動物達の愚痴
水瀬 由良
レッサーパンダ
「だいたい、パンダと言えば俺だったのによ」
レッサーパンダが地面を前足で大きく叩いて言った。顔はそのまま正面に向いている。
うん。まぁ、そうだよにゃ。いつもの聞き役。ネコですにゃ。不満を抱えている動物仲間は多い。そんななかで、ネコのボクはそんな不満はあまりにゃい。だって、家で飼われているから、腹ぺこになることも少ないし、外敵も少ない。ぬくぬくの布団で寝ててもいい。そんなわけで、不満の少ないボクが皆の不満の聞き役だってこと。
レッサーパンダ。レッサーパンダ科でどちらかというとアライグマに似ている。立つ姿はなかなかにかわいいと評判の人気者にゃ。
ちなみに、ジャイアントパンダはクマ科の動物なので、そこからして違う。
そうむかーし、むかし。パンダと言えば、今のレッサーパンダだった。
「全く、後で見つかったくせにあのジャイアントパンダがパンダになって、おかげで俺はパンダ剥奪だよ。は・く・だ・つ! くそーっ腹が立つ」
「うんうん。そうにゃね。でも、君も人気者じゃにゃいか」
「確かにそうだけど。でも、俺が腹が立つのはそこじゃないんだ。なんで、俺がパンダのままで、あいつがジャイアントパンダにならなかったんだ。おかげでレッサーってついちまって、ジャイアントと何もなしじゃどうしていけなかったんだ」
確かに、それはその通りにゃ。
ジャイアントパンダが通称パンダににゃったもんだから、レッサーパンダはレッサー、『より小さい』の意味がつけられてしまったにゃ。そのままでもよかったと思うんだけど。今や客寄せパンダのパンダといえば、ジャイアントパンダにゃ。
「小さいってそんなにダメかにゃ?」
「いや、違うんだ。深い問題は『レッサーデーモン』というやつの存在だ」
レッサーパンダが地面を叩いて、今度は顔まで伏せていた。
「確か、下級悪魔? 何が関係するにゃ?」
「そう、それだよ!」
「?」
首をかしげる。
「下級ってとこだよ! あいつらのせいで『レッサー』パンダって下級パンダ? ぷーっクスクス、とか言われるんだぜ」
それはひどいにゃ。でもにゃあ、それはジャイアントパンダのせいじゃなくて、人間がするゲームとか他のファンタジーとかのせいではにゃいか。
「せめて、レッサーデーモンがいなけりゃマシだったんじゃないかって思うんだ……」
「それはひどい話にゃね。レッサーパンダさんは人知れず、勘違いの被害者だったってことだね」
「分かってくれるか……誰だ、俺のことをレッサーパンダなんて言いやがったやつは……」
また、地面が叩かれた。
こんな風にして、ボクのところにはいろいろな動物が愚痴を言いに来る。誰よりもなんか話しやすいって言われたら、断る理由もないからにゃ。それに確かに同情すべきところもあるし、聞けば皆スッキリして帰って行くからそれはそれでありって思えるのにゃ。
きっと、また他の動物がボクのところにやってくるのにゃ。
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