受け止める腕の細さに驚きて泣く場所をなくしたことを知る


受け止める腕の細さに驚きて

泣く場所をなくしたことを知る



諦めるのは甘美な誘惑

労苦、叱咤、責任から解放される

悪魔は囁く

お前がやらなくたって

誰かがやるさ

僕はいつも悪魔の手を取った


母はそんな中途半端な僕に

しょうがない子だねと力強く抱きしめた

明日があるさ

そう甘えていたんだ


お店を始めたのは三十代半ばだった

順調だった売上も底を打ち

赤く染まるのも時間の問題だった

悪魔は既に窓から顔を覗かせている


母はしょうがない子だねと抱きしめる

かつての力強さはない


こんなに細かったんだ

今更ながらに気づく


もうちょっと頑張ってみるよ

悪魔は顔をしかめる

母は笑顔になる

頑張んな明日はお前の味方だ

力強く尻を叩たかれた

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