タイミングが悪い
天川裕司
タイミングが悪い
【意味怖】タイトル:タイミングが悪い
▼登場人物
●小坂順二(こさか じゅんじ):男性。30歳。サラリーマン。とにかく間が悪い。
●従業員:男性。30代。宅急便の兄ちゃん。
●工員:男性。40代。大型デパートで工事している。
●住人:女性。30代。順二が住んでいるマンションの住人。
▼場所設定
●順二の自宅:都内の高層マンション。20階建て。エレベーターあり。順二は10階に住んでいる。
●バス停:最寄りのバス停。普通のイメージで。
●大型デパート:順次の行き付け。
●エレベーター:一般的なイメージで。
NAは小坂順二でよろしくお願いいたします。
(イントロ+メインシナリオ+解説=3482字)
イントロ〜
皆さんこんにちは。
皆さんはこれまでに、
「あー俺って/私ってタイミング悪いなぁ」
なんて、自分のタイミングの悪さ・間の悪さに嫌気が差した事はありますか?
今回はそんなタイミングの悪さに人生を決められた、或る男性にまつわる意味怖です。
メインシナリオ〜
俺の名前は小坂順二。
今年30歳になる普通のサラリーマンだ。
しかし他の人達に比べて普通じゃないのは、とにかく間が悪い・タイミングが悪いと言う事。
・数秒の差でバスや電車に乗り遅れる
・1万1人目のお客様として店に入る
・昨日まで予定が空いていたのに、遊ぼうと誘った時に限ってその友人は予定を作ってしまう
・電話すればその相手は席を外している
・それまでは完全に目覚ましで起きる習慣だったのに、受験日や面接日に限って目覚ましが鳴らなかった
・気になる人とはいつもすれ違う
・自分に好意を寄せてくれた人が電話をかけてくれる度、俺は留守
他にも沢山あるが、とにかく間が悪い。
順二「はぁ、俺ってどうしてこう間が悪いんだろ。タイミングの引き寄せとかあれば、それをぜひマスターしたいよ。この先も思いやられるなぁ」
自分と言うものに嫌気が差して、毎日、ため息ばかりついている。
ト書き〈店に行く〉
店主「あー!惜しい!あと1人早ければあなたが1000人目のお客様として、こちらの景品と賞金を差し上げたのに!」
最寄りの店に行った時、またこんなふうに言われた。
順二「(はぁ。もうわかってるよ、いつものこった)」
でも出来ればタイミングよく店に入り、景品も賞金も貰いたかった。
ト書き〈自室で旅行計画を立てる〉
そんな或る日、俺は気分を変えようと、1人旅行の計画を立てた。
そして現地のホテルを予約しようとネットで予約しようとした時…
順二「お、1部屋だけ空いてるじゃないか!やったやった!」
珍しくタイミングよく予約できそうだった。
しかしまたその時…
ト書き〈宅急便〉
従業員「すいませーん、宅急便でーす!」
順二「ちっ!また俺のタイミングを悪くしようとしてるな!ちょっと待ってろ!よし、先に予約しておいてと!はいはーい!」
俺は日頃のタイミング悪さに腹が立っていたから、宅急便の兄ちゃんを少し待たせ、先にホテル予約を済ませてから玄関に出た。
従業員「有難うございましたー」
そして部屋へ戻り、またパソコンへ向かう。
すると…
順二「あ、あれ?!予約できてないじゃないか…なんで?」
しっかりマウスをクリックし、そのホテルの部屋を予約できたと思っていたのだが、どうも別のアイコンを押していたらしく、結局、俺はその部屋を予約できていなかった。
しかもちょうど玄関に出て帰ってきたその間に、他の客がその部屋を予約していた。
順二「んだよーもう!めちゃくちゃ腹立つなぁ!結局こうなる運命なのかよ俺はぁ!!」
自分の要領の悪さにも呆れてしまう。
確かにタイミングの悪さは、俺の要領の悪さに引き寄せられるところもあったが、今回のように、俺が要領悪くなるのは決まって何かに急かされる時。
外部からの刺激、誰かに何か言われる、用事を言い付けられる、そんな経過があったればこその間の悪さ・タイミングの悪さだったのである。
ト書き〈バスに乗って買い物〉
順二「はぁー、もう嫌んなってくるなぁ実際。俺の人生って一体何なんだろ。…あ、そうだ」
俺はその日、在宅ワーク用のメモリーカードを買いに行く予定だった。
近くにデパートや電気屋は無いから、自宅から最寄りのバス停へ行き、バスに乗って近場の街まで行かねばならない。
ト書き〈バスが出たばかり〉
順二「はぁはぁ!」(走ってる)
バス停から数十メートル離れたところで、もうバスが来ているのを目の当たりにした。
猛ダッシュでバス停まで向かったが、俺がバス停に着く直前にバスは発車した。
順二「ちくしょうー!またかよ!いつも遅れて来やがるくせに、なんでまた今日に限って早く来やがるんだよ!」
俺が何かする度に、まるで世間は俺の邪魔をしてくる。
そんなふうにさえ思われた。
順二「これで30分待ちかよ…」
俺が住んでいるのは郊外だから、次のバスが来るまでに30分掛かる。
ト書き〈店で事故〉
それから根気よく30分待ち、デパートに着いた。
俺はいつもこの大型デパートを利用している。
ちょうどデパート横を通っていた時…
工員「あ、危なーい!」
順二「え?!」
頭上から工員の声がした。
どうやらそのデパートは、更に屋上付近で建て増し工事をしていたらしい。
そこでミスがあったらしく、大きな鉄板が何枚か落ちてきた。
鉄板の音「ガシャアァアン!!」
順二「お、おいおい!何だよこれ!あっぶね〜!」
ちょうど俺の前方を歩いていた子供は、鉄板が落ちた場所から僅か数メートル向こうを歩いていたので無事だった。
工員が慌てて走ってきて、いろいろ事故処理をしていた。
順二「(ったく!気を付けろよ!一歩間違ったら殺人だぞお前!)」
そんな事を思いつつまた歩き始めたその瞬間…
順二「痛ェッ!!」
今度は金槌が上から落ちてきて俺の頭に当たった。
工員「だ、大丈夫ですか申し訳ありません!すいません!すいません!」
順二「おい!気を付けろ!この野郎!馬鹿野郎!!」
平謝りの工員に俺は思いきり怒鳴った。
帽子をかぶっていたので、実際にはそれほど大した事なく、痛みもすぐ引いた。
さんざん悪態ついた後、仕方が無いのでまた歩き出し、メモリーカードを買いに行った。
工員は「一緒に行きますから病院へ!」と俺を何度か誘ったが、大した事なくまた面倒くさかったので、買い物を終えた後そのままマンションへ帰宅した。
ト書き〈鍵を失くす→エレベーター事故〉
順二「はぁ〜!今日はとんでもない目に遭っちまったなぁ!ちくしょう!」
ぶつぶつ文句を言いながら、エレベーターに乗る。
俺が住んでいるのは都内の高層マンション。20階建て。
俺の部屋は10階だから、いつもエレベーターを利用する。
そして部屋の玄関前に辿り着いた時…
順二「あれ?!無い!無いぞ!」
部屋の鍵が無いのに気づいた。
順二「くそー!どっかで落としたんだ!」
かと言ってどこで落としたのか判らない。
探しに行くにも当てが無い為、また面倒くさく、俺は大家に頼んでマスターキーで部屋のドアを開けて貰おうとした。
住人「あ、大家さんなら、たった今出かけちゃったとこだよ」
順二「マジでか〜!」
またしてもタイミングが悪い。
仕方なく、俺は大家が帰って来るまで待つ事にした。
でももしかするとカバンのどっかに入り込んでるだけかも知れないと、俺はカバンの中を漁りながら鍵を探し、自室の玄関前で待っていた。
するとそこへさっきの住人がやって来て、
住人「あ、大家さん帰って来られましたよ。今何か用事で14階に行かれてると思います」
と言ってくれた。
これ幸いとすぐ俺はエレベーターに乗り込み、14階のボタンを押した。
しかしエレベーターは下へ向かった。
タイミングが悪い。
まるで動力が切れたように、エレベーターは階下へ向かう。
向かいながら、
「まぁこれで俺もタイミングの悪さに悩む必要(こと)も無いか」
と思った。
解説〜
はい、ここまでのお話でしたが、意味怖の内容は分かりましたか?
それでは簡単に解説します。
順二はとにかくタイミングが悪く、その間の悪さで悲惨な生活を送ってきました。
そんな或る日、メモリーカードを買いにデパートから帰ってきた順二は、どこかで部屋の鍵を紛失しているのに気づきます。
探すのも面倒くさいと順次は大家に頼み、マスターキーで部屋を開けて貰おうとしましたが、大家はいません。
仕方なく順次はまた10階の自分の部屋の前に戻ります。
そこでカバンの中を漁りながら鍵を探していました。
そして他の住人から大家が戻って来た事を知らされます。
でもそのとき大家は、何かの用事で14階に上がっていました。
順二はそれを聞き、10階から14階にエレベーターで向かおうと乗り込みました。
けれどまた間が悪かったのか、エレベーターは階下へ降りていきます。
階下で、誰かがエレベーターのボタンを押したのでしょうか?
実はそうではありません。
「まるで動力が切れたように、エレベーターは階下へ向かう」
ここに注目すると分かりますが、実はこの時、エレベーターは故障していたのです。
ワイヤーが切れ、10階からそのまま1階へ落下しました。
だからこそ順次は、
「まぁこれで俺もタイミングの悪さに悩む必要(こと)も無いか」
と思い、その事で悩まなくても良いという一瞬の解放感を味わったのです。
ちょうどエレベーターのワイヤーが切れる時に乗ってしまった事も、やはり順二のタイミングの悪さのなせる業・・・言えるでしょうか。
なんとも痛ましい、悲しい意味怖でしたね。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=PcpidJVM0fU&t=67s
タイミングが悪い 天川裕司 @tenkawayuji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます