夢の中に現れた女性の姿をした狐の告白にOKしたら、本当にお嫁になってました
カイン・フォーター
第1話 ある日の夢
「はぁー!?なになにコイツ!?私が怒らないからって調子に乗ってー!!」
時刻は夜の22時。
友達とスマホでメッセージを交換して遊んでいると、1人の友人が爆弾を投下した。
それは、とあるクラスメイトのSNSでの裏垢を見つけたと言うもの。
しかもその内容と言うのがまあ酷い!
「『学校で五本指に入る美少女に告ったけど、適当に濁すだけで逃げられた。だから売れ残るんだよ』…舐めてるねぇ…私のこと完全に舐めてるねぇ!」
このクラスメイトはつい今日の夕方に、私に告ってきた男子生徒だ。
その生徒はあんまり私とは気が合わない奴で、彼自体は私の事は好きみたいだけど、私は嫌いだった。
かと言って、自分に好意を向けてくれている相手に、『私、あなたの事が嫌いなの。だから無理』なんて言えるわけがない。
だからやんわりと断って、逃げてきたんだけど……こういうのが彼の嫌いなところ。
2面性?裏表が激しい?
そういう、あんまり信用できる人間じゃないところが、彼の印象を悪くしている。
裏垢でこういう事をしてるから女子から嫌われるのよ!
「というか、なにが売れ残りだ!寄ってくる奴全員下心丸出しすぎるのよ!そんな相手、好きになる以前に信頼できるかっ!」
売れ残っていると言われ、私は怒り心頭。
チャットでその事を友達に伝えると凄く笑われたが、同意はしてくれた。
そして、こんな返信がくる。
『てか、ホントに彼氏作らないの?せっかくの花の高校生なのにさ』
花の高校生。
人生の絶頂。
青春のど真ん中。
確かに彼氏の1人や2人は欲しいけど…なんというか、優良物件はほぼ取られてる。
もちろん、良い人は残っているし、好感が持てる男子は結構いる。
だけど、それ止まりだ。
なにせ、そういう男子は私が近づくと逃げてしまう。
挙げ句『迷惑だ』と言われてしまうほど。
なんでかは知らないけど、私から距離を詰めることが出来ないからあっちが近付いてくるの待っていると、結局彼氏ができず。
気付けば取り残され、あのクラスメイトの言う通り、『売れ残り』になりかけていた。
「はぁ…やっぱり、私からアプローチする方が良いのかなぁ?」
動機が不純すぎて、好きでもない人に私からアプローチするのは辞めようと思っていたけれど、それじゃ本当に売れ残る。
かと言って、それに焦って無理矢理彼氏を使っても長続きする未来が見えないし、その人にも悪いし失礼だ。
やっぱり、自分から告白するなら本気で好きになれる人じゃないと!
「…何処かに、心の底から好きって思える人居ないかなぁ?」
そんな独り言をつぶやき、友達にはそれを見せたり聞かせたりせず、夜も更けてきたので寝ることに。
布団に潜ってすぐ、今日はなぜだかすぐに眠ってしまった。
「…ふえっ?」
気が付くと、何処か知らない神社の前に居た。
戸惑ってあたりを見渡すと、狛犬の代わりに狐の…石像?でいいのかな?
まあ、狐版の狛犬みたいなのがある神社に居た。
「夢…?」
ずいぶんと、意識のはっきりした夢だ。
明晰夢ってやつかな?
経験はあるし、別におかしな話でもないんだけど……夢にしては変な感じ。
別に神社に行ったわけでも、今日神社に関する話を見聞きした記憶もない。
夢に出るほど神社…得に稲荷神社なんかには関わった覚えは無いんだけど…
「ちょっと散策でも…」
「なら、私と一緒にしませんか?」
「うわっ!?」
突然後ろから声をかけられ、驚いて飛び退く。
振り返ると、そこには狐の耳と尻尾を持つ女性が居る。
身長は私とそんなに変わらないくらいの、おおよそ160ちょいくらい。
小さくて整った顔立ちは、私みたいな子供とは違って、妖艶な大人の美が詰まっている。
薄めの和服を着て、胸元から確かな谷間を覗かせるその胸は…人より大きな胸を持つ自負のある私よりも大きい。
そして、肌は血色が良く、髪の毛はオレンジを帯びたような黄色い髪。
その髪が、大体胸の位置まで伸びている。
「えっと…誰ですか?」
突然現れた美女を見て、困惑しながらもそう聞いてみる。
「私は…『風花』と呼んでください」
「フウカさん?…はい!わかりました」
狐の女性はフウカと名乗った。
変わった名前だなぁと思いつつ、私は質問をする。
「あの…ここは一体?」
夢にしては出来すぎている。
そんな考えから、まだ混乱している頭でそう聞いてみた。
「ここは…夢の中ですよ。そんな事より、私と一緒にお散歩をしませんか?」
「はい?…まあ、いいですけど」
何故か散歩をしたいと言い出すフウカさん。
別に苦ではないのでそのお願いを了承し、一緒に神社の外側へ向かう。
「その…お名前をお伺いしてもいいですか?」
「はい。私は『
フウカさんは名前を教えてくれたんだから、私だって自己紹介しないとね?
「えっと、17才で得意なことは編み物。嫌いなことは勉強です。あと、好きな食べ物はいなり寿司ですね!」
「そうなんですか…私と同じですね?」
「え?そうなんですか?」
いなり寿司が好きなのは、見た目からしてそれっぽいけど…編み物得意で勉強が嫌い。
なんだか気が合いそう。
「私も、よく編み物をしています。そして勉強が嫌いで、いつも怒られてばっかりで…」
「ホントですか?私も昔はお母さんによく怒られてたなぁ〜。…今は今で、『スマホなんて触ってないで勉強しろ』って怒られてますね」
「ふふっ、サユリさんのお母様は素敵なお方ですね?」
楽しくお喋りをしながら歩いていると、私はふと異変に気が付いた。
さっきから神社の階段を降りているけれど…一向にしたにつかない。
別にそこまで長い階段には見えないのに…まるで、ウォーキングマシーンに乗っているかのように全然進んでいない。
「…なんか、前に進めないんですけど?」
「私が進めないようにしてますからね」
「…ん?」
進んでいないことをフウカさんに話すと、そんな事を言われた。
…私の聞き間違いかな?
「あの…この階段はいつになったら終わりますか?」
「終わりませんよ。…それよりも、実は一つ聞いていただきたいお願いがありまして…」
「えっと…なんでしょう?」
華麗にスルーされ、別の話を始めるフウカさん。
この時点で、違和感を覚えていた。
そして、その違和感は次の言葉で確信に変わる。
「その…サユリさん。私の、お嫁さんになってもらえませんか?」
「……はえ?」
突然の求婚に、思わずそんな声が出てしまった。
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