プロローグ 私が鉄槌を振るうのは
暴力の強さはイコールではない。
アメリカのとある作家が言ったらしい言葉だが、実際、私もそう思う。
どんなに暴力が強かろうとも、それが絶対的なものではない。逆に敵を増やし続け、己自身は孤立する。個人であれ組織であれ、ただ暴れ回る力が強いだけでは生きていけないことを嫌という程思い知らされた。だから私は学んだし、そうしないように努力した。けれど、性格も相俟って難しかった。それに、一人は気楽で良かった。
暴力は暴力でしかない。野蛮なものは野蛮でしかない。それは変えられないし、私個人がどうこう言うことでもない。そんなものは、他人が決めてくれる。私が決めることじゃない。駒の一つである私には。
それでも思うことはある。はたして暴力は悪いことなのか、ということだ。
世界の常は暴力に渦巻いている。国であれ民族であれ、果てには一島国の小さな会社のトラブルでさえ、些細な暴力で満ち溢れているというのに。ああ、こんな狭い世界でも暴力に満ち溢れているなんて、なんて酷く愚かしいことか。きっとジョン・レノンが生きていたら嘆いていたに違いない。
勘違いしないうちに言っておくけど、私は暴力は嫌いじゃない。そもそもヒッピーでもないし。
自分もそれを振るっておいて、いざ受ける立場になって命乞いなんてダサいじゃない。そもそも、そんな弱腰で生き残れるほど、私が生きる世界は優しいものじゃない。
だって、生きるか死ぬかじゃない?
どんな形であれ、どんな結果であれ、私が私で生きることでしかないのだから。
どんな暴力的なことでも、それは私でしかないのだから。
殺すか殺されるか。いつ死ぬかなんて誰もわかからないもの。どんな仕打ちをされようようとも、殺される人間とそうでない人間がいるのだから。
私は殺される人間にはなりたくない。
私はまだ死ねない。
殺す側に居続ける為に。
殺される人間にならないように。
私は、鉄槌を振るい続ける。
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