第307話 フリシア救援6、殲滅
エリカたちが風呂から上がってきたので、俺とシュミットが次に風呂に入り二人して大いにエキスを注入したが、今日は大使殿がいなかったのでシュミットは少し物足りなかったようだ。
早めに風呂から上がったが、昼食が遅かった関係で夕食には早そうだ。エリカたちに聞いたところ、夕食は7時ごろでいいと言われたので俺はステージに上がってペラと一緒にリンガレングを待つことにした。
日はまだ暮れていなかったが、瓦礫とか無数に散らばった死体とかの関係でけっこう雰囲気が薄暗い。
幸いなことはリンガレングがきれいに処分してくれている関係で血はほとんど流れ出ていないので血の臭いはしないうえ、まだ腐敗が始まっていないようで死臭が漂ってこないことだ。
そういう意味で、長閑な戦場だ。
周りを見渡していたら旗を立てた兵隊の一団がこっちに向かってやってきた。
フリシア軍の旗の識別などできないので確実ではないがウーマを見ても落ち着いている感じからしてフリシア軍本陣にいた部隊の一部だろう。
立場上ステージの上で上から目線で話してもいいが、要らぬ反感を買う必要もないのでペラともどもウーマから降りて、死体が比較的少ない場所に立ってその一団を待った。
「ライネッケ閣下。フリシア軍次長ヨハンセンと申します」
「どうも。何かありましたか?」
「見たところ、死体だらけで敵の姿はみえませんが、戦況はどうなっているのでしょうか?」
「御覧の通り敵をたおしているんですが、敵が逃げ散ったようで思った以上に殲滅に時間をとっています。ですが、一人も残さず確実に仕留めますから安心してください」
「一人残さず仕留めるとは、20万の敵を一人残らず?」
「はい。わたしの連れてきたカラクリのクモが確実に仕留めていってます。
敵が逆襲してくることはありませんから、城の警戒は解いてもらってもいいかもしれません。
腐り始めるまでに死体を片付けた方がいいでしょうから、すぐにでも死体の片づけを始めた方がいいかもしれませんよ。いずれにせよ死体の数は敵の数の20万出来上がりますから」
「わ、分かりました」
フリシア軍の次長たちのうち二人ばかりが来た道を引き返していった。本部に報告に戻ったにだろう。あとの連中はそのまま城の正門に向かって歩いていった。こっちは城の中に俺たちのことを含めて状況を伝えるのだろう。
ペラと二人してウーマの甲羅に跳び乗ってステージの上に戻った。
彼らを見送って10分ほどしたら城の中から歓声が聞こえてきた。城にどれほどの兵隊が籠っていたのかは知らないが、歓声はいつまでも続いた。
時刻は午後6時を回り東の空はだいぶ暗くなってきた。
リンガレングは依然戻ってこないのだが、フリシア軍の次長たちは城から出て引き揚げている。
そろそろ夕食の準備を始めようとペラを残してウーマの中に入り、作り置きの料理を皿に盛りつけていった。
魚がないので肉料理が続いているのだが、今日のメインは牛肉のステーキにすることにした。
付け合わせの野菜は、蒸かしたイモにバターをのっけたものと、ニンジンとインゲン。
スープはコーンスープ。サラダはタマネギの薄切りを水でさらして、その上にショウユベースのドレッシングをかけたもの。主食は軽く焼いて焦げ目をつけたパン。
飲み物は、各自に任せることにした。
ステージの上で見張りに立っているペラも呼んで。
「「いただきます」」
肉の焼き加減は各人好みがあるようだが、全員一律でミディアムで仕上げている。
「なかなかリンガレング戻ってこないみたいだけど、まさかフリシア軍に襲い掛かってるってないわよね」
「ないとは言い切れないけど、リンガレングは頭がいいからそういったことはまずないんじゃないか」
俺たちからすれば、フリシアの兵隊を多少削ったところで大したことないわけだが、シュミットはそうでもなかったようだ。
「シュミット。今のは冗談だから。リンガレングに限ってそんなことは絶対ないから安心していいぞ」
先ほど『ないとは言い切れない』と言った舌の根が乾かぬうちに前言を撤回できるとは。俺もそうとうだな。
少々死人が出たところで目撃者が全員いなくなってしまえば犯行は明るみに出ないはず。たとえ彼らの死に方が西欧諸国連合の兵隊たちと同じであったとしても政治的に言ってたんなる戦争での尊い犠牲と片付けられるはず。その辺りはフリシアの王さまは理解しているだろう。
「今夜中にはかたがつくと思うけど、明日にはツェントルムに向けて発てるな」
「帰る前に王さまにあいさつくらいした方がいいんじゃない」
「うん。リンガレングが帰ってきたら報告がてらあいさつしておくか」
……。
食事の後は玉子と牛乳を使ったプリンを提供した。玉子さまさまだ。
エリカたちの『おいしい』合唱を聞きながら俺もプリンを食べていたら、上のハッチが開いてリンガレングが階段を下りてきた。
「マスター。リンガレング任務完遂しました」
「リンガレング。ご苦労。
それで、仕留めた敵の総数は?」
「21万3015です」
「随分いたな」
フリシア軍の兵隊を
「敵の野営地は見つけたか?」
「はい。郊外に野営地が5カ所ありました。野営地内の敵兵は殲滅しましたが、指示通り野営地はそのままにしています」
「よくやった。
野営地内にはそれなりに物資があるようだったか?」
「はい。荷馬車、荷車などに物資が積まれていました」
「荷馬車ということは馬がいたんだな。馬はどうした?」
「馬はそのままです」
「了解」
馬は放っておくと可哀そうだが半日くらいなら何ともないだろう。
「それじゃあ、フリシア軍の本陣に戻って作戦完遂を報告してこよう。
ウーマ。今日の昼頃訪れた建物の広間まで移動してくれ」
下向きの加速度をわずかに感じた後ウーマは方向転換したようだ。あと5分もしたらフリシア軍の本陣に到着だ。
「リンガレングはステージの上に上がって周囲の警戒だ」
「はい」
リンガレングは音もたてずに階段を上っていきあっという間にハッチの向うに消えた。
王さまに報告することになるので鎧を着ていた方が格好がつくと思た俺は急いで鎧を身に着け始めた。
「わたしたちは行かなくていいかな?」
「俺とシュミットだけでいいだろう」
「じゃあ、お願いね」
「うん」
ウーマが橋を渡って方向転換した。鎧を身につけながらスリットから外を眺めた道にはかがり火がたかれて兵隊たちが道のわきに座り込んで何かを食べていた。彼らはウーマの姿を認めた順に食事の手を止めて何も言わずに立ち上がった。
ウーマが本陣の建物の前に到着したところで俺とシュミットだけがウーマから降り、建物の玄関に向かって広場を歩いていたら、玄関から王さま数人の兵士、それに大使殿とハンナ・クラインが現れて俺の方に歩いてきた。
「おそらく広範囲にわたって敵兵の死体が転がっていると思いますから、早めに片付けた方がいいと思います」
おそらく、ここにまでにウーマは敵兵の死体をかなり踏みつぶしていると思うけど、片付けるの大変だよな。わざわざ言わんけど。
「それと、敵の野営地もきれいに掃除しましたが、馬が残っているので早めに面倒も見てやってください」
「掃除とは?」
「敵兵を殲滅したってことです」
「なるほど。
ライネッケ殿。いや。ありがとう」
「ライネッケ大侯爵閣下。本当にありがとうございました」
王さまの言葉の後、王族は頭を下げることなど普通はないのだが、大使殿が頭を下げながら礼を言ってくれた。大使殿が頭を下げたことで王さまの護衛らしき兵隊たちもハンナ・クラインとルーカス・シュミットも慌てて俺に頭を下げた。
「敵は片付けましたので、われわれは明日の朝にでもここを発ってツェントルムに帰ろうと思います」
「城へ招待したかったのだが」
「それはまたの機会にでも」
「承知した。その時を楽しみに待っていますぞ」
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