みんなの安全を守ってきた「神の代行者」、パーティを追い出されたから、自分の安全を優先します。

14 賢者は【魔法使いと僧侶】より強かった

　ギルドがフォローした結果、１組の賢者カップルが成立した。

賢者　男性

「ボクといっしょに支え合ってくれないか？」

賢者　女性

「ええ、よろこんで。」

　この男女は、おなじ悲しい経験をしたことから、気（き）が合（あ）った。

　そして、レベル２２になって、賢者として花開くことができた。

◇

　賢者の男性が成功したと聞いて、別れた女性が、よりを戻（もど）そうとやってきた。

別れた女性

「わたしが間違っていたわ。

　やりなおしましょう。」

賢者　男性

「迷惑（めいわく）だ。

　お帰りください。」

賢者　女性

「わたしの夫（おっと）に近づかないでください。」

　賢者　女性の「火球　大」を見せられた【別れた女性】は、逃げるように去って行った。

賢者　男性

「ざまあみろだ。

　ごめんね、きたない言葉（ことば）を言ってしまった。」

賢者　女性

「ううん、どんなにきれいな心（こころ）の持（も）ち主（ぬし）でもそう思うわ。」

賢者　男性

「たすけてくれて、ありがとう。」

賢者　女性

「これからも、助（たす）け合（あ）いましょうね。」

◇

　賢者の女性が成功したと聞いて、別れた男性が、よりを戻（もど）そうとやってきた。

別れた男性

「おまえは、いつだってオレの太陽（たいよう）さ。

　さあ、オレのもとに帰（かえ）っておいで。」

賢者　女性

「どちらさまですか？」

別れた男性

「おいおい、しばらく会わない間に、ひねくれてしまったのか？」

賢者　男性

「わたしの妻（つま）から離（はな）れてください。」

別れた男性

「ひとの女に手を出してんじゃねえ、殺（ころ）すぞ。」

賢者　男性

「仕方ないな。

　ボクには、妻の安全（あんぜん）を守る義務（ぎむ）がある。」

　レベル２２の賢者にとって、【別れた男性】の攻撃は、あくびが出るくらい遅（おそ）く感（かん）じた。

　だから、かんたんに避（よ）けることができた。

別れた男性

「よけるなよお、本気で殺すぜ。

　血みどろになって、泣いて命乞（いのちご）いしやがれ。」

賢者　男性

「見えない刃（やいば）　大（だい）」

　別れた男性の首と手足が切れて、６つのバラバラ死体になった。

　二人の賢者は、ギルドに通報（つうほう）した。

　そして、別れた男性は有罪になり、別れた男性の両親と親族から、慰謝料（いしゃりょう）を払（はら）わせた。

賢者　女性

「ざまあみろ。

　わたしを捨（す）てた罪（つみ）は、生まれ変わっても消（き）えないからな。

　あっ、ごめんなさい。

　わたしったら。」

賢者　男性

「これからは、ボクがそばにいるよ。

　賢者については、つらい経験だったけれど、キミと出会うための料金だと思えば、なんてことないさ。」

賢者　女性

「わたしもよ。

　あなたを絶対（ぜったい）に離（はな）さないわ。」

◇

　ギルド内では、負（ま）け惜（お）しみで、賢者ミエルをやっかむ者たちがいた。

僧侶Ａ

「いい気になってんじゃねえぞ。ミエル。」

魔法使いＡ

「そうじゃぞ、賢者とは言え、同時に２つの魔法は使えまい。

　賢者ひとりよりも、僧侶と魔法使いが組む方が効率的（こうりつてき）じゃ！」

みやび

「ふたりがかりとは、ズルいぞ。

　わたしも戦（たたか）うよ。」

僧侶Ａ

「かかったな、バカのみやび。

　決闘（けっとう）だ。」

魔法使いＡ

「わしの魔法で、武闘家なんて黒焦（くろこ）げじゃ！」

　魔法使いＡは、　火球（かきゅう）　中（ちゅう）の呪文をつかった。

僧侶Ａ

「武闘家の切り身にしてやる。」

　僧侶Ａは、見えない刃（やいば）　中（ちゅう）の呪文をつかった。

ミエル

「みやび、ボクの後ろへ。」

みやび

「わかったさ。」

　ボクは、

　　　氷（こおり）の矢（や）　中（ちゅう）の呪文と

　　　見えない刃（やいば）　中（ちゅう）の呪文を

同時につかった。

ミエル

「呪文を相殺（そうさい）しました。」

僧侶Ａ、魔法使いＡ

「「そ、そんなあ。

　　ま、待ってくれ！」」

ミエル

「ダメに決まっているよね。

　みやび、よろしくね。」

みやび

「わかったさ。」

　みやびは、ふたりの腹に下から上に突き上げるパンチを３発ずつ入れた。

　僧侶Ａと魔法使いＡは、げろを吐（は）いて気を失（うしな）った。

ミエル

「賢者をダメダメのようにバカにしなきゃよかったね。

　ざまあみろ！」

みやび

「ミエル、かっこいいさ！」

ギルドマスター

「僧侶Ａと魔法使いＡは、ミエルに恥（はじ）をかかせたかったのだろうが、返（かえ）り討（う）ちにされたな。

　いや、すまない。　おかげで、良い見せしめになった。

　これで、ミエルたちを、いじめようとするバカも減（へ）るだろう。」

受付

「ミエルさん、みやびさん。

　僧侶Ａと魔法使いＡがギルドに預けている保証金（ほしょうきん）から、慰謝料（いしゃりょう）を用意（ようい）しました。

　お納（おさ）めください。」

ミエル

「では、遠慮（えんりょ）なくいただきます。

　みやび、これで、美味（おい）しいものを食べに行こう。」

みやび

「いいね。　早く行こうさ。」

◇

女神　ミサキ

「ミエルとみやびは、強くなったわねえ。

　わたしの出番がないじゃない。

　まあいいわ。

　あのような愚物（ぐぶつ）は、これからも湧（わ）いてくるでしょう。

　そのときの「ざまあ」のために、神力（しんりょく）を貯（た）めておきましょう。」