素人童貞転生 -ヨーネフリッツ戦記-
山口遊子
第1話 山田太郎死して転生す
[まえがき]
本作では簡単のため重さはキログラム、長さはメートルを使用しています。
よろしくお願いします。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「課長、お疲れ様でしたー」
「お前たちも、ほどほどにな。
明日、2次会の領収書を持ってこい。落としてやるから」
「ごちそうさまでーす。お気をつけてー」
「それじゃあ」
歓送迎会の一次会を終えたところで、後は若い者たちに任せて俺は先に帰らせてもらい、ちょうどやってきたタクシーに乗ってなじみのお店に直行した。
「今日は、明美ちゃんかな?」
「明美はいま接客中ですし、次の指名も入っています。代りと言ってはあれですが、一週間前に入った新人の子がいます。かわいい、いい子ですよ。お客さま好みのボンキュッボンなのに童顔。あっちの方も抜群と評判ですしどうです?」
「じゃあ、その子で」
……。
……。
「お客さん、重たい。ちょっと体を上げてくれる?」
「……」
「お客さん、早くしてよ。中で萎えてるじゃない!」(注1)
「……」
「お客さん! お客さん? お客さんってばー! ……。キャー!」
目が覚めたら知らない天井だ。俺ってどうなってる? さっきまで嬢の上で励んでいて、急に目の前が暗くなって……。
おっかしいなー。
周りがぼやけてるしどうなってるんだろ?
あれ? あれれ? あれれれ? なんだか急に眠たくなってきた。
俺はどうも赤ちゃんになっているらしい。プレイではなく本物の赤ちゃんだ。
ときおり金髪でスゴイ美人の女の人がやってきて俺におっぱいを飲ませてくれる。ただでこんなプレイができるなんて! と、頭の中では考えるのだが、全く興奮しない。まあ、赤ちゃんが授乳時に興奮してたらおかしいが、さりとてせっかくのチャンスなんだから興奮したい。とか考えていたらそのうち眠たくなってきた。
それから主観的に数日が過ぎていった。数日と思っているが実際は2、3週間かも知れないし1カ月くらい経っているかもしれない。はっきり言って定かではない。とにかく主観的には数日だ。
冷静に考えて俺は
状況をまとめると俺は金髪碧眼の両親のもとに生まれたゼロ歳児。名まえはエドモンドというらしい。そして上にアルミン、フランツ、クラウスの3人の兄弟がいるようだ。
父親の名まえはカール、母親の名まえはウィルマ。
俺がいるうちには電気製品など何も見あたらなかった。時計さえも見あたらなかった。
つまり俺は現代ファンタジーの世界ではなく異世界ファンタジーの世界に転生したのだろう。
こういった摩訶不思議な状況に陥ってしまったわけだが、取り立てて驚くこともなかった。なにせ、驚こうがどうしようが俺に状況を変える手段がない以上、俺にはこの状況を受け入れるしか選択肢はないからだ。
俺がこの世界に生れ出る前、神さまに会っていないので、この世界のことも聞いていないし、ましてや何かのチート能力も授かってもいない。従ってこの世界が剣と魔法のファンタジー世界なのかは今のところ不明なのだが、ファンタジー世界だと思っていても悪いわけではない。
まずはステータスの確認だ。
まだ言葉がしゃべれないので頭の中で『ステータス!』と唱えてみたのだがステータス画面は開かなかった。それから文言をいろいろ変えて試してみたのだがステータス画面は開かなかった。やはりちゃんとこっちの言葉ではっきりと「ステータス」と唱えなければならないのかもしれない。これは将来の課題だ。
小さいころから魔法の訓練すれば魔力量が伸びるのは日本人の常識なので、俺は目が覚めている時は魔力訓練することにした。
やり方は分からないので適当に魔力操作らしきものを続けていたら、急に眠くなってきた。これは魔力切れだ。そう思って俺は目を閉じてそのまま眠ってしまった。
そんな感じで魔力操作らしきものを続けていたら、ハイハイから二足歩行が可能になった。魔力操作らしきものと二足歩行に因果関係があったのかどうかは定かではない。
勝手に動き回ると、俺の面倒を主に見てくれている2番目のフランツ兄さんに怒られるので、部屋の中を行ったり来たりしている。
うちは2階建てらしく、父さん母さんの部屋は2階の一室で俺も一緒だ。俺の兄貴たち3人の部屋も2階にある。
1階は食堂を兼ねた居間と台所、父さんの書斎っぽい部屋。トイレや納戸がある。うちの外には納屋と馬小屋があり馬が1頭いる。
裕福とは思えないが少なくとも貧乏ではないようだ。
魔力操作で疲れてしまうので、それ以外では食事と着替えくらいで俺は眠っているのだが、たまに夜中に目覚めることがある。そんな時は決まって父さんと母さんが励んでいる。それについてとやかく言う気はないので俺は目をつむって魔力操作を始めすぐに眠りにつく。弟か妹かできるのも近そうだ。どうせなら妹がいいと俺は思うし、父さん母さんもそう思っているに違いない。
二足歩行の後は言葉がしゃべれるようになった。普通は逆なのだそうだが、日本語文化圏で育った俺はどうもこの世界の言葉が苦手のようで遅れてしまった。そのことについて父さんも母さんも心配したようだが、杞憂だったと喜んでくれた。
言葉がちゃんと発音できるようになった俺は「ステータス!」と唱えたのだがあくまで日本語。こっちの言葉でステータスってどう言うのか分からなかったので仕方ない。
結果として何も起こらなかった。もう少しこっちの言葉を覚えてからだ。
3歳になる前に妹ができた。予想より遅かったが、それはそれなりのことがあったのだろう。
妹の名まえは、ドーラ。父さん母さんに似て金髪碧眼だった。
ちなみに家族の中で俺だけは黒髪で目だけは碧眼だ。これで両親のどちらにも似ていなければ問題だったかもしれないが、俺は誰が見ても髪の色以外父さんそっくりだったので変な疑いが母さんに向けられることはなかったハズだ。
妹が生まれたことを契機に俺の寝床も父さん母さんの部屋から兄さんたちの部屋に移された。
そのころの俺は3歳上のクラウス兄さんといつも遊んでいたのだが、遊ぶ範囲はうちの周りだけで敷地の外には連れ出してもらえなかった。
寝る前には必ず魔力操作の練習をしていたが、いっこうに魔力を感じることもなく何かが変わることもなかったけれど、それをしているとすぐ寝付くことができるので重宝してもいた。
5歳になるころにはうちの周辺でも遊ぶようになり、かなりのことがわかってきた。
俺の住んでいるのは50軒ほどの集落からなるロジナ村という農村で、人口はざっと300人。ヨルマン辺境伯領の一農村ということらしい。
村にある店と言えば村の真ん中の広場に面して雑貨屋が1軒だけあった。田舎アルアルかもしれないがその店では薬から鍋まで何でも扱っているが品数は極端に少ない。
ちなみに、うちは村の中心から少し離れたところに建っている。
村の主な産物は麦と野菜。
うちの父さんはヨルマン辺境伯の騎士ということらしい。若い頃一兵卒から活躍して騎士になり、引退してこの村の村長になったとか。
村長といってもほぼ毎日上の兄さんたち2人を連れて畑仕事をしているようだ。俺の生前の記憶だと騎士というのは貴族扱いだったと思ったのだがそうではないのかもしれない。
父さんは仕事から帰ってくると、夕食前に兄さんたちに剣の指導をしている。
指導内容は、木剣の素振りと模擬試合だ。もちろん兄さんたちは父さんに軽くあしらわれる。
俺はその様子を見ているだけだがいずれお呼びがかかりそうでちょっとだけ怖い。
クラウス兄さんがうちの手伝いで畑に出るようになったこともあり、俺の遊び相手はクラウス兄さんから近所の同い年の
村の中には俺より年上の子どもたちもたくさんいたが、一応村長さまの御曹司の俺にちょっかいを駆けるような悪ガキもいなかったようだし、俺も御曹司風を吹かすわけでもなかったのでいたって平和な日々を過ごすことができた。
男の子も5歳くらいになればそれなりにスケベ心が芽生えてくるようで何度かクリスのスカートをめくってかぼちゃパンツに手をかけたのだがすぐに逃げられてしまった。
そのあと俺は、これは若き日のほろ苦い思い出になるんだろーなー。とか思って感慨にふけった。
そのクリスも俺にそんなことをされてもあまり気にすることもなくすぐに仲直りして一緒に遊んだ。田舎だからなのか子供だからなのか知らないが、実におおらかでいいよな。
注1:
腹上死の場合、萎えるか萎えないのか諸説あるようです。個人差ということで考えてください。
[あとがき]
今回は葬送のフ○ーレンにあやかって、登場人物名はドイツっぽいものにしてみました。たまに意味のある名まえも登場しますが、基本的に名まえに意味は持たせていません。
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