エピローグ代わり(結婚二十九年目)母校にて
うちの高校は山の上にあった。駅から徒歩20分。
延々と坂と階段を登るんだけど、何なら遅刻しそうになると走るんだけど、あの頃は当たり前のように登校していたなあ。
―
―
「…若さって…偉大だったんだな…」
成井「…良くもこんな坂を毎日毎日…」
平田(成井の奥さん…旧姓ですがお許しを)「もう…いやあ」
タクれば良かった。駅から懐かしいあの坂を堪能しようとか…言い出したの俺だわ…
?「ほら~皆さん、もう少しですよ!ファイトです」
「「「…」」」
もうすぐ還暦の三人衆を尻目に、そこだけ時間が止まったがごとく、往年の
『
今は亡き、ゆうこちゃんの忘れ形見。
多分…俺の娘…
「ま…真夜ちゃん待って…道分からないでしょ?」
真夜「平気ですよ?こちらです!」
「…」
平田「…」
成井「…行こうか…桂木」
「…ああ」
九州でのゆうこちゃんの告別式から数ヶ月。
真夜ちゃんは約束通り横浜に出てきてくれた。
今日は、懐かしの母校見学。
真夜ちゃんと俺と…親友の成井夫婦。
そして…中華街では…劉ちゃんの血縁でうちの
―
―
―
「なんかもう…一周回って知らない学校だな…」
成井「…ほんと」
最後に特大の坂を登ると校舎の前にグラウンドが立ちはだかる…その辺りまでは覚えているんだけど…40年近く前の記憶はなかなか実物とは重なってくれず、先に見える校舎の…敷居の高いこと。
「…最初は職員室だよな」
成井「…それどこだよ」
「…まあ、下駄箱のとこで聞くしかないだろ」
真夜「…こちらが職員室ですよ」
「「「…」」」
さっきから真夜ちゃんが…自分の学校みたいに先導してくれている。
成井「ね…ねえ真夜ちゃん」
真夜「はい?」
成井「なんで…そんなに詳しいの?」
真夜「…ここ私の母校でもあるんですよ?」
「「「…へ!!?」」」
真夜「…と言うのは、もちろん冗談で」
「「「…」」」
真夜「実は10年前に来たことがあるんです。母と」
10年前、真夜ちゃん25歳の頃、ゆうこちゃんは真夜ちゃんと母校訪問をしていたという。
中学校の教師だったというゆうこちゃんは、真夜ちゃんにはいつも凛とした印象だったそうだけど、母校訪問のときのゆうこちゃんはびっくりするくらい子供っぽくて…「あのときの母の顔は…今でも思い出せるんです」…そう言って笑う真夜ちゃんの顔こそ…俺たちにはゆうこちゃんと重なって見えたんだ。
(画像)
https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818093083315448616
成井「しかしさ…ここまで来てたんなら…普通俺たちに声掛けないかな…ゆうこちゃん…」
平田「…ほんと」
「ゆうこちゃんらしいわ…」
ほんと頑固なんだから…
―
―
―
「…ここだったな」
成井「…ああ」
放送室の機械は、最新のものにかわっていて…俺たちには全く馴染みが無かったけど…今は倉庫になっている控え室の丸テーブルは…あの頃のままだった。
平田「ねえ…あなた…桂木くん、お花を」
成井「…ああ」
ここに…みんないた。
みんないたんだ…
もう…会えないけれど…みんな…
「…なあ、平田ちゃん。昔を思い出して何か朗読を」
平田「死んでも嫌!」
―
―
―
「…行こうか」
成井「…ああ」
平田「…うん」
真夜「…はい」
職員室にお願いして…二輪の花を置かして貰った。
親友だった劉ちゃんとゆうこちゃん。
二人が天国で…再び会えていることを祈って…
俺たちは母校を…離れたんだ。
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