貴族学園の生徒会長

@naadesu

白銀の姫と聖剣に選ばれし少年

プロローグー入学式ー

真新しい制服を着込んだ初々しい学生達がどこかソワソワと落ち着かなく席に着き、学園長のとても為になる長話に耳を傾けている。

…といっても真剣に聴いている人間などごく少数である事は想像に難くない。



そしてそんな生徒達の対になる場所。

舞台から左にそれた一段低い場所で薄桃色の髪をした絶世と呼ぶべき容姿をした少女がその美しさに負けないほど凛とした雰囲気で着席していた。


新入生達も(やはり)学園長の話などそっちのけでその可憐な少女へと視線をチラチラと何度も向けている。



(学園長先生の話が長いのはどの世界でも共通なのですね〜)


しかし、件の薄桃髪色の少女は新入生からそのような目を向けてられていようとどこ吹く風。世界共通の学園長の話の長さに内心関心をしていた。


(そしてそんな話を聴いていれば眠たくなるというのも必然な訳でして〜)


そして有ろうことか、うとうとと船まで漕ぎ出したのである。





「ーーこれで私からの話は終わりとします」


(……はわっ!?)


長かった学園長の話が終わり新入生達が拍手で答える中、その拍手により少女はうとうとから強制的に覚醒させられた。

少女の糸目は普段より数段見開かれ(本人談)少し肩がビクッとしたが何事も無かったようにまた平静を装う。

こういうものは動揺したら負けなのだと少女は知識から知ってる。


そしてそのおかげかは分からないが、式は順調に進んでいき、


「ーー続きまして在校生挨拶。生徒会長エルシィ・オロストリアお願いします」


少女の出番がやってきた。


少女は進行役を務める教師からの使命に鈴を転がすような声で答えると壇上へと登っていく。


しばらくして壇上に辿り着くと本日の主役であるまだ初々しさがある生徒達を見回していく。



「………」

(あら〜〜)


しかし途中、ひとりの男子生徒の前で目線が止まる。見た目は特段かっこいいというわけではない。平凡な黒髪黒目…まあ端的にいえば中の上といったあたりだろうか?


その少年は今、大陸で少女と同じくらい注目をされている人間である。


(あれが噂の聖剣と契約せし少年ですか〜。なるほど〜)


少女は把握していたモノ情報と今見た実際にみたモノ情報とをすり合わせていく。そして納得のいくところまで精査し、心の中でひとり頷く。


そしてその後、またすぐ目線を次は最後まで動かし、ゆっくりと口を開く。



「ご紹介に預かりました生徒会長のエルシィ・オロストリアと申します。本日はーーー」


少女は祝辞を述べながら今日からの出来事を予感する。今年は飽きない一年になりそうだ、とーーー。

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