第144話 13階層から帰還。反省会


 朝食を終えた俺たちは帰途に就いた。



 翌朝7時。


 ウーマは13階層を横断し12階層への階段前に到着した。

 そこでウーマから降り300階段を上っていく。リンガレングが加わった関係でフォーメーションは、俺、リンガレング、エリカ、ケイちゃん、ペラ、収納キューブの中にウーマとした。


 12階層で、一度寄り道してリンガレングの戦闘力を確かめてみた。

「リンガレング。俺がそこの扉を収納で回収するから、もし部屋の中にモンスターがいたらたおしてくれ。いちおう手だか脚を使って、間違っても何とか言う特殊攻撃はするんじゃないぞ」

『了解しました』


 扉を俺が収納したら、その先の石室の真ん中に弓を持った石像が立っていた。そして石像の前にリンガレングもいて、石像が爆発した。

 何のことだか分かりにくいが、俺が扉を開けた瞬間リンガレングが敵を認識して一瞬で破壊してしまったということだ。俺の目でもリンガレングが何をしたのか追えなかった。


 リンガレングはよほどのことがない限り、戦闘に参加させてはダメだ。石像だから良かったが普通のモンスターは大事な獲物。それを血煙に変えちゃったら意味ないもの。


「リンガレング。すごくて動きが見えなかったわ」

「わたしもです」

「この前のカエルみたいなのが出たら使えるが通常の戦闘では使えないな」

「そうね」

「わたしたち、ペラもいるし強くなり過ぎましたね」

「悪いことじゃないけどな。

 リンガレング、もういいぞ」


 そこからのフォーメーションは、俺、エリカ、ケイちゃん、ペラ、そしてリンガレングとした。


 12階層を通り抜ける途中、俺が注意したのにもかかわらず何度かリンガレングは罠を踏んずけ床石を踏み抜いたが、足先を落とし穴の壁に突き刺すことで落とし穴に落ちることもなく平然としていた。

 やるな。と、思った。


 そして、11階層へ。

 11階層でウーマに乗って泉を渡ったところで再度ウーマはキューブに収納し、10階層に続く階段を目指した。


 10階層への階段前でリンガレングを収納し、そこから途中1回小休止を取り渦を通り抜けダンジョンギルドに到着した。時刻は12時半。

 雄鶏亭に直行し、手袋とヘルメット、それに武器類を外しただけで昼食を摂った。


 定食と飲み物を頼んでテーブルにやってきたところで軽く「「かんぱーい!」」。

「今回も盛沢山だったなー」




 食事を終え先日卸したワイバーンの値段を聞こうと買い取りコーナーのゴルトマンさんのところ行ったところ、前回のワイバーンは金貨100枚とのことで、ずっしりした小袋を頂いた。


 そのあと、例の倉庫に移動して次のワイバーンをキューブから取り出しておいた。

「こいつの代金は明日の朝までに用意しておく」

「お願いしまーす」

 その際、バナナの房が連なった房の塊をギルドのみんなで食べてくれと言って1つ置いて食べ方を実演してみせた。

 俺の通りにバナナの皮をむいて一本食べたゴルトマンさんはすごく驚いて、あとでみんなに配ると言っていた。

 大したものじゃなくても付け届けはしてて損はない。



 ギルドの裏側から回り込んで家に帰ったところで金貨100枚を山分けした。

 今回はペラも含めて金貨を4人で25枚ずつ分けようとしたのだがペラが断ったので、残りの3人で30枚ずつ、残りの10枚はチームの財布に入れておいた。


 洗濯もウーマの中で終わっていたので家に帰ってからは何もすることがない。仕方ないので肉と野菜を補充しておこう。と、俺は空のリュックを背負って一人で商店街に向かった。


 肉屋では目に付いた肉類を大量に買い込み、八百屋では果物類はそうでもないが大量に野菜を買い込んだ。今回はサラダ用に葉物野菜も大量に仕入れた。それでも4人で消費することを考えると、野菜は1カ月程度で無くなりそうだ。そのかわり肉類はウーマの中にハムやベーコンがあるので相当もつだろう。

 そのあと、乾物屋に寄って干し魚も大量に購入しておいた。これで安心。化学調味料もあるから楽しみだ。



 その日は昼食がいつもより遅れた関係で反省会も遅れてしまったが、いつものテーブルが空いていて、いつも通りきっちり反省会を開いた。


「「かんぱーい!」」


 エールを飲み、定食を食べ、つまみを摘まみながらリンガレングのことがまず話題に上がった。


リンガレングアレって、もう戦力ってレベルじゃないよね?」

リンガレングアレの言う、神滅なんちゃらって実際使ったところを見たわけじゃないけれど、ひとつの街が跡形もなく吹き飛ぶレベルだからな。手足を使った攻撃でさえアレだったし」

「どうする?」

「もしもの時。というのがあった時のため連れ歩くけれど、通常は戦闘には参加させないというのが、結論だろうな」

「今回は相手を粉々にしましたが、ちゃんとたおし方を教えればそれなりに立ち回るんじゃないでしょうか?」

「頭が悪いわけではないのは確かだし、ちゃんと教えれば何とかなるか」

「そう思います」

「とはいえ、13階層では敵と言えばワイバーンだけだし。

 ワイバーンで思い出したけど、今度鍛冶工房に行ってペラ用に鉄球を作ってもらおうと思てたんだった」

「鉄球って、鉄の玉のことだよね? それをペラに?」

「この前ワイバーンをたおした時は床石を切ったレンガみたいなものを投げつけたんだけど、鉄球の方が威力があるだろうし投げやすいと思って」

「エド、あれ以上威力がある必要ある?」

「うーん。ないかもしれない。だけどワイバーン以上の空飛ぶモンスターが出て来た時のため持ってて悪くはないんじゃないか?」

「まあ、それは分かるけど」

「ペラはどう?」

「あの程度の石の場合少し強く握ってしまうと壊れてしまうので手加減しなくてはいけませんでした。もう少し硬い物の方が投げやすいのは確かです」

 あれで手加減していたのか。もしかして鉄球渡したら音速越える? 試してみたくはあるが下手すると着ている服がソニックブームでちぎれたりするかも? それも本人だけでなく周囲を巻き込んで。


 ここでは音速の話は難しいから、あとでペラと二人っきりになった時その辺りのことを聞いてみよう。


「明日はお休みにしようと思うけど、それでいいかな?」

「何か補充するものってあったかな?」

「俺がさっき肉と野菜だけは多めに買っておいた」

「エド、ありがとう。さすがはリーダー」

「ありがとう、エド」

 当然のことをしたまでだ。リーダーとして。

「明日の朝、ここで食事したら、買い取りのゴルトマンのところに行って今日の分の代金をもらって次のワイバーンを卸してくる。

 そのあと、どこかの鍛冶工房に行って鉄球を作ってもらう。

 材料として12階層で回収した鉄の扉を渡しておけばいいかと思ってるんだが」

「鉄球にこだわってるけど、玉である必要あるの?

 ペラ、どうなの?」

「形による影響を考慮して投擲しますから、よほど奇抜な形でない限り形はほとんど問題になりません。大切なのはわたしがある程度の力で握って壊れないことです」

「つまり、この前みたいな四角でもいいってことか?」

「はい」

「じゃあ、俺が適当にあの扉を四角く切っていくだけでいいってことか?」

「はい」

 扉の厚さは4センチから5センチくらいだったから、この前と同じ10センチ角くらいでいいだろう。

 それなら簡単だ。扉の数は相当だから1000個だろうと1万個だろうがいくらでも作れる。1万個は言い過ぎカモ? いやそうでもないか。

 時間がある時、作っておこう。


「となると、明日大した用事は無くなるから潜ってしまう。で、いいか?」

「それでいいんじゃない」「そうですね」「はい」


「行き先はどうする? まずはリンガレングにモンスターの狩り方を教えた方がいいよな?」

「じゃあ、12階層だと石像しかいないから11階層で少し寄り道して狩りをする?」

「そうだな。そのあとはどうする?」

「13階層に行って柱の2階層を見てみる? あそこの真ん中にも空き地があったから何か変わったものがあるかもしれないし」

「確かに。

 そういえば女神さまを拝んだけど何かご利益あった人いる?」

「今のところは何もないわ」

「わたしもです」

「ペラもないよな?」

「はい。ありません」

 ペラにないと決めつけちゃいけなかったな。


 ご利益が必ずあるわけではないのは分かるが、最初だけというのもケチ臭い。俺たちに現世的ご利益を!



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