人が犯罪をする動機は簡単でもあれば、難しいでもある。人の心は揺らぎやすく、簡単に犯罪に手を染めてしまう。

 欲に駆られたと言われれば、それでおしまい、というわけにはならない。どれだけ人を憎み、怒りがあろうとそれを律する理性があれば犯罪は起きないのだ。

 しかし、人間の誰しもが犯罪をする。間違えを犯す生き物であることに変わりない。

 どんなに理性で押さえつけようとも、ちょっとしたきっかけで犯罪をするのだから。


 そして、すべての犯罪を対処するのが警察の仕事である。しかし、警察官も人数にかぎりがある。時間にかぎりがある。時間が過ぎれば過ぎるほど起こした事件へ意識が薄れていくのだ。

 だが、薄れていく事件を独自の方法で調査し解決していくエキスパートがいる。

 それは――探偵だ。

 探偵とは浮気調査から色々と情報を集めるエキスパートだ。だが、薄れていく事件を推理して解決するのが探偵の仕事ではなく、警察の仕事だ。でも、不可解な死、不可解な謎に直面して解決していく探偵がいる。


「明らかに不自然な死体だな。凶器もなければ遺留品もない。全くもって理解できん」

「自殺でしょうか?」


 死体を前に警察官2人が議論する。しかし、偶然、通りかかった探偵が死体を見て助言する。


「殺人だよ。それ」

「え?」

「はっ?」


 いきなり背後から声を投げ込まれ、警察官は振り返る。振り返れば、黒髪の青年がいた。顔立ちは日本人。だけど、瞳の色が従来の日本人と異なり、黒と藍のヘテロクロミア。美形の顔立ちから察するに高校生か大学生だと警察官は判断する。


「失礼だが、キミは?」

「俺? 俺はしがない探偵さ」


 青年は自己紹介することもなく、自分のことを探偵と自称した。

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