第39話 洞窟、死亡

「その剣、壊しちゃうね……」


素早くリザードマンに近づき左手でリザードマンの持っている剣を掴む。


そして思いっきり力を入れる……パキンと綺麗に折れた。


『ラビリルの覚醒モードキターー!!』

『負けたと思った』

『いやそんな簡単に武器破壊出来んって』

『刃の部分掴んで折るのヤバすぎ』

『腹にずっと穴空いてるの痛々しすぎる』

『カッケェ……』

『これがユニークスキルか』


コメントを見れるくらいにまで余裕が出てきた。


「さっきは良くも私の腕を切り落としたね!」


ずっと隠し持っていた短剣を手に持つ。


そしてリザードマンの腕目掛けて短剣を振る。


「これでおあいこ……じゃない、こっち左腕だった」


上手くリザードマンの腕が切断出来たと思ったら私と違う方の腕を切っていた。


「もう片方も切っちゃおうねー」


ノリに乗って両腕とも切られてしまったリザードマン。


『どこから短剣出したし』

『急に短剣現れたなw』

『謎の多き女、ラビリル』

『カッケェ……』

『今、とても酷い行為を見た』

『なんかリザードマンが可哀想に見えてきたぞ』

『両腕を無くしたリザードマン』


攻撃手段を無くしたリザードマンは私に体当たりしてこようとする。


避けようとしたが私とリザードマンの間にパラが割り込んできたのでその場で待機する事にした。


体当たりはもちろん打撃攻撃なので倍返しで反射されリザードマンが飛ばされる。


「パラ……今まで隅っこで隠れてたのにいきなりノリノリじゃん」


剣とか無くなったもんね、もうパラだけでも勝てるね。


案の定パラは《麻痺粉》を使用してリザードマンを動けなくする。


そしてお腹辺りからパクパク食べ始めた。


「あれ?私の右腕どこ行った……?」


切られた後の腕とか部位はモンスターでもプレイヤーでも数分は消えないはず、よく考えてみたらさっき切ったばっかりのリザードマンの腕も見当たらなかった。


「もしかして……パラ、私の腕食べた?」


私の問いかけに聞いているのか聞いていないのかずっとリザードマンを食べていた。


『うーん、これは懐いてないw』

『飼い主が食われてて草』

『カッケェ……』


さっきから同じコメントしかしない人いない?!いつ見てもそのカッケェコメントあるよ


『"リザードマン"を討伐しました』


「あ、死んだ」


どうやら完食したらしい。


「うー、壊したりないよー!」


完全に良いところをパラに取られて不完全燃焼であった。


なんかずっとスッキリした感覚なんだけど前使った時こんな感じだったっけ?


とにかく前のような破壊モードの暴走も無さそうなので解除はまだしないことにしよう。


「宝箱でも見るかー」


宝箱を開けると中に入っていたのは赤色の水晶のようなものだった。


「何これ?」


スキルオーブ《筋力アップLv1》


『スキルオーブだ!超レアアイテム!』

『初めてみた!』

『カッケェ……』


どうやらスキルオーブとやらを使うとスキルをゲット出来るらしい、今回のは《筋力アップLv1》


筋力が上がるスキルのようだけど私は筋力をあんまり上げたくないんだよね、モンスターとか壊れやすくなっちゃうし。


「まあ、売れば良いお金になるか……」


そう思いスキルオーブを使わずに仕舞う。


そして今回は街に戻らずに洞窟の入り口までテレポートした。


『もう一回攻略するの?』

『周回ですね、分かります』

『カッケェ……』


この人はいつまでカッケェってコメントするのだろう。


「違う違う、ほら、さっき洞窟の壁壊せなかったじゃん?今なら壊せるかなって」


ひとまずそこら辺にいるモンスターと敵対しては逃げてを繰り返そう。


『うわぁ……どんどん目の輝きが強くなってる』

『マジで壊す気なの?!』

『カッケェ……』

『他のプレイヤーも巻き添えになるってw』


「え、今の私って目が光ってるの?!」


鏡とか無いから分からないけどコメントを見ていると赤く輝いてるらしい、それもステータスが上がるほど輝くようだ。


そして上限のステータス3倍になった。


「よーし!やっちゃうぞー!」


腕をブンブン回して洞窟の壁に近づく。


そして力いっぱいに壁を殴った。


ビシッ


殴った所から次々と亀裂が入っていく。


その亀裂はどんどん広がっていき洞窟が揺れている気がする。


「あれ?もしかしなくてもヤバい?」


『今頃気づいたか』

『あーあ、これ洞窟崩れるぞー』

『カッケェ……』

『洞窟にいる奴ら全員巻き添えだー!』


ゴゴゴゴ


洞窟の揺れが酷くなっていき天井が崩れ始める。


「いや、噴水は壊してもすぐに直ったじゃん!洞窟もすぐに直るんでしょ?!」


とにかくここから逃げなきゃ――


逃げようとした矢先、身体が重くなる。


「嘘でしょ……このタイミングで破壊モード終わったんだけど」


『さようなら、ラビリル』

『良い奴だったよ』

『カッケェ……』


私はそのまま崩れる洞窟に下敷きになり死んだ。

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