眠った後で

岸亜里沙

眠った後で

僕は一冊の本。


だけど、僕はこの家に来てから、ずっと本棚の片隅に置かれたまま。


持ち主の人は、僕を一回も読んだことがありません。


僕の名前は『きし亜里沙ありさ短編集』って言います。


確かに僕の中に書かれている事が、そんなに面白くはないのは分かってるよ。


でも一回くらいページをめくってほしいな。僕はその為に生まれてきたのに。


そんな事を思いながら、毎日暮らしていました。


そんなある日の夜、僕が本棚で眠っていると、夢の中に僕の持ち主が現れたんです。


だから僕は持ち主に聞いてみました。


「どうして、僕の事を読んでくれないの?」


持ち主は笑って答えます。


「あなたが大事だからだよ」


僕は更に聞きました。


「だけど、僕の中には物語がたくさん詰まってるんだ。だから一度でいいから、読んでほしいな」


「あなたの中に書かれている物語は、全部知っているよ」


「どうして?だって一回も僕を読んでくれないじゃん」


「私の名前は岸亜里沙。あなたの産みの親」

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眠った後で 岸亜里沙 @kishiarisa

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