第158話 青の東2。再び柱に
23時。青い階段前でウーマが停止したので、そこでベッドに入った。翌朝まで眠ったといっても朝の4時には目覚め、朝の支度を始めた。
朝食を食べ、もろもろを片付け終わり準備完了した俺たちはウーマを下り、リンガレングを先頭にして青い階段を上り始めた。
階段はつるつるして光沢がある。どうもヒスイのようだ。ヒスイの価値は分からないがタダの石より高いんじゃなかろうか。
階段がヒスイということは、階段を上がった先で俺たちを待ち受けているかもしれないモンスターはヒスイの巨人の可能性がある。
階段の石を引っぺがすのは気が引けるが、ヒスイの巨人をたおした残骸は俺たちのものだ!
今さらだけど。
前回同様階段を上がり切る前にリンガレングが駆けだして、すぐに何かが壊れる音とそれに続いて重いものが床に落っこちた振動と砕けたような音が聞こえてきた。
階段を上り切り、床の上に立ったリンガレングを見るとリンガレングの辺りに艶のある砕けた緑の岩が沢山転がっていた。
登場することなく去っていったモブの気持ちになってみた場合。この部屋の中にダンジョンができた時からズーっと何もすることなくボーっとしていたらいきなりクモの怪物に襲われて命を落としたわけで、そのやるせなさがひしひしと俺の胸を打つ。というわけでもなく、俺は嬉々としてヒスイと思しき残骸をキューブに拾っていった。
「何かここにいたんだろうけど、リンガレングにかかるとわたしたちが姿を見る前にたおされちゃうわけね」
「その方が楽だからいいんじゃないか?」
「それはそうだけど」
今まで同様、階段正面の壁の横にバトンの穴がいていてそこにバトンを挿入したら、壁がゆっくり沈んでいきその先に緑の部屋と緑の祭壇が現れた。
祭壇の真ん中にはやはりバトンの穴があったが宝箱はなかった。
そこから階段部屋までの道筋はこれまでとほぼ同じですぐにたどり着くことができた。
となると次は11階層の泉に囲まれた小島ということになる。
ここもリンガレングを先行させ黒スライムをたおしてから階段を上って行くことに。
「リンガレング、任せたぞ」
『はい。マスター』
リンガレングが飛び跳ねるように階段を上って行き、すぐに戻ってきた。
『マスター、処理完了しました』
「ありがとう」
ということで、リンガレングはそのままキューブ行きとした。
階段を上ると、階段の脇にはちゃんと宝箱が鎮座しており、泉は白く凍り付いていた。
宝箱の中身はまたポーションだった。つまりは黒スライムの毒を浴びた者への救済処置ということなのだろう。
宝箱を回収してから砕けた氷の上を通り、俺たちは階段部屋を目指していった。
途中一度小休止を入れ、5時間ほど歩き渦の前にたどり着いた。ここもこれまでモンスターに遭ってもいないし、ワンジョンワーカにも出会っていない。嫌な予感がする。
渦を抜ける前手を出したところ、壁だった。予感というより予想通りだった。
「やっぱりここも閉じていた。どうなってるんだろうな?」
「何かあるのかも?」
「何かとは?」
「この渦とか、閉じた渦を開ける方法よ」
「つまり、どこかこことは別のところで何かすれば渦が開くということ?」
「そう。柱の5階層も同じで何かすれば開いたかもしれないわ」
「となると、また女神像の登場かな?」
「そうかもしれない。それかあのモニュメントか」
「俺たちにはウーマがあるから気軽に行ってこいできるけど、ウーマがなければ絶対どうしようもないな」
「逆に言えばそのためにウーマが手に入ったってことじゃない?」
「確かに。
しかし、渦の先が気になるな」
「でも、どうしようもないわけだから諦めましょ」
「それしかないけどな。
そろそろ昼だから、ここで昼休憩しよう」
「そうね。渦の前で昼食となるとちょっとだけ新鮮じゃない?」
「新鮮ではあるけど、あまり意味はないよな」
「まあね」
昼食は作り置きのハムと野菜のサンドイッチとスープとした。テーブルを出しての立ち食いだ。
渦の前での食事は、前世で言えば車のこない車道に寝っ転がっているような少しの罪悪感があった。
昼食を終えて、後片付けも済ませた俺たちは、壁沿いに座り込んで少し休憩し、時刻にして12時半には緩めていた装備を整えて帰路に就いた。
帰路も何事もなく、小休止を一度挟み午後6時には13階層の階段下にたどり着いた。
ウーマに乗り込み装備を緩めながら次の目的地は柱の1階層の中心、女神像が鎮座していた祠の前だとウーマに告げた。
ここから祠までの距離は1450キロ。48時間。丸二日になる。
柱の中に入ってからは果物を採れたが、基本的に丸二日、料理をするくらいしかすることがなかった。食材のうち魚介類は底を突き、それ以外の食材はあるが、とうとう作った料理を入れる皿などが底を突いてしまった。
その間、ワイバーンを4匹ペラが撃ち落としている。その結果キューブの中のワイバーンは30匹になった。
ウーマが1階層のジャングルを抜けてそろそろかなというところでみんな装備を整えスリットから前方を眺めていたらウーマがジャングルを抜けて空き地に出たところで
ここまでいろいろあったので、最悪祠ごと女神像がどこかに消えてしまうことも考えたが、少なくとも祠はちゃんとその場に建っていた。
祠の前で止まったウーマから降りた俺たちは祠まで歩いて行ったのだが、祠の中にはある意味予想通り女神像はなかった。
特に誰も驚いてはいないようだ。
「女神像無くなってるね」
「こういうこともある。前回もあったしな」
「どこに行ったと思います?」
「可能性があるのは、この柱の5階層。あそこの扉が今は開いてるんじゃないかな?」
「でも、わたしたち、それっぽいこと何もしていないけどそんなことあるかな?」
「確かに。となると怪しいのは4階層のモニュメント」
「ありそうですね」
「しかし、行ったり来たりばかりだな」
「それは言えてる」
「ウーマさまさまだな」
「ですね」
「とりあえず、もう午後6時だから、階段前まで移動してそこで1泊して明日の朝階段を上ろうか」
「うん」「はい」「了解」
ウーマに乗り込んで1時間。上り階段前にウーマは到着し停止した。
俺たちはその間に装備を外し普段着に着替え夕食を済ませている。
翌朝。
午前5時。朝食を済ませ装備を整えた俺たちは階段を上り始めた。
1時間半後、階段上のエアロックを抜けて2階層に到着した。
そこでウーマに乗り込み1時間。2階層の中心の泉に到着したのでかねて用意していた空樽を一度泉に沈め水が一杯になったところでそのままキューブにしまっておいた。
そこから再度ウーマに乗り込んで反対側にある上り階段まで移動し、階段を上り3階層にたどり着いた。
3階層の中心に建っている四阿の中は空っぽだったので、そのままウーマで反対側まで横断した。
4階層への階段下に到着したのはちょうど昼だったが、昼食はその前に摂っていたので俺たちは階段に臨んだ。
1時間半の登攀の末、4階層に到着。
さっそくウーマに乗り込み階層の中心に向かった。
ウーマのスリットから前も見ていたのだが、ジャングルを抜けた先にあるはずのモニュメントが見えなかった。
何もないより何かあった方がいいのだが、無くなってしまうとは思っていなかった。
「モニュメントなくなっちゃったね」
「そうだな。何か変化はあると思っていたけれど、こう来るとは思っていなかった」
「とにかく降りて何かないか調べてみましょ」
「そうだな」
ウーマを降りた俺たちはモニュメントが建っていたはずの場所まで歩いて行った。
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