第141話 神滅機械
ウーマがジャングルの木々をなぎ払うバキバキ音を聞いて1時間弱。
ウーマはジャングルを抜けて空き地に出た。空き地と言っても相当広く直径で言えば1キロはゆうにある。
地面には下草が生えているが、見た感じはゴルフ場のラフと言った感じで雑草らしくはないし草丈も短い。
それはいいのだが、空き地の中心には小さな建物が立っていた。
ウーマをその建物に向かって歩かせ、建物から50メートルほどの手前で止めた。
武器を装備した俺たちはウーマから下りてその建物に向かった。
「
目の前の建物は6本の柱で屋根を支えただけの
四阿の床もピカピカに磨き上げられた黒御影石で、真ん中に前回同様祭壇風の黒い台座が置かれ、その上にあの金色の女神像が立っていた。
「女神像だわ」
「こっちを向いてるって、わたしたちを待っていたような」
「再会できたわけだし、ここで拝んでおけばまた何かのご
「つまり祈ればいいわけよね!」
4人そろって
へっぴり腰ではエリカに笑われてしまうので、へっぴりはすこし控えはしたがスタイリッシュ参拝とまではいかなかった。
エリカとケイちゃんは普通に手を合わせていたが、ペラは俺の真似をして二礼二拍手一礼したようだ。
拝んでみたものの前回同様身体的にはなんの変化も感じなかった。そのうちご利益が現ればありがたい。と、思っていたのだが、拝んだから現れたのか、最初からそこにあったのかは分からないが、女神像足元の台座にそれラシイ穴が空いているのを見つけた。
「最初から穴があったっけ?」
「なかったんじゃないかな」
「なかったような」
「ありませんでした」
さすがはペラ。記憶力と観察力が高いな。
穴があれば挿入するのは男子としてのたしなみ。
腰に下げたバトンをその穴に挿入したところ、いつもの感じでかちりと音がした。
バトンを引き抜いて剣帯に付けたホルダーに戻したら、穴の横に小さなフタがあったようでそこがパカリと開いた。フタの中は小物入になっていて中に銀色の指輪がひとつ。
「また銀色の指輪だ」
「エド、それどうするの?」
「今度は女神さまの指輪だからまさか抜けなくなるとは思えないんだよな」
「はめちゃうの?」
「はめてみないと何だかわからないし。この左手の指輪も抜けないだけで実害ないわけだから、目立った効用はないとしても実害はないよ」
俺はそう言ってエリカに左手の漆黒になってしまった指輪を見せた。
「この指輪、最初銀色だっじゃない。真っ黒になった上すごみが出てきていない?」
「そうかもしれないけど、結局見た目だけだから」
「エドがいいならいいんだけど」
「それじゃあ、はめてみる」
エリカとケイちゃんが見守る中、銀色の指輪を右手の中指にはめてみた。
ちなみにペラは周囲を警戒してよそ見していた。
指輪は最初はブカブカだったが、勝手に大きさが調整されたようですぐにフィットした。また抜けなくなったかと一瞬焦って引っこ抜いたところ簡単に抜けた。左手の中指に燦然と輝く漆黒の指輪と違って今度の指輪は着脱自由のようだ。当たり前のことだが、そんな当たり前がうれしくなってしまった。
「どう?」
「何ともない。その代り今のところ効用も分からない」
「抜けるようだし、何ともないならよかったじゃない」
「何かわかるだろうからこのままはめておくよ」
「さてと。……」
そう言って後ろを向いたら、俺の背後から何かがズレるような音と振動が伝わってきた。
「エド、床が割れて階段が!」
再度振り向くと、黒い台の裏側に下り階段が現れていた。
「下りてみよう」
階段は回り階段になっていて、10メートルほど下りた先の正面が通路になっていた。
通路の先に扉があったので、扉の前まで行ったら扉の脇の壁にそれラシイ穴がありそこにバトンを突っ込んだらカチリと音がした。
それと同時に扉が音もなく横にスライドした。
扉の先はステンレスで内張されたような銀色の部屋で、用途不明の銀色の大きな機械が並んでいた。そして部屋の真ん中に高さ30センチほどのステージがあり、その上に機械でできたクモがいた。クモは全体的には銀色で、足の先端は鋭く尖ってやや青みを帯びている。
そいつは結構大きなクモで
クモは俺たちが近づいてもピクリとも動かない。
『指輪の所有者交代を確認しました。これより起動シーケンスを開始します……』
いきなり声が頭の中に響いた?
俺だけ驚いた顔をしたものだから、みんなが俺の顔を見ている。
「今の声聞こえなかった?」
「エド、どうしたの? それよりアレってクモよね?」
俺だけ聞こえたのか。うん? もしかしてさっきはめた指輪が関係している?
「クモの声が聞こえたんだ。最初レメンゲンが話しかけてきたと同じ感じで俺の頭の中に直接話しかけてきたのだと思う」
「それって、また魂を寄こせとか?」
「いや。自分のことを少しだけ。独り言のように話しただけだ」
エリカたちが変な顔をして俺の顔を見るのが、俺にも状況は把握できていないのは事実だ。
そうこうしていたら、クモの頭の部分に4個ずつ左右に並んだ目が赤く光り始めた。
「エド、クモが生き返ったみたいだけど。どうすればいいの? たおしちゃうの?」
「いや、待ってくれ。ここは女神さまの地下だし、バトンでやってこれた場所にいたわけだから悪いヤツじゃないはずだ」
「そう言われれば、不思議な感じはするけれどそこらへんのモンスターって感じではないものね」
『起動シーケンス正常終了、リンガレング起動しました。
神滅機械だ。と? こいつは神さまと戦うつもりなのか? こんなところにいるんだから女神さまの配下じゃなかったのか? いや、女神さまの敵の神をたおすための機械ってことか。何でもいいがいかにも中2病的でチープだな。だが、そこがいい!
それで、俺はこいつをどうすればいいんだ?
[あとがき]
常闇の女神シリーズその3『秘密結社、三人団 -神の国計画-』https://kakuyomu.jp/works/16816700426096659154 では出番のなかった神滅機械リンガレングですがついに復活!
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