第42話 メロディアレーゼの陥落
そもそも冥界とはどこにあるのでしょうか?
そしてどこから入れるのでしょうか?
普通に誰かに聞いても答えられるわけがありません。
もし答えたらそれは詐欺師か聖職者ですね。
でも、精霊たちは違います。
彼らは生命の終着点であり休息地でもある冥界について、ちゃんと知っていました。
そして案内……
「だめじゃ」
してくれませんでした、このヴェルディア様のアホ~!
「ぐっ、やめぬか。我々には想うだけで伝わるものは伝わるし、痛いものは痛いのじゃ!」
だったら早く吐きなさい。
どこに冥界があって、どうやったら行けるのですか?
私はヴェルディア様の首根っこを掴んで頭を揺らしながら尋ねます。
子供たちにすら別れを告げた私にもう怖いものはないのです。
ただ行って、バカなことをするものを叩き潰して帰ってきますわ。
相手が魔族なのかモンスターなのか、はたまた人間なのか、それとも冥界の住人なのかはわかりません。
けれども、ここまで広範囲でラオベルグラッド王国を攻撃して来たら、これはもう生存競争の一部なのです。
私たちが幸せに生きていくために、私は敵を倒します。
拳を振り上げたのがどちらが先かなどわかりませんが、私の子供たちに害をなすなら許しませんわ。
「だっ、だめじゃ!」
強情ですね。
なぜここまで反対するのでしょうか?
私が負けるとでも?
「負けると思ってるわけじゃないんだ」
ヴェルディア様ではなく、忽然と現れたモルドゥカ様が答えてくれました。相変わらずの可愛らしい見た目です。
「ではなぜ?」
「精霊たちはその場所を恐れる。そこには生ならざるものたちが闊歩していて、死後の世界を取り仕切っている。彼らと精霊は似た者同士であり、違うものでもある。決して交わらない。だから、僕たちはついて行けない。基本的に……」
モルドゥカ様は少し遠回りな表現で教えてくれますが、ようするに僕たちとは相いれないものが住む場所に私を行かせたくはないということでしょうか?
「では応用的になら誰か来てくれるのですか?一人で行くつもりでしたが」
「行けるものは行ける。キミが調査を頼んだシャドーのような闇属性か、メロディアレーゼのような無属性の精霊は問題ないだろう」
私の中でついてきてくれるようお願いする精霊様が決まりました。
「は~い♡メロディアレーゼ、行っきま~~~~っす!!!!!」
シャドー様一択ですわね。
あとはシャドー様に紹介してもらって、闇属性の精霊様を別でお願いしてもいいかもしれません。
「エメリア様、相変わらずの華麗なるスル―――。ゾクゾクしますわ~♡」
黒い影のモンスターを討伐する中で仲良くなったのか、シルフィード様の風魔法でふわふわ浮きながら両手で肩を抱えてゆらゆらしています。
シルフィード様、そのままあそこの出口の方にお願いします。
「えっ?なんで~~~」
ふわふわふわふわ。手足をじたばたさせながらも流されて出口から出て行ってしまう姿はシュールでした。
「それではシャドー様、お願いできますでしょうか?」
『構わない。エメリアの頼みであればついて行く。場所は把握しているから案内する』
シャドー様は喋れないようで、念話で私の頭に直接声を届けてくださいます。
「待てシャドー!行ってはならぬ!」
まだヴェルディア様が言っていますが、私は行きます。
「当然ながらわたくしも行きますわ。だから大精霊様方もあまり心配なさいませんように。血管が切れて死んでしまって冥界でこんにちわすることになってしまいますわ?」
大精霊たちは人間ではないので血管が切れることはないでしょうが、そもそもいつの間にここへ戻ったのでしょうか?
そしてなぜ当然のように一緒に行くつもりなんでしょうか……?
「えっ?連れて行く気はないのですが……」
「えぇ~~~~~」
ヴェルディア様に対して上から目線で語っていたところからの転落……不覚にも笑ってしまいましたわ。
「エメリア様。あの無属性のモンスターを放った大元が相手であれば、私を連れていくべきですわ!私しか無属性魔法は……」
そんなことを言い募るメロディアレーゼ様の前で、私は無属性魔力を固めた球体を出しました。
当然ながらメロディアレーゼ様の目が点になっています。
周りを見ると、ヴェルディア様も、モルドゥカ様も、シルフィード様も……シャドー様まで目が点になっています。
あれ?そんなにおかしいですか?
ここまで良いように無属性のモンスターにやられたのですから対策を考えるのは当然です。
これでもうメロディアレーゼ様の卑猥な魔の手に怯えることはなくなりました、そう言ったのは無属性魔法が使えるようになったからです。
「そんなぁああぁぁぁああああああ」
メロディアレーゼ様は崩れ落ちました。
すでに横たわっていたのに、今はもう地面に張り付いていらっしゃいますね。
すみません、あまりにもセクハラが酷いので、夫や子供のためにも私は頑張りました。
「あはははは。唯一の存在価値を失った可哀そうな精霊になった気分はどうかな?」
そしてモルドゥカ様が酷いことを言っているので、さすがにそれは止めます。
「モルドゥカ様、おやめください。メロディアレーゼ様にはかなりご活躍頂いたのです。感謝していますわ。でも、私はこの攻撃をしている張本人を倒さなければならないのです」
そうして、私とメロディアレーゼ様、シャドー様、シルフィード様は冥界へ向かいました。
精霊術師に対して、精霊様の涙というのは非常に強力な武器なのです。
仕方ありませんわね。
もちろん、これが最大戦力ですし、私が無属性魔法を使えるようになったと知ったメロディアレーゼ様は今後はセクハラは控えると約束してくださったので、問題ありませんわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます