20100417_3_Sさん練習3.mp4

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―続きをお願いします。


はい、それで、日を改めて、僕は集落のことを教えてもらうために役場を尋ねました。


役場の庁舎はかなりモダンな作りで、おそらく合併による交付金で改装したのでしょう。窓口で、あの集落のことを調べていることを伝えると、奥の方から太った大柄な男性が出てきました。その人は、総務課長の〇〇と名乗りました。


〇〇さんはまるで犯罪者を見るような目つきでこちらをじっと見てきて、正直、印象は良くなかったですね。開口一番で「あそこにはあまり触れてほしくないんですが」とか言ってきて。理由を聞いても、最初のほうは「今は誰も住んでいないからねぇ……」とか、あからさまに誤魔化すような。触れてほしくなさそうな感じで。それでも粘って聞き続けたら、その集落の成り立ちについて少しだけ話をしてくれました。


あの集落の成り立ちにはいろいろな話があるそうですが、平家の落武者が住み着いてできたとか、近隣の被差別部落の民が流れ着いてできたとか、要は地元の人間でもわからないということでした。集落にはかつて“山社(やまやしろ)”と呼ばれる神社のようなものを中心とした信仰があり、その神社を中心にした集落が形成されていたそうです。


あ、〇〇さん、ちょっと聞きたいんですが、国学って知ってますか?江戸時代ごろに日本で始まった学問の一つなんですけど。あ、僕も詳しいわけではないんで、聞かれてもわからないんですけど(笑)。はい。それで、えーと、あ、そうそう、その国学が日本中に広まった時に、一所に神社信仰が広まっていったそうなんです。それで、中には、元々その地域で祀っていた神様を、国学で学んだ新しい神様に取り替えてしまおう!というところがあって、このあたりの地域は特にそういうことが多くあったそうなんです。それで新しい神様を信仰するようにあたって、もともとその土地で信仰されてきた神様をどうしようか……という話になるわけですね。


そもそもは土地神みたいなものなので、安易に捨てちゃうのもバチが当たりそうで怖いし、かといって自分たちではどうしたらいいかもわからない。そんな感じで神様を“持て余す”地域が出てきたそうなんです。


そこであの集落は、そう言った産土神をよその土地から引き受けることで、その対価をもらっていたそうなんです。いろんなところから、御神体やら、面やら、鏡やらが納められて。今でいうと、神様向けの賃貸住宅みたいな感じですかね?


役場の人は「あそこはそういう場所なんだ」と言っていました。僕が現場で見た蔵は、そのためのものなのかも知れませんね。ただ、なぜ役場のその人がその集落に触れるのをそんなに嫌がったのか、結局よくわからなかったんですが。


はい、あの集落での話はそんなところです。すみません。怖い話を聞きたいってことだったんですが、あんまり怖くなかったですよね。僕自身も、内容としては充分かな?と思い、それで調査は引き上げました。


―はい。ありがとうございます。そんなところですかね?―


そうですね。翌日から大学のお笑いサークルの友人たちと合流して遊ぶ予定になっていたので、内容を適当にレポートにまとめて、教授に見せて、それで終わりです。あ、そうそう、これ、面白いかはわからないですが、もう少しだけ


―はい、お願いします―


実はその後、インターネット掲示板でこの集落のことを聞いてみたことがあるんですよ。「おまえら、長野県にある〇〇って集落知ってる?」ってタイトルで、成り立ちの話も含めて書いて、もし誰か知っている人がいたらラッキー……くらいの気持ちだったんですが。まぁ結局、全然集落の情報は集まらなかったんですけどね。その代わりに、ちょっとした考察勢みたいな人たちが集まってきて、考察で盛り上がったんですよ。それで、考察の中心になったのは、御神体を保管するのになんでこんな山奥の集落が選ばれたのか?という話で。


例えば長野県なら、善光寺のような大きなお寺があるので、なんでそういうところに持って行って供養してもわなかったのか?って。僕は、普通に遠いからめんどくさかったんじゃない?と思ってたんですが、そうは言っても神様ですからね。確かに、なんであんな小さな集落にお金まで払って預けたのでしょうか。もしかしたらですが、あそこに保管されている神様は、何か隠したいようなもの、もしくはあまり見せられないものだったのかもしれないですね。


いまではあの集落のあたりはすっかり開発されて、観光地になってるみたいですね。僕の話はこんなところです。


―おつかれ様でした。ありがとうございます

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