第5話 お使いと迷子

「身体が軽くなった気がする……装備のおかげかな?」


私はステータス画面を開いて装備を確認する。


ラビリル Lv9


HP180/180 MP180/180


筋力 14 防御 26

賢さ 9 俊敏 46

幸運 9

SP0


スキル《ヘルプ》《番狂わせ》《異常者》《疾風》


装備

  武 ホワイトグローブ 筋力5

  頭 疾風の帽子 防御2 俊敏3

  胴 疾風の装束(上)防御3 俊敏5

  腰 疾風の装束(下)防御3 俊敏5

  足 疾風の靴 俊敏10

  他 疾風のスカーフ 俊敏5

    なし


「身体が軽くなったどころじゃない?!2倍以上速くなってる!」


想像を超えるとんでもない装備だったらしい。


それになんかスキルが増えてる。


「ヘルプ、なんか《疾風》ってスキルが増えてるんだけどなんで?」


『セットスキルです、特定の装備品を装備することで手に入れられます』


すぐにシステムメッセージで答えてくれる。


「なるほど!効果はどうかなー」


《疾風》……MP10消費して10秒間俊敏を2倍にする(クールタイム1分)


取得条件……疾風シリーズを全て装備する


「さらに俊敏2倍!ほとんど3桁いくね」


これでフォレストマッシュも怖くない!リベンジマッチだ!


私は森に向かって走る、その時にふと広場の噴水が目に映った。


"強くなった今なら壊しきれなかったあの噴水を壊せるのではないか"


そう思って噴水の前に止まった。


何やら見られている気がする、装備のせいかな?


まだほとんどの人が初期装備だからこのカッコよくて可愛い疾風シリーズは目立つらしい。


私は思いっきり噴水に殴りかかる。


「えい!痛――ったいけど前よりはマシ!」


防御が上がったからか武器が変わったからかそこまで痛くなかった。


ガンガンと叩きつけるように噴水を殴る。


ピシッ


噴水にヒビが入るがすぐに直ってしまう。


「まだまだー!」


ヒビが割れてはすぐ直りを繰り返す噴水。


「おい、またあの美少女が噴水に攻撃してるぞ」

「マジ?装備変わってんじゃん」

「すげぇ鈍い音鳴ってるけどマジで痛くないん?」

「かわええ……そしてスカートの中見えっ!くそ、あの黒いモヤが邪魔だ」


なんか私のスカートの中を覗こうとしている人がいるのが話し声で聞こえた。


ふん!センシティブ設定してるから誰も私のスカートの中は見えないよーだ。


ゴッ


攻撃につぐ攻撃を繰り返してようやく噴水の一部が壊れた。


「よし!やっと壊れた!」


しかしすぐに欠けた一部も直ってしまう。完全に壊せなかったのは残念だけどまた今度にしよう。


「おお!すげぇ」

「何が起こるんだ?」

「いやあれ破壊不能オブジェクトじゃねぇのかよ」

「でもすぐに再生したな」


いや何も起こらないよ?


私は満足して森の方へ向かってまた走った。次は全て破壊を目標!


森に到着するとすぐにウルフに遭遇した。


「見てよウルフくん、カッコいい装備でしょ!」


くるりと見せつけるように回るがウルフは問答無用で突進してくる。


「もう!ちゃんと見てよね」


ピョンと飛んで避けてから思いっきり殴る、一発では死なないが続けて殴るとすぐに倒してしまった。


『ボス撃破のお知らせ!始まりの平原でアルテナパーティがキングゴブリンの初討伐に成功しました!おめでとうございます!』


ウルフを倒していたらシステムメッセージが流れてきた。


「ボス倒すとこんな通知が来るんだ、私もこの森のボスを倒せば私の名前がみんなの通知にくるのかな?」


初討伐だけみたいだしちょっと特別感出ていいかも。


早速ボスを倒しに行こうと思ったのだが、時間を見ると12時過ぎだったので母に怒られる前に一旦ログアウトしよう。


「はー楽しかった」


頭につけている専用のゲーム機を机の上に置いてリビングへと向かう。


「ゲームは楽しんでる?」

「うん、すっごく楽しいよ」


母は心配そうに私を見てきた、さすがに私もゲーム機は壊したりしないって。


「そうだ、後でお使いに行ってくれない?」

「えー、まあ良いけど何買ってくれば良いの?」


ご飯食べたらすぐにゲームしたかったんだけど買う許可を貰った訳だし後でゲーム禁止にされたらたまったもんじゃない。


「お醤油を切らせちゃってね」

「じゃあご飯食べたら行ってくるよ」

「お願いね」


パクパクとご飯を食べ私は外出の支度をした。


「じゃ、行ってきます」

「余ったお金は好きなように使っても良いよ、ただし買った物は壊さないでね。最近は大人しいし大丈夫だと思うけど」


そりゃゲームを買う為に大人しくしてたもん。


ていうか千円渡されたと思ってたんだけどよく見たらこれ5千円じゃん、帰りにクレープとか買おうかな。


ガチャリと扉を開けて大型ショッピングモールに歩いて向かった、家から数十分の距離なのですぐに着いた。


「ふんふんふ〜、お醤油は何処かな?」


おっ、あったあった、ついでにジュースとお菓子も買っちゃお。


ポイポイと買い物カゴに入れていく。


ピーンポーンパーンポーン


『本日もご来店いただきまして誠にありがとうございます。

ご来店中のお客様に、迷子のお知らせを致します。

白のワンピースとピンクの靴をお召しになった5才ぐらいの女の子を、お連れ様がお探しです。

お心当たりのお客様は、一階サービスカウンターまでお越し下さいませ。

繰り返し迷子のお知らせを致します――』


白のワンピースにピンクの靴ねぇ……。


お菓子売り場で熱心にお菓子を眺めている小さな女の子がちょうどそんな格好をしているんだよね、うん。


人違い……じゃ無いよね?


「ねぇ、お母さんはどうしたの?」

「分かんない!逸れちゃった」


凄い元気に返事してくれたけど迷子の子だよね?


「……好きなお菓子1つ買ってあげるからお母さんの所行こうか」

「良いの?!じゃあ飴ちゃん!」


女の子が選んだお菓子を買い物カゴに入れて会計をする。


「貴方その子……」


レジの人も迷子の子に気づいたようだ。


「お菓子に釣られちゃったみたいです、サービスカウンターまで連れて行きますので」

「貴方も小さいのにしっかりしてるね、ほらお菓子にはシール貼っておくから」


会計も済んで飴ちゃんは女の子に渡すと凄いニッコニコでお礼を言ってくれた。


「ありがとうお姉ちゃん!」

「じゃあお母さんの所にいくよ?」

「うん!」


私は女の子の飴ちゃんを持っている反対の手を握ってサービスカウンターまでゆっくりと歩いた。

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