ギルド無双!新たな世界で頂点を目指す

なちゅん

プロローグ

DMMORPG(Dive Massively Multiplayer Online Role Playing Game)――『エターナル・レガシー』。

2145年にリリースされたそのゲームは、VR業界の常識を覆し、人類の余暇を根底から変革した。専用カプセルに身体を預け、脳神経に直接リンクすることで、プレイヤーは五感すべてを通じて仮想世界を体験できたのだ。現実と錯覚するほど精密な映像と触覚、そして心拍や呼吸までも同期する感覚――それはまさしく「もう一つの現実」だった。


このゲームの最大の特徴は、膨大な自由度にあった。600種を超える種族、1,200を超える職業。そこに無数のスキルや派生進化が絡み合い、キャラクターの可能性はほぼ無限大。さらに、クリエイターツールを通じて武具や建築物を自由にデザインできるため、プレイヤーの個性はそのまま世界の一部として刻まれていった。


そして、数千万のプレイヤーが集う広大な大地で、頂点に君臨する存在があった。

それが――最強ギルド《シャドウ・エンパイア》。


そのギルドを率いるのは、天城亮(あまぎ りょう)。プレイヤーネーム「ネクロス」。闇の魔術を極め、膨大なアンデッド軍団を操る最強のネクロマンサーだ。冷徹にして緻密、だが仲間を決して裏切らないその姿勢から、彼はカリスマ的な信頼を集めていた。


ギルドには、彼を支える歴戦の仲間たちが集っていた。伝説級の鍛冶師が鍛え上げた武具を纏う剣豪。数百の戦場で奇跡を起こした聖女。狡猾に敵を翻弄する暗殺者。そして、ネクロスが自ら魂を吹き込んだNPCたち――忠実な従者や知略に富む将軍たち。彼らの存在が《シャドウ・エンパイア》をただのギルドではなく、ひとつの「帝国」へと押し上げていた。


だが、永遠に続くものなど存在しない。

『エターナル・レガシー』のサービス終了が告知され、今日がその最終日となったのだ。


――最後の夜。

ギルドハウスの大広間に、仲間たちが集っていた。壁を覆う黒曜石の装飾、中央に鎮座する王座、そして無数の戦利品が荘厳な空気を放っている。


「みんな、本当にありがとう。このゲームで君たちと出会えたことは、俺にとって最高の財産だ。」


王座に腰掛けたネクロス――いや、天城亮は、仲間を見渡しながら静かに言葉を紡いだ。

剣豪は深く頭を垂れ、聖女は涙を拭い、暗殺者は不器用に笑った。彼らはそれぞれ、心の底から同じ想いを抱いていた。ここで過ごした時間は、単なる娯楽を超えて、人生の一部となっていたのだ。


その時だった。


突如として、ギルドハウス全体が光に包まれた。

床が震え、壁の文様が眩い輝きを放ち、天井から降り注ぐ光が視界を埋め尽くす。


「な、なんだ!? イベントか……いや、違う!」

「公式の告知には、こんな演出はなかったはずだ!」


仲間たちがざわめく中、光は瞬く間に彼らを飲み込み、意識を奪っていった。


――そして目を覚ます。


冷たい石畳の感触。遠くから聞こえる鐘の音。湿った風が頬を撫で、太陽の光が瞼を刺激する。

天城亮は、ゆっくりと目を開けた。


そこに広がっていたのは、ゲームでしか見たことのない、しかしあまりに現実的な景色だった。

重厚な石造りの城壁。市場で行き交う人々のざわめき。獣に引かれた荷馬車の軋む音。香辛料の匂いまで漂ってくる。


「ここは……どこだ?」


周囲を見渡せば、仲間たちが次々と目を覚ましていた。彼らの装備はゲーム内のものそのままに再現され、スキルも健在だった。試しにネクロスが魔導書を開き、闇の呪文を唱えると、掌から漆黒のエネルギーが溢れ出し、石畳を焦がした。


「……これは、現実だ。」


誰もが言葉を失った。だが次第に、驚愕は高揚へと変わっていく。

《シャドウ・エンパイア》のギルドハウスもまた、この世界に転移していたのだ。要塞のように堅牢なその建築、膨大な資源、そして最強のアンデッド軍団――すべてが揃っていた。


「この力を持ってすれば、この世界でも頂点に立てる。」


天城亮は静かに確信する。

彼らは単なる迷い人ではない。支配者になれる存在だ。


「まずは情報を集める。近くに村があるはずだ。全員、準備を整えろ。」


その指示に、仲間たちは即座に動いた。剣豪は刀を研ぎ、聖女は祈りを捧げ、暗殺者は影に溶けるように姿を消した。アンデッド軍団も整列し、行進の準備を整える。


――こうして、《シャドウ・エンパイア》の新たな物語が幕を開けた。

それは、ただの冒険譚ではない。

やがて大陸全土を震撼させる、覇道の始まりであった。

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