第42話 ケイ・ウィステリア2
キャバクラ勤めのケイちゃんのリクルートに簡単に成功してしまった。
枝豆を食べ終えて、ブドウ酒を飲み終わった俺は代金の銀貨2階を支払い、明日の約束を再確認して店を出た。
明日にならなければ、リクルート成功とはまだ言えないのだが、どうもうまくいったようだ。
店を出た後を振り返ったが、恐いお兄さんが俺のあとを追ってくるようではなかった。
もちろん日は暮れて辺りは暗い。夜の街のくせに人通りがあまりないのは前回と同じ。ちょっと不思議ではある。いいけど。
俺は夜の街からダンジョンギルドに帰りついたが、道中何も起こらなかった。何も起きない方がいいに違いないのだが、本当に肩透かし的に話がうまくいってしまった。レメンゲンの力だとしたらとんでもない力だ。ということは、対価である俺の魂って、レメンゲンから見ればものすごく高価なのかもしれない。うれしいような、恐いような。
翌朝6時。
エリカと揃って1階に下りていき
「それで、エド、どうなった?」
「うまくいった。仲間になってくれるって言ってくれた」
「そんなに簡単だったの?」
「うん。レメンゲンの力だったんじゃないかと思うほどトントン拍子に話が決まってしまった」
「ふーん」
「今日の8時にここに来てもらうことになっている」
「うわー、本当にトントン拍子なんだ」
「それで、顔合わせが終わったらすぐにギルドの登録をして、そのあと武器防具を買いに行く予定だ」
「それでどんな人なの」
「見ればすぐわかるけれど、俺と同じ黒髪の女子で、エルフと人との混血ということだった」
「エルフって、辺境領の北東の大森林に住んでいるっていう種族よね?」
「うん」
「珍しい。でも、エルフの血が流れているなら弓は期待できそうね」
「そうなんだ」
俺もそれは期待していたけれど、そんなのはファンタジー知識であってこの世界で通用する知識じゃないからそういう風には考えていなかった。エリカがそういう以上、エルフは弓がうまいというのはこの世界でも定説なんだろう。そういった共通点は本当に謎だ。
「エドが見つけてきた人は女子だし、エルフと人との混血ということはかなりの美人と思うけれど、やっぱり美人なの?」
俺が見つけてきたこととどういった関係があるのか分からないけれど、美人なので正直に答えておいた。
「うん」
「ふーん。やっぱりね。エドは美人にしか声かけないものね」
要するに俺が声をかけた自分もスゴイ美人だと言いたいのかこのエリカさんは?
そりゃエリカもスゴイ美人だけど。
しかし、エリカとケイちゃん、二人の美少女を連れた俺は両手に花。実際はそういった関係ではないにしろ傍から見れば羨望の的になることは間違いない。そんなのが元になって何かのトラブルに巻き込まれなければいいが。
「それで、その人の名まえは何て言うの?」
「ケイ・ウィステリア」
「ふーん」
エリカからケイちゃんの名まえについてのコメントはなかった。
「それで、エドはその人のことなんて呼んでるの?」
ここでウィステリアさん。とか、言ってもいいけど、正直に答えておいた方が無難だろう。
「ケイちゃん」
「ふーん。いやに親しげに呼ぶじゃない。エドはこの街にわたしと来たのが初めてだったのに女子と知り合ってちゃん付きで名まえを呼べるようなお友達を作ってたんだ」
「エリカさん、何が言いたいのかな?」
「ただ事実を述べただけ」
確かに事実だけど。
そう言うエリカの顔は、笑っている。俺のことをからかっているだけのようだ。
「それで、どこで知り合ったの?」
ちょっとだけ安心してたのに追及はまだ終わっていなかった。
「お店で」
「ふーん」
その辺りでエリカの追及は終わって、食事を再開した。
朝食を食べ終えた俺たちは、1時間後に
そろそろ1時間だろうと思って部屋を出たらちょうどエリカも部屋を出たところだったので二人して1階に下りて行った。
俺もエリカも、防具は着けていなかったが、剣帯を締めて俺はレメンゲンを下げ、エリカは白銀の双剣を下げていた。
階段を下りて
ケイちゃんの格好は夜のお店と全く違って、下は薄茶色で細目のスエードのパンツに上は腰丈で紺色のチュニックで小型のリュックを背負っていた。
「やあ、ケイちゃん、おはよう。来てくれてありがとう」
「おはようございます」
「さっそくだけど、俺の相棒のエリカ・ハウゼン。双剣の使い手だ」
「エリカ・ハウゼン。よろしく。わたしのことはエリカって呼んでね」
「はい。ケイ・ウィステリアです。わたしのことはケイと呼んでください、エリカさん。それとわたしは弓を少しだけ扱えます」
「うん。ケイちゃん、期待してるね」
「は、はい」
エリカの受け答えを聞いている限りではエリカもケイちゃんのことを気に入ってくれているように感じる。
「さっそくだけどギルドの登録を済ませてしまおうか」
「はい」
俺たち二人が先に立ってギルドのカウンターまで歩いて行ったところエルマンさんの前が空いていた。
「おはようございます。登録お願いします」
「えーとそちらの方ですね。ライネッケさんたちのチームに加わるんですね?」
「はい」
「登録料は銀貨1枚になります」
俺が登録手数料の銀貨1枚をカウンターの上に置いた。
「お名まえと生年月日をお願いします」
「名まえはケイ・ウィステリアです。生年月日は343年5月1日です」
ケイちゃんは最初お店で自己申告した時も17歳と言ってたものな。俺とエリカの二つ年上だけど、見た目は俺やエリカと同じくらいか少し下なんだよな。
「ウィステリアさん、つづりはこれで間違いありませんか?」
書類に書かれた名まえをケイちゃんが確かめて「間違いありません」と、答えた。
エルマンさんは俺たちの時と同じように名まえと生年月日が書かれた紙切れを持って奥に行きすぐに戻ってきた。
「わたしの名まえはショーン・エルマンと申します。ギルドの身分証を兼ねるタグができ上るまで当ギルドの説明をいたします」
エルマンさんがそう言って説明を始めた。
「…。以上が当ギルドの規則です」
そのあと図書館や寮の説明があり説明は終わった。
俺たちがいるからその辺りは省いても良さそうなものだけど、エルマンさんも仕事だしな。
寮の手続きをしてもらい、これも俺が10日分の銀貨1枚を支払って部屋のカギを受け取りケイちゃんに渡した。ケイちゃんの部屋番号は3階の17号室で俺の隣りでエリカの向かいの部屋だった。
ほとんど待つことなくでき上ったタグを受け取り、俺たちはエルマンさんに礼を言ってカウンターから離れた。
「それじゃあ、武器を見に行こう」
「そうね」
「はい」
「武器工房はこの建物の裏手の先なんだけど、弓を扱っている工房って有るかな?」
「さっきエルマンさんに聞いておけばよかったわね」
「時間もあることだし、適当に見て回ろうか」
「そうね」
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