「お嬢様とデートの約束」
告白されて翌日、俺はいつもの様に一人で登校していた。が、その途中になにやら普通ではお目にかかれない黒い高級車が俺の目の前に止まった。周りは殺風景で、どう見てもそれが違和感でしかない。近くにいた人たちも戸惑いと驚きで騒がしかったが、すぐに、その騒ぎは収まった。そう、車の中から出てきたのは、お嬢様、星川愛菜だ。彼女の父は、この街で知らぬものはいない株式会社星川ホールディンクスの社長。20代のときに暮らしを豊かにというのをテーマに、暮らしを支える商品開発を始めるため企業。その後、商品は、驚くほど売れ、今では世界で活躍するほどの企業になった。その代表的商品がユメミゴコチという商品だ。ユメミゴコチは精神を安定させる成分を使い、創造性を働かせた夢を見させ、疲労回復と記憶力増加の効果がある。そして、それを作ろうとしたきっかけが、娘の愛菜(当時7歳)が『夢で王子様にあってみたい』という一つの願望からだったのだ。そして、愛菜は、商品開発にとって、とても創造性があったことから、彼女は、次期社長として期待されているのだった。そんな彼女が、高級車から出てきても、何も違和感がない。しかし、その彼女が、何の変哲もない陰キャ高校生田中陽希を見つけては、大きく手を振り、「おーい、おはよー」と大声で言うもんだから、周りは『誰こいつ』的な目線を浴びせた来る。ごめんね、こんなやつが彼氏で。
「おはよう。どうしたの?」
「付き合ってるんだから、一緒に登校しようと思って。」
俺は結局、彼女に好きと言われた後、付き合うことになった。愛菜に、なぜ好きになったかを聞いたら、
「私は、もともと貴方に微塵たりとも興味がなかったの。正直どうでもよかった。」
と答える。
知っていたことだが、改めて言われてみると結構キツイ。しかし、そんな彼のことを見てみぬふりをして、愛菜は続ける。
「でも先日、ふと思ったの。もしも陰キャの彼が、わたしのことを好きだとしたら?彼に、恋愛感情があったら?彼と付き合ってみたら案外楽しいんじゃないか?ってね。」
そう、愛菜が思っていることは、別に変なことでもない。逆に、俺みたいな人に、興味と期待を持ってくれている。それが多分彼女なのだろう。世間からの評価を気にせず、自分のしたいことをする、考える。それは、俺の気遣いとかそんなんじゃなくて、彼女がしたくてしているのだろう。しかし、何故俺なのだろう?他にも陰キャはいっぱいいるのに、何故その中の俺なのかに戸惑いがある。やはりあのラブニウムの力なのか?
「その、俺みたいなやつに興味を持ってくれたのは嬉しいんですけど、なんで俺なんですか?他にも陰キャはいるのに。」
愛菜は、少し拗ねた表情を見せてくれたが、すぐに笑顔に戻り、こう答えた。
「なんで俺なんですか?といっていましたけど、貴方だから、田中くんだからなんですよ。貴方に、その、惚れちゃったというか。」
そういう愛菜の顔は、すでに赤くなっていた。赤すぎて肉が焼けそうなくらい。普段見られない照れ照れの愛菜も可愛らしい。しかし、陽季がジロジロ見ていることに気づき、その林檎のような顔をそっと隠し、話を続ける。
「田中くんの友達に、飯尾和也という人がいますよね?あれ、私の幼馴染なんです。飯尾さんは、いつも一人でいる人に積極的に話しているんです。昔の私も、彼に何度話しかけられたことか。」
あいつと愛菜が幼馴染なのは驚いた。というか、愛菜は昔、俺のように一人だった?という疑問があった。
「一人でいたって、星川さんが?」
「はい、私がまだ小さかった頃は、お父様の会社は有名ではありませんでした。私は、どこにでもいる一般人。今だから私が普段静かでも清楚だ〜とか言われますが、昔はずっと静かなもので、おそれられてましたよ。」
「でも何で俺を好きに?」
俺は改めてそう質問した。
「理由は単純です。貴方が、昔の私にそっくりだから。同じボッチだった同士、付き合ってみたかったんです。」
愛菜はきっと、自然と手を差し伸べてくれているのだろう。きっと彼女のようになってほしくないから。陽季もその愛菜の様子を見て、変に俺に絡んできたのだろう。え?つまり、ラブニウム関係ない?いや、ラブニウムは相手が恋愛感情をもたせるものだから、ラブニウムのお陰で愛菜の興味を恋愛に変えてくれたのだろう。でも俺は、そんな一面もある彼女のことを、もっと好きになってしまう。
そんな話をしているうちに、気づけば学校の前まで来ていた。しかし、校門で陰キャと学校1のお嬢様が一緒に歩いているものだから、周りの生徒のざわめきはすごかった。まだ世間では、俺達が付き合っていることを知らない。突然釣り合うはずもない男女が一緒に歩いていたら、当然困惑するだろう。
「なんであんなに騒いでるのでしょう?私達、ただ歩いてるだけなのに。」
「それは、ある日突然、俺みたいな空気よりも軽いやつと一緒にいたら驚くでしょ...」
「私が誰といようが勝手でしょう?」
何か愛菜って、どこかずれてる気がする。まあこれは庶民とお嬢様の差なのだろう。
「でもみんな星川さんの事が好きなんですよ。みんな羨ましがりますって。」
「私は、誰のものでもないんだけど」
愛菜は一緒にいたいからいるだけ。私が好きにしているから、ほっとけと言わんばかりに、俺達を見続けてくる人たちを睨み返していた。
「でも、俺のせいで、星川さんに何かあったら...」
俺がそう言うと、愛菜は愕然とする様子を見せたが、その後、少し頬を赤くして「じゃあ、証明してみる?」と問いかける。
「証明って何を?」
「簡単なこと。田中くんが私と釣り合っているか、それを確かめるの。」
きっと、愛菜は俺が、愛菜といっしょにいるこの時間を否定したことを怒こっているのだろう。だからそんな評判を変えてやろう。そういうことだろう。
「証明って、どうやって?」
俺がそう聞くと、彼女はさっきよりも更に頬を赤くして答える。
「デ、デート..とか...」
「デートおおおおおおお!?」
デートって、あのデート。つまり、コミュ障の俺が、いきなり美人と出かけたりするということ。やばい死ぬ。そんな俺の驚きを耳から耳へ流し、愛菜は続ける。
「だって、認めてもらうには、デートで田中くんがリードしてくれて、私を楽しませてくれたら、問題ないでしょう?」
「それは〜そうだけど。」
「付き合っているんだし、デートは普通よね?それとも、私とデートしたくない?」
彼女の必死さと、断ったら今にでもその美しい瞳から雫が溢れてきそうなので、俺は静かに首を上下に降ると、彼女は一気に表情を明るくし、笑顔で「じゃあ今週の土曜日ね!約束だよ♡」と一言いって走り去っていった。
『デートするって言っても、知識とか全然ねえぇ。一応和也に相談するか。』
まだ周りが騒がしいが、そんな野郎は無視して、俺は急いで教室へ行ったのだった。
後書き
全文お疲れ様でした。いや最初ながすぎるわ...って?ですよね~。すみません。2話は星川愛菜がどういう人物かを知ることが出来たと思います。愛菜、めっちゃデートしたいやつですやん。てかラブニウムは関係あるの?関係あります。ラブニウムは、その人が、自分に思ってる印象は変わらず、ただ好きという恋愛感情を追加するだけなんですね。つまり、自分のことを嫌いと思ってるやつが、ラブニウムの影響を受けると、好きなのに嫌いという現象が起きてしまうわけです。(いつかこの設定出します)ちょっとあとがき長いですね。ここまで来たら、次話も読んでくれるよね!!それでは〜
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