第155話 帰還2。謎解き
[まえがき]
フォロー、♡、コメント、☆、誤字脱字指摘などありがとうございます。
8月30日、18:35
英語やドイツ語をカタカナにする場合、長音は「ウ」ではなく「ー」が適当らしいので、ヨルマン辺境伯の名まえをバトウ・ヨルマンからバトー・ヨルマンに変更しました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ベルハイム側からダンジョンを下り、13階層に出た。そこから反対側の階段まではウーマで66時間、丸2日と18時間かかる。途中何事もなければ3日後の午前6時から7時に到着できる。
その間、ウーマの中に閉じこもっているだけなので、俺は料理を作るしかすることがない。そういうことだったので食料庫の中を漁っていたら、また見慣れぬ瓶を見つけてしまった。フタを取ってみると黒い液体が入っていた。そして期待を胸にちょっとだけ舐めてみたところ、ショウユだった。ヒャッホー! とはこのことだ。ベルハイムで魚を手に入れた矢先にショウユが手に入ったわけで、作為的幸運を感じたが気にしない、気にしない。次はミソだ、ミソ。きみ、分かってるよね!
エリカとケイちゃんがウーマの中の掃除をしている中、さっそく、魚を煮てみることにした。昆布とみりんか日本酒がほしいところだが、砂糖と化学調味料で済ませた。それでも、丸のまま煮れば骨からダシが出るはず。
用意したのはキンメダイ風の赤い魚4匹。
下ごしらえとして、魚からエラと内臓を取りだしウロコをはがさないといけない。助手のペラの前でやって見せて、そのあとペラに作業させようと思う。
作業前、ヒレやエラの近くのトゲトゲが危なそうだったのでトゲトゲの付いたヒレとかを切り取ったあと、ウロコを包丁の背を使って俺が1匹分はがした。それを見てペラが残り3匹のウロコをはがした。
次に、2匹俺がエラと内臓を取りだしたところでペラに交代したが、ペラも難なくエラと内臓を取りだした。
下ごしらえが済んだところで、鍋の中に魚を並べ、ショウユ、砂糖、化学調味料、そして若干の水を加えて火にかけた。
落しブタの代わりになるものがないかと考えたところ、ダンジョン用の木製の平皿があったのでそれを上からかぶせておいた。
10分ちょっとで魚は煮えたようだったので、身が崩れないよう1匹ずつ慎重に皿にとって、残った煮汁を3分の1くらいになるまで煮詰めた。その煮詰めてとろみの出た煮汁を魚にかけてでき上がり。いい匂いが漂っていた関係でさっきからエリカとケイちゃんが見ている中、すぐにキューブに収納しておいた。
「エド、さっきの魚すっごくおいしそうだったんだけど、いつ食べるの?」
「今日の夕食かな」
「楽しみだなー」
「エドの料理の腕前がまたまた上がったみたいです」
「まだ俺も食べてないんだから、実際食べたらおいしくないかもしれないけどな」
「この匂いでおいしくなかったらそれはもう詐欺だよ」
そこまで言ってくれるのはありがたいが、実際食べたらおいしくなかったら悲惨だな。まずそんなことはないと思うけれど。
そのあと使った機材をペラと並んで洗っておいた。
そんなこんなで、移動中料理などを作りつつ時間を潰した。
エリカとケイちゃんの掃除の方はすぐに完了してしまい、結局二人もペラと一緒になって俺の応援をすることになった。
13階層を変形横断?だか縦断した間に見張り役のリンガレングが発見したワイバーンをペラが四角手裏剣で仕留めている。仕留めたワイバーンの数は12匹で全てキューブに回収している。その結果、キューブの中のワイバーンは20匹になった。
階段下にたどり着いたのは予想通り、3日後の午前7時だった。既に朝食を終え、準備も終わっていた俺たちはウーマを下りて300階段を上り始めた。ウーマはいつものようにキューブに入れている。
12階層から、11階層の小島に出た。
完全に橋は水没して見えなくなっていたので、リンガレングをキューブに収納し、代わりにウーマをキューブから出した。ウーマに乗り込んで泉を渡り、ウーマから降りた俺たちはランタンを用意して渦を目指して歩き始めた。もちろんウーマはすぐにキューブに戻している。
そこから昼休憩を挟み、午後1時半ごろ渦を抜けてダンジョンギルドに戻ってきた。
買い取りカウンターに回って、前回卸したワイバーンの代金をもらった。今回も金貨100枚だった。
「随分久しぶりじゃないか?」
「長く潜っていたもので。ワイバーン沢山仕留めているんですが」
「そういえば、1日に捌けるのワイバーンは1匹だけなんだが、何匹卸してもらっても大丈夫になった」
「どういうことです?」
「あれだけの大物だから、あまり卸されると買い手がいなくなって値崩れもあり得たんだが、大量の革鎧の注文が工房街に入ったそうで材料はいくらでも買い取ってもらえることになった」
「そいつはよかった。ちなみに鎧の買い手は?」
「聞いてはいないが、当然領軍だろう」
「それはそうですよね」
「それで、今日も卸してくれるんだろ?」
「はい」
「実際のところ何匹持ってるんだ?」
「20匹です」
「20か。それはまたすごいな。今日は2匹倉庫に卸してくれるか?」
「分かりました」
いつものようにゴルトマンさんに連れられていつもの倉庫に入りワイバーンを2匹床の上に重なるような感じでキューブから取り出した。
「支払いはいつものように明日になる。ワイバーンの次の引き受けはこの2匹を片付けてからになるから、明後日以降だ。よろしく頼む」
「はい」
倉庫を出た俺たちは、ギルドに立ち寄ることなく家に帰った。
「久しぶりって感じがするな」
「せっかく借りた家なんだけど、ここよりウーマの方が快適なのが問題よね」
「何といっても、ウーマにはお風呂があるし、洗濯も楽ですし」
「台所も使いやすいものな」
ウーマは文明の利器満載だものなー。あれで娯楽用品が揃ったらいうことなしだ。
今日の収入金貨100枚を30枚ずつ分け3人で分け、残り金貨10枚はチームの貯金にした。
「6時になったら反省会に出発ってことで、それまで自由時間だな」
「うん」「はい」「了解です」
買い物も間に合っていたし、洗濯もウーマの中で済ませていたので着替えたら何もすることがなくなってしまった。
ペラが家の中の掃除を始めたので、俺も拭き掃除を始めた。そしたら着替え終わったエリカたちも出てきて掃除を始めた。みんな働き者だ。
ホコリくらいしかない家の中なのですぐに掃除も終わってしまった。
仕方ないので6時まで結局ベッドに横になっておくことにした。ペラは分からないが、部屋に戻ったエリカたちもきっとおなじだろう。
そして、雄鶏亭のいつもの4人席に着いてその日の反省会。俺たちが留守にしている間このテーブルどうなっているのか分からないが、いつ来てもここが空いているのがちょっと不思議ではある。気にしても始まらないし、空いているという事実が変わるわけでもない。
「今回は驚いたわよねー」
「ハグレアだものなー。何といっても新鮮な魚が手に入ったことが大きいな」
「そうですよね。あの煮魚おいしかったですよね」
「あれ、おいしかったわよねー。エド、まだあの魚あるの?」
「4匹残っている。今度も煮魚でいいか?」
「うん」
「それはそうと、あのモニュメントで変な呪文唱えたじゃないですか? アレって結局何だったんでしょうか?」
「アレも謎だよな。何だっけあの呪文?」
「たしか、
『われを称え唱えよ。黒き
『われを称え唱えよ。青き夜明けの神ミスル・シャフー』
『われを称え唱えよ。白き太陽の神ウド・シャマシュ』
『われを称え唱えよ。赤き黄昏の神アラファト・ネファル』
だったような」
「ケイちゃん、スゴイ! 全部覚えてたんだ。わたしなんか『われを称え唱えよ』しか覚えていなかったのに」
「俺も。あと、色が付いてたことくらいだ」
「たまたまですから」
「『われを称え唱えよ』と神さまの名まえはあまり意味はないと思うんだよ」
「うん。そうね。まず、常闇、夜明け、太陽、黄昏。並べ替えると夜明け、太陽、黄昏、常闇で1日って意味じゃないかな?」
「そうなんだろうな」
「それで、夜明けは6時、太陽は正午、黄昏は午後6時、常闇は深夜24時って感じがしない?」
「うん。する。それで?」
「それだけなんだけど」
「四つの方向を指している気がしませんか?」
確かに24時間で1周する文字盤のある時計なら4方向を指す。つまりは東西南北ってことか。おそらく夜明けは東、黄昏は西、太陽は南、残った常闇は北。ここまでで破綻はない。
「夜明けは東、黄昏は西、太陽は南、残った常闇は北を指している。のかもしれない」
「きっとそうよ」
「ですね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます