第10話 …一目惚れ…ですわ…
実乃里「お待たせ致しましたわ」
「……」
再び抱きついてきた実乃里ちゃんにさっきまでの覇気が無い。俺の胸に顔を埋めてじっとしている。
「帰ろっか…」
実乃里「…嫌ですわ…」
「……」
実乃里「どうしてなのですか!?どうして先生は私を!」
抱いてくれない?…いや、違うな…多分…
「なあ、もう一度聞くぞ?…なんで俺なんだ?」
実乃里「…………一目惚れ…ですわ…」
実乃里ちゃんは、決して俺のほうを見ようとせず、ただ唯一こちらに向いた耳は真っ赤…
一目惚れ…一目惚れか…これこそ嘘偽り無さそうだな…しっくり来る。
実乃里「お笑いになりますの?」
「何で?」
実乃里「小娘が策を弄して、嘘をいっぱいついて…本当に何で!何で先生は!!」
「実乃里ちゃん…」
手が使えない俺は、顔だけ動かして実乃里ちゃんのつむじにキスをした。
実乃里「ひゃん!」
「…全部答えるよ…聞いてくれるか?」
実乃里「先生……はい!」
「だから…その前に、さっき渡した鍵でこの手錠外してくれるか?」
実乃里「…え?嫌ですわ」
「なんで!」
実乃里「だって…外したら先生への優位性が無くなってしまいますもの…」
一目惚れした相手にそのまま身を委ねようとは考えないのね?この肉食娘は…本当、実乃里ちゃんだよ。
―
―
「結論から言うと…一年、待ってくれないかな」
実乃里「え?嫌ですわ!」
「…理由を聞こうとは、思わないのか!お前は」
実乃里「だって…」
ぶ~たれる実乃里は年相応に見えるから…仕方がないのかも知れないけどな。
実乃里「理由を伺っても?」
「俺さ…高校時代の恋人が二年前に死んでてさ」
実乃里「…御祓ということですの?」
「違うよ…それで落ち込んだ俺を身体を張って救ってくれた親友みたいな女の子がいたんだ」
実乃里「……」
「その子に一年間依存して…一年前に別れて…この間再会して約束したんだ。あともう一年、死ぬほど考えてお互い気持ちが整理出来るなら…付き合おうって」
実乃里「……」
「正直、言うとね…多分振られるだろうなあと…思ってはいるんだけどね…」
実乃里「先生からは振らないんですの?」
「あいつは命の恩人だから(笑)。あいつが戻ってくるなら…一生を掛けるよ」
実乃里「それを…待てと?」
「………虫の良い話しだよな…ごめん」
実乃里「……」
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