1つの足音

天川裕司

1つの足音

タイトル:(仮)1つの足音



▼登場人物

●三条 楓(さんじょう かえで):女性。26歳。独身OL。美人。

●郷田健人(ごうだ たけひと):男性。40歳。ストーカー・強盗犯人。本編では「郷田」と記載。

●古川優斗(ふるかわ ゆうと):男性。35歳。ストーカー・強盗犯人。本編では「古川」と記載。


▼場所設定

●楓のアパート:少し小さな民営アパートのイメージで。部屋までには階段付き。

●街中:夜道や路地裏など一般的なイメージでOKです。


NAは三条 楓でよろしくお願い致します。

(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む=3553字)



イントロ〜


皆さんこんにちは。

皆さんはストーカーや強盗に襲われた事がありますか?

夜道を1人で歩いている時に、そんな犯罪者に

追い駆けられたりしたらたまったもんじゃないですよね。

でもどんなにこちらが警戒しても、

そういう事件は向こうからやってくるもの。

そんな時にどうして対処すれば良いのか?

今回はそんな悲惨な目に遭ってしまった、

ある女性にまつわる意味怖エピソード。



メインシナリオ〜


ト書き〈会社帰りの夜道〉


私の名前は三条 楓。

都内の某IT企業で働いてる26歳になる独身OL。


プライベートも仕事もとりあえず順調で、

あとは良い人を見つけ、結婚(ゴール)に辿り着ければ言う事はない。


楓「ふぅ。今日も遅くなっちゃったな」


最近、仕事が忙しく、帰るのはいつも真っ暗になってから。

今日も残業を押し付けられた挙句、日がとっぷり暮れてから

1人夜道を歩いて帰る事になってしまった。


こんな時、一緒に帰ってくれる友達でも居てくれたら良いのだけれど、

会社の同僚はみんな私と家が逆方向で、一緒に帰れる友達も上司も居ない。


楓「しょうがないか。早く帰ろ」


まぁ働き始めればこういう事は普通にあるもの。

女ならこんな状況で1人帰るのはどうしても怖いもんだが、

いずれはやっぱり慣れなきゃならない。


ト書き〈奇妙な感覚〉


そうして帰っていた時。


楓「ん?…なんだろ…」


何か私は背後に人の気配のようなものを感じた。

誰かに見られているような、付けられているような、

そんな感覚がうっすら漂い始めたのである。


辺りは真っ暗。

街灯が少ないこの路地を通るのが近道でもあったから、

私は毎晩この道をとりあえず選んで帰っていた。


「まぁ滅多な事は起こらないだろう」

そんな風に自分を奮い立たせて帰っていたのだが、

いざこんな状況になってしまえば、

「やっぱり遠回りしてでも人目の付く大通りを選んで帰るべきだった」

となるのは仕方なかった。


楓「ウソでしょ…。へ、変な人じゃないわよね…」


気配はだんだん強まってきて、

確実に私は今見られている、付けられている…

その思いが心の中で膨れ上がり、

私は思わず早歩き…そして走り出してしまった。


でも、そうして小走りになった時だった。

たったったったと言う足音がはっきり後ろから聞こえたのだ。


楓「ヤ…ヤダ!本当に追っかけられてる!」


その時まではまだ半信半疑だったのだが、

そうして足音がはっきり聞こえてしまった以上、

「今自分は確実に追いかけられている」

と認めざるを得ない。


そして…


郷田「クソッ!走んなや!!」


古川「お嬢ちゃん、待てよぉ〜!」


はっきり背後から2人組の男達の声が聞こえた。

ひとけがまるでない事から男達はかなり大声でそう叫び、

ほぼ全力で私を追い駆けてくる。


その路地を抜ければ少し広い通りに出る。

そこまで行けば人目が付くかもしれない。

だから後ろの男達はその通りへ出るまでに私を捕まえ、

自分達の欲求を満たそうとしている…!?


そう思ったらもう気が気じゃなくなり、

私は「きゃあ〜!」なんて叫びながら同じく全力疾走。


でも男達と違うところはヒールを履いてる事。

それを脱いでる暇もなく走ってたものだから…


楓「きゃあ!!」


と言って私は派手に転んでしまった。


郷田「へっへへ!そんな急いで走ったりするからだぜぇ!」


古川「オイ!大人しく言うこと聞けやコラ!」


2人のガタイのでかい男が私のすぐ背後まで追いつき、

1人が懐からナイフを取り出し、私に斬りつけてきた。


楓「きゃあ!!や、やめてぇ!」


持っていたショルダーバックを切り裂かれてしまい、

柄(え)の部分が斬られた事からカバンは道端に落ち、

私はそれを回収する間もなくとにかく逃げなきゃならない。


楓「ハァハァ!」


こけた時にヒールが脱げたのがよかった。

また携帯電話と財布、そして自宅アパートの鍵は

カバンじゃなくポケットの中に入れておいたのが良かった。


「カバンを取られたって別に大した事はない!」


そう思い直し、とにかくもう後ろを振り向く事なく

そのまま全速力で少し開けた通りまで走る。


こう見えても私はけっこう足が早い。

それに体力もまぁまぁあったから何とか男達を引き離し、

その路地裏を抜け出る事ができた。


楓「ハァハァ…追ってこないようね…よかった…」


目の前には何人かの通行人がいた。

それを見て「助かった」と思った。


ト書き〈その後〉


でもそこから家に帰るまでの道を歩いてた時、

私はもう1つ大きな不安を覚えてしまった。


楓「ヤバいかも、あいつら家まで追ってくるかしら」


あのカバンの中には身分証明書が入っており、

私が今住んでるアパートの住所もそれを見れば分かってしまう。


私はとりあえずすぐ家に帰りたくなり、

帰ってからすぐ警察に通報しようとした。

とにかく家に帰れば安心できる…その思い1つで。


(アパート)


そしてやっとの思いでアパート前まで来た時だった。


楓「え…!?」


急いでアパートの階段を駆け上っていた時、

その周辺にあの2人組の気配がまた感じられたのだ。


案の定、暗闇の中からニュッと出てきたのは…


郷田「へっへ〜wここに住んでたのかぁ〜」


古川「お嬢ちゃん、俺達とイイ事しようぜぇwそのあとはちゃんと殺してやるからよ〜」


楓「きゃあ!」


私はすぐ部屋に駆け込んだ。

部屋のすぐ前で追いつかれたのがまだよかった。

ここでも何とか助かった。


そして部屋に戻った途端、

私は最近やってるニュースの事を思い出していた。


ここ界隈で最近、ストーカー犯罪、

強盗事件がけっこう頻繁に起きている。


犯人は男2人組と推定されており、

被害者のほとんどが殺されていた。


楓「あ、あの男達に違いない…」


そう思った私は更に怖くなり、すぐ警察に連絡した。


でもその直後、アパートの階段を上ってくる足音が聞こえた。


楓「ウソでしょ、まだ来るの…」


私が住んでるのは普通の民営アパート。

誰でも簡単に階段を上って部屋の前まで来れてしまう。


どうやらそのとき階段を上ってきたのは1人のようだった。

足音が1人分しか聞こえてこない。


さすがにアパートに篭られたらもう無理だとし、

1人は諦めて帰ったのだろうか。

もう1人は欲望に長(た)け、それでも我慢できずに

ここまで上ってきている。


楓「きっとそうに違いない…」


でも、私の部屋のドアの前でヒソヒソ話をしていたその男は、

やっぱり諦め、通路を通り階段を降り、帰ったようだ。


その男の足音だけが小さく鳴り響いていた。


でも警察が来るまでの間、

どこかから部屋に入ってこないだろうか?

と私は無性に心配になってしまい、確認しようとした。


足音は確かに遠ざかり消えていった。

だからもう大丈夫だろうと私は少しだけ

玄関に出てドアを開けてみた。



解説〜


はい、いかがでしたか?

それでは簡単に解説します。


ストーカー・強盗犯罪が頻繁に起きていたその界隈に、

主人公の楓は住んでいました。


しかも住んでいたのは普通の民営アパート。

セキュリティが余りしっかりしてないのは周知の通りです。


そこで楓は夜道を1人で歩いていた時に、

2人組の男に追い駆けられてしまいます。


ナイフを持って切り付けてきた事から、

2人がそこら辺の一般人でない事は確か。

そうこの2人こそ、巷を騒がせていた

ストーカー・強盗殺人の犯人だったのです。


そしてやはり楓は身分証明書から住所を見つけ出されてしまいます。


そしてアパートまで追いかけてきた2人組。


楓は帰ってすぐに警察に通報しました。

でもその直後、階段を上ってくる足音が聞こえます。

その足音は楓の部屋のドアのすぐ前まで来ました。


そしてヒソヒソ話をした後、その足音は通路を通り階段を降り、

やがて小さくなって消えてしまいます。


この階段を上ってきた足音は1人分の音。

楓はこの時、自分を追いかけてきた男の内、

1人が部屋の前まで来たのだと思ったのです。


まぁ状況から見ればそう考えるのも不思議じゃないですね。


でもそこに意味怖ヒントのカラクリがありました。

注目すべきはドアの前でしていたヒソヒソ話です。


ヒソヒソ話とある以上、会話が想定されます。

そんな状況から独り言なら

そんな大きな声で言う事もないでしょう。


そう、このとき男たち2人は、実は一緒に上ってきていました。

歩調を合わせ足音を1つにしてしまえば、

1人が上って来ているように聞こえますね。

つまり楓はこれに騙されたのです。


そしてドアの前から1人が立ち去ったように思わせ、

もう1人はドアの後ろに隠れています。

ヒソヒソ話はその簡単な計画の打ち合わせ。


なのでドアを開けてしまった楓は

おそらく無事では済まなかったでしょう。


そのまま警察が来るのを

部屋の中で待っていればよかったのですが、

通報した事による安心と、部屋の中だからもう大丈夫、

と言う2つの安心が楓の心を緩めてしまい、

つい警戒心を解いてしまったのでしょうね。


何とかアパートの他の住人がそれに気づいて

楓を助けてくれたら良いのですが。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=OgOwfPxVJXA&t=49s

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1つの足音 天川裕司 @tenkawayuji

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