灰天使アリスくん魔法グラップル奮闘記【男性希少貞操観念逆転世界】

五月雨一二三

第1話 全裸で目覚めは最悪

【御注意】

 当作品は抑えた叡智描写ソフトエロを含みます。ABCのBくらいまでの表現を予定します。

 物語の性質上、登場する女性たちはほぼ全員が性欲モンスターチ〇ポのためにいつでもパンツを脱ぐです。

 そして一番重要な点。この世界は貞操観念が逆転しています。

 この世界の男性は私達の世界の女性穴があったら入れたいのが私たちの世界の男この世界の女性は私達の世界の男性です棒があったら入れたいのがこの世界の女

 


◆◇◇◆◇◇◆



 なんだか酷い夢を見てしまった。しかも記憶にガッツリ残っていて気分は最悪。


 とはいえ酷いと言っても見た夢のがアレなだけで至る過程は自分にしてみれば日常の延長に過ぎなかった。昼間は輸入雑貨屋の見習い店員(養父オヤジが店長。二人で仲良くボンクラ経営)で、転じて夜は違う顔を持つという二重生活からこぼれ落ちたがゆえに『』と解釈すべきだろう。


 そうだね、ええと、どこから語ろうか。


 夜の別な顔――二重生活で俺が一体何をやらかしているかに触れる前に、まず、俺自身は利己的なクソ野郎であって決して正義の味方ではないと断言しておく。

 ただ、おのれの穏やかな日常のために、と表現するのが正確な言い分となろうか。


 俺は自分たちの住まう南米P国を蝕む『麻薬カルテル』の存在を外科的に駆逐する戦士の一人なのだった。こう言うと、あるいはもしかしたら公安などの国家保安機関の人間だと勘違いさせてしまうかもしれない。だが実際は俺は隠された私組織の所属であり――要は非合法組織であり、テロリストとも呼ばれる存在であった。


 今回はノトージョ・ファミリーの危険ドラッグ生産拠点を壊滅させるのが目的で。


 結果だけ語ると、それは自画自賛したくなるほどスマートに完遂せしめた。


 コカ葉の畑を焼き討ちし、畑を守る下請けギャングどもはすべて射殺、または斬り殺し、薬物生成施設ドラッグプラント高性能爆弾セムテックスで爆破、関わる化学者並びにその助手ドラッグデザイナーも一緒にあの世まで吹っ飛ばし、事務所の金庫に保管されていた重要書類、ディスク、メモリ、札束をまるっと強奪、そうして後腐れなくお手製焼夷爆弾ナパーム灰燼かいじんに帰してやった。


 ああ、うん。言いたいことはわかる。


 まったくその通り。さすがだね。


 実はこの手記を読めるのは基本的に日本人だけなのだ。なにせ習得難易度が極悪ヘルモードとも揶揄される日本語で書いているのだから。かく言うバチクソ難しい言語を扱うには、必然と頭が良くないと無理。なので、たとえ戦争のない平和ボケの国と指さされても、俺が行なった行為の根本欠陥にはすぐに気づいてしまうはず。


 繰り返すが、言いたいことはわかる。その通りなのだった。


 


 ……えっ? 言いたいことが思っていたのと違うって? でもほら、そうでしょ?


 一つの麻薬組織が瓦解したとて、すぐに別な麻薬組織が地域に台頭してくるから。


 ただ、それでも。


 武力行使テロリズムに訴えてでも。

 何もしないよりは、マシ。


 うかうかしていると地域の危険ドラッグ被害は日々悪化をたどるのである。

 政府の役人どもの働きなど期待しても無駄。彼らは大体悪党と癒着しているから。


 なので――


 ほんの僅かでも、被害を緩和させるためには元凶となる極道どもを自分たち住民が始末するしかないのだった。もはや交渉の余地なし。汚物は消毒しかなかった。


 ……さて、酷い夢の続きを語ろう。


 夢の中の、二日後、宵の明星。


 自分たちの組織規模では非常に大掛かりな作戦を敢行し、その成功を祝って――身内でささやかな祝賀パーティーを開いて宴もたけなわ。

 俺も未成年18歳未満ではあったが、養父の許可を得て特別にコロナビールを1本だけラッパ飲みをした直後だった。


 俺は突然、胴から上下断裂されてしまう。


 ……は? どういうこと?


 普通に致命傷。


 ごとんと崩れ落ちる俺の……上半身。


 何が起きたか理解できず、腕で半身を起こし、自身の下半身を見て状況を悟った。

 俺、死んだわ。

 養父オヤジが唖然とした表情で酒の入ったグラスを手から取り落とし、駆け寄ってくる。


「トーヤ!? トーヤ!? 何が起きたんだ!? 腹に爆薬を仕掛けられた!? どうなっているんだ!? おい、しっかりしろ!! ああ、神さま!!」


「……げふ」


「トーヤ!! トーヤ!!」

「オヤジ、俺、爆発したんだけど……? いつの間にリア充になってたんだろう」


「お前は確かに良い男だ! 女の子にモテるだろう! 三軒隣のアーシャちゃんとかお前のことが気になってしようがないって! だがわからない! 突然、千切れるように! そう、前触れもなく千切れるように! なぜ!? どうして!?」


「ああ……まあ、これはさすがに助からないってのはわかるよ……」


「トーヤァ!!? 俺の大切な息子よ!!」


 こんな内容の夢を見たのだった。

 ……酷いだろう?


 確かに、俺もいつかワケのわからん死に方はするとは思うけど、これはない。

 せいぜいが蜂の巣にされるか、刺されるか、爆発であの世まで吹っ飛ぶか。


 爆発はともかく、胴体上下断裂はないな。うん、ホント、ないわー。


 グロいし、腸からうんこ漏れまくるし。臓物臭って、要は糞便臭だからね。


 ムグムグと口を動かして寝返りを打とうとする……が、うーむ、何かおかしい。


 そして気づいてしまった。


 ……俺、水の中で立って寝てるじゃん。


 えっ、どうなってるの!?


 とても低い確率ではあれど、人は立ったまま眠ることもあるという。

 例えば日本のブラック企業戦士たちとか。疲れすぎて立ったまま寝ちゃう。

 後は自衛隊レンジャー部隊の訓練中、候補生が直立ちょくりつしたまま寝てしまうとか。


 ちなみに、両方とも気絶しているとも言い換えられる。


 あまり頑張り過ぎるな日本人。


 特に、俺も養父オヤジと部外秘教本片手に米軍のレンジャー訓練を模したものをやってみたが、あれはキツかった。聞いた話だと日本の自衛隊レンジャー訓練は更に輪をかけてキツいとか。そりゃあ立ったままでも寝てしまう。うん、わかる!


 とかなんとか、一人で納得したものの。


 ……いや、おかしいっしょ!?


 百歩譲って立ったまま寝るのもアリだとしよう。でも、水中ってどういうこと!?


「げほ!? ゴボゴボっ!? ゴボボボ!」

「……目覚めたわね、私の可愛いアリス」


「ゴボォ!?(だ、誰!?)」

「ふむふむ、元気そうで何より」


「げっふぉおー!(いいから助けて!)」


「培養液の酸素浸透濃度を下げただけ。ゆっくり呼吸しなさい。水の中で呼吸よ」

「げぼーごほー!?(意味わからん!?)ゴフッ、ゲフッ(呼吸? 水の呼吸!?)」


「上手い上手い。もうすぐ培養液を抜いて外に出してあげる。それから私と話をしましょう。愛しい我が子。女になるはずが女にないイチモツを生やした希望の子」


「げぼほぁー!!」


「あはは。自分のクローンなのに随分とな男になったわね。可愛いなぁ。……ペニスも皮を被っててショタチンポ可愛いなぁ。自分自身だから、しゃぶるのはダメ?」


「(ぎゃー! どこ見てるの!? やめろ変態!? のび太さんのえっち!!)」


 ……。


 ええと。混乱の中、現状で把握したことだけを語らせてもらうと……。


 なんだか俺、人が余裕で入れるくらいの、円柱形シリンダーに入れられていて。


 シリンダーの外の、白衣を着た三十路辺りの、メガネの女。手入れを怠った、もしくは無断着なのかボサボサに近い金髪。顔立ちは良いのに目の下に隈が。

 そいつが、エロいものを見るいやらしい視線でシリンダーの外から俺に話しかけてくるのだった。おっと、コイツ、よだれを垂らしやがったぞ。純粋に引くわ。


 ぷしゅう、ゴボゴボと円柱状シリンダーから透明の謎液体が抜けていく。ついでに肺に満たされていた謎液体を俺はケロケロと吐き出す。うう、気持ち悪い。


 謎液体は単なる水のようで、しかし僅かに粘度を持っているようだった。濡れた腕をこすると少しヌルっとするのだ。なんというか薄めた大人玩具用潤滑剤みたいな感じ。表の仕事の輸入雑貨屋ではそういう成人グッズも扱っているのだった。


 それはともかく、透明な謎液体がすべて抜けた直後に洗浄液なのだろう、そいつを俺に容赦なくシャワーでぶっかけてくる。じゃばーっ、どばばばって。

 もう少し優しくできないのかと内心でぼやきつつも手で全身を洗う。食い入るような視線に気づく。外にはエロい目つきのボサボサ金髪女。……おい、自身の股に手をやるのはやめろ。そこでナニをするつもりだ。やめろ変態。マジでやめろ。


 外の変態に気を揉みつつ洗浄は終了、晴れて俺はシリンダーから解放された。


「同じ遺伝子を持つとはいえ、少年ショタのシャワーシーンとかご褒美よねぇ」

「ドン引きだよ!?」


「ああ……ゴミでも見るかのような視線にかえってエクステンドなムラムラ感が!」


「(まともに相手するのはやめよう)。それより、何か着るものを」

「えー、もったいないー」


「いいから、そういうのいいから! 何か着るものをお願いします!」

「んー。私のモノで良ければ、着替えはあるにはあるけれど」


「いや待って。俺は女物の服なんて着ないから。性自認は男だから」


「だってまさか、つい最近まで女性だった私のクローン体が突如としてペニスを生やすとか思わなかったもの。何が起きたかホント謎なのよ。我慢して欲しいわぁ」


「せめてパンツだけでも男物を」


「何言ってるの。私、そういう趣味はないわよ。……興味はあるけど。男物のショーツを履く自分とか……ぐふふ。白のブリーフとかね……履いちゃうわけ」


「十分趣味にしてるじゃん……」


「あ、いや、研究所に男はいないから男性用の着替えは用意されてなくてね? だから当然、女物しかないの。


「いや、なんか、その理屈おかしくない?」

「そう? ここじゃこれが普通よ。とかむしろ萌えるでしょ?」


「えぇ……?」


 【注釈】

 この世界の男女の格好は、。が、この世界の男性の衣服は良く言えば華やかで、悪く言えば私達の世界視点で言うオカマっぽい印象を受けるものを彼らは好んで着ます。対して女性は簡素シンプルな衣服を好みます。


 ……この、ちょっとない高次元レベルの困惑は、どう語ればいいのだろう。


 俺は、この謎の女に手伝って貰いつつハァハァ興奮していて怖かった、この女の替えの衣服をまとった。

 彼女の異様な気配に負けて、パンツもこの女の替えのものを履いた。


 ホワイトシルクのTバックショーツだった。尻谷間に生地が食い込んで変な気持ちになる。しかもキレイに収めないとペニスはともかくタマタマがはみ出る模様。


 恥辱。こんなのを好んで履く歪んだ趣味の男とか俺にはちっとも理解できない。


 でもノーパンはさすがに、ちょっとね。


 なんせこの女の替えの服はノースリーブにタイトスカートだったし。もし下から覗かれでもしたら、女装してる上にノーパンまで暴露して社会的に俺が死ぬ。


「ああ……なんて可愛いの。当たり前だけどサイズピッタリ。だって、元は私のクローンだもの。年齢は14歳設定だけどね。……うふふ今夜のオ◯ニー捗っちゃう」


「こんなの、羞恥心で気が触れそうなんだけど……」


「抱きついて頬ずりしても良い?」

「絶対にNO!!」

「キスは? 舌を入れて濃厚に」

「ヤダ!!」

「じゃあせめてセックスを」

「だんだん悪化してるじゃん!?」


「ああん♪ 可愛い男の子に私ったらいけずされてるぅ♪」


「なんでそんなに嬉しそうなの……?」


「まあまあ、落ち着いて。さあ、こっちにおいで。暖かいココアでも入れてあげる」

「落ち着くべきなのはむしろアンタの方だと思う。身の危険を感じる」


「大丈夫よ♪」


「(全然大丈夫じゃない)。……あと、飲み物をくれるならできれば熱いコーヒーが飲みたい。濃い目にドリップしたものを、ミルクと砂糖たっぷりマシマシで」


「はぁい♪ はぁい♪」


 俺は部屋の隅にあった研究用デスク&チェアーの、まるでゲーミングチェアーみたいな椅子に腰かけされられた。材質は何か知らないが座り心地は良い。そうして、少し待っててね、と残して謎のボサボサ金髪三十路女は部屋から出ていった。


「……」


 沈黙する俺。頭の中では、必死に状況を把握しようとしているのだった。

 周りを見回す。白い壁、壁、壁。……どこかの研究室なのだろうか。


 部屋はまず天井が高い。軽く20メートル以上はある。内部は長方形型で、目分測定では30メートル×50メートルくらい。競技用プールくらいの広さだった。

 さらに、そのど真ん中に。

 俺が入っていた円柱形シリンダーが三基、鎮座ましましている。今は三つともカラだ。このシリンダーの、中央のモノに先程まで俺は入れられていたのだった……。


 他に。


 よくわからない電算機器らしきものが向かいの壁にズラッと設置されている。たぶんシリンダーの制御装置ではないかと予測する。モニターには何かの演算結果の数値がずらりと並び、コマンド入力待ちになっているようだった。


 床は学校などで見かけるリノリウム製。チリ一つなく、まるで鏡みたいに磨き抜かれている。謎女の身なりはボサボサのくせに何か矛盾めいたものを感じる。


 うん、わからん。


 落ち着いて状況分析しようとするも、自分が女物の服を着ていること、女物の下着をつけていることに変な興奮を覚えて……その……勃起してしまってうつむいた頃。


「おまたせー」


 くだんの白衣の謎女はメイドを二人引き連れて、ニコニコと上機嫌で戻ってきた。


 メイドは二人とも空恐ろしい美人だった。


 一見するとあどけない少女のようで、しかして耽美な長い睫毛の目元がそれをやんわりと否定する大人の女性のようで。ひと言で要約するなら、反則級美人ドストライクメイド。


 股間の勃起がより烈しくなって、困る。


 ショートヘアのメイドさんはこちらを見てニコッと微笑んだ。もう一人のメイドはなぜかウサ耳を着けていた。はて、メイド版バニーガールか何かなのだろうか。


 謎女はそんな俺の疑問などつゆ知らず、椅子に座る俺のすぐ傍、デスクに尻を預けてニヤニヤしている。目つきがエロい。こいつからは性的な身の危険を感じる。

 そうしているうちにウサ耳じゃない方のショートヘアメイドが、濃いめコーヒー in ミルクと砂糖マシマシのマグカップを俺に手渡してくれた。


「い、いい香りだね。ありがとう(俺ストライク過ぎてちょっと怖いです)」

「いえ、こちらこそありがとうございます、アリスさま……うふふ」

「……アリスさまって?」

「その話をこれから詰めていくのよ。とりあえず、コーヒー、飲んでね」

「あ、うん……」


 コーヒーは苦く、それでいて濃厚な甘さがあった。

 とても美味しかった。

 そして、俺は認めざるを得なくなった。


 これは、現実だと。


 お気づきかもしれないが、俺はこれは夢だとしきりに自分に言い聞かせていた。

 だが、現実だった。夢ではない。避けようのない、まごうなき現実。

 もちろん、仮に夢として、夢中ゆめなかで溺れ死にかけることもあるかもしれない。トンチキな女に自らの裸体を視姦されることもあるかもしれない。

 だが……。

 夢の世界で何かを口にして克明に鼻腔で香りを楽しみ、更には舌で味覚を感じ取るなんてあるのだろうか。少なくとも俺はそんな夢、見たことがない。


 つまり……やんぬるかな。


 俺はあのとき、胴を上下断裂して死んだのが、現実ではないのかと。


 ならば次に考えるのは……そう。


 ここはどこなのか? いわゆる死後の世界なのか? それにしては我が身に生気を感じる。そ、その……女物のパンツを履いて妙に興奮して勃起するとかさ……。


 とまれ、少なくとも。


 天国ではなさそうだ。そもそも俺は天国があったとしても行けるはずないが。

 ならば地獄か? 地獄にこんな旨いコーヒーが出るのだろうか。

 確かに18世紀のフランスの政治家、タレーランはこう言ってはいた。


 曰く、良いコーヒーとは。

 悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、愛のように甘い。


 うーむ……何も、わからない。本当に、何もわからない。正直、かなりヤバい。


 ああ、そうだ。


 素地は良いのにボサ金髪三十路白衣変態女の『私のクローン』発言とか。

 あれはなんのことだろう。そも、人のクローン化技術は禁忌とされてなかったか。

 極めて重大な、生命に対する侮辱、とかなんとか。

 更に、俺に対してひと言目からの『アリス』呼ばわいも気にかかる。


 というかさ、もっと直近のヤバさがあったよね……。


 仕方ないとはいえ男なのに女物の服を着せられて、下着まで女物で。……ああもう。勃起が収まらないんだけど! なんだか変な扉を開けてしまった気がする!


 こ、これから俺は、どうなってしまうのだろう……?




【お願い】

 作者のモチベは星の数で決まります。

 可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。

 どうぞよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る