どうも、酒クズ女サムライです。~呪いの妖刀でTS美少女と化した俺、【酔剣】使いの酒クズ女配信者としてバズリまくる!?~

深海(フカウミ)

第一章・酒クズちゃん、活動開始

【#1】酒クズ女サムライの誕生

「あ〜あ、ついにこうなっちまったかぁ〜……」


 長年ニートとして過ごしていた俺ですが、本日をもってついに家を追い出されました。


 気が付けばすっかりおっさんニート。正直言って、いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていた。

 しかし、実際その時が来ると……あまりにもショックがデカすぎる!!


 こんな時は──!!


「酒うめぇ〜〜!!」


 やっぱり酒に逃げるに限る。そう、まごうなきクズである。


 そんなワケで俺はポケットの有り金を大量のビールに変え、夜の街の公園で一人飲み会をしていた。


(こうなったら”ヤケクソ”だ!! 死ぬまで飲む!!)


 そうやってまさに浴びるように酒を飲んでいた時──俺は視界の隅にあるモノを見つけた。


(ん~? あんなとこに"ダンジョン"あったのか……?)


 公園の片隅に異世界へと繋がる下り階段──”ダンジョンへの入り口”があった。


 ダンジョンはこの世界と融合した"異世界"の一部であり、中にはゲームファンタジー的な大迷宮が広がっている。


 ここに挑む人は『冒険者』と呼ばれ、この数年で成功した人もたくさんいる。


 ただし、ダンジョン内での行動は全て自己責任。大ケガを負って多額の治療費がかかって破産……という話も聞く。


 それにビビってて今まで避けてたんだが──。


(こうなったら、ワンチャンかけるかぁ!!)


 どーせ行く場所なんてない。だったら、命がけのギャンブルでも打ってやるさ!


 そんな酒の勢いもあって、俺はダンジョンに単身突入した。


◇◆◇◆◇


(うぉ……なんかドキドキするな)


 両側が松明で照らされた通路を進んで行く。ダンジョンの中は動画で見た事はあるものの、実際に冒険するのはこれが初めて。


 まるで自分がゲームの主人公になった気分だ。こういう気持ち、ずっと忘れてた気がするなぁ……。


 そんな酔った気持ちで、ダンジョン内を進んでいると──。


(ありゃ、行き止まりだ……)

 

 仕方ないから戻るか……と思った、その時。


 ゴゴゴゴ!!


「!?」


 壁が……動いた!?


 目の前の壁が横へとスライドして、新たな道を示している。これがいわゆる”隠し通路”ってやつか!?


(と、とにかく行ってみるか……)


 俺は酔った身体にムチを打って、隠し通路の先へと進んで行く。すると──。


「あっ!? 宝箱ーーー!?」


 突き当りにキラキラと光る宝箱が!! 


 しかも、これって確か『レアなものが確定で入ってる』っていうヤツだ……こんなの初めて見るぞ!?


(おいおい、ひょっとして……ひょっとするのか!?)


 そんな期待感と共に、宝箱を開けてみると──!!


「これ……カタナか?」


 中に入っていたのは一本の刀。刀身は漆黒の鞘に包まれており、なかなか威厳のありそうな代物だった。


(こ、これはすごそうだ……!! きっと売ったら高値で売れるぞ!?)


 とりあえず刀の状態を確認するため、鞘から刀を抜こうとした──その時だった。


「うわっ!?」


 急に謎の光が!! うわぁあああああああああ……!!


 ────。

 ───。


「──ハッ!?」


 目を覚ますと、俺は床にぶっ倒れていた。手には例の刀を握ったままだ。


(くっそ……なんなんだ。もしかして、この刀は罠だったのか……?)


 そう思って、身体を起こそうとした時。


 ゆさっ♪


「ん……?」


 ふと胸に不思議な重みを感じる。見下ろしてみると──そこには大きなおっぱいが!?


「えっ!? えっ!?」


 俺はスマホのカメラを鏡にして、を確認する。


 サラサラと流れるように揺れるロングヘアーの赤髪! 顔は綺麗に整った色白の小顔! しかも、服はいつのまにか和風の着物になっている!? 


 これって、まさか……。


「お、女の子になってるーーーーーー!?」


 おいおい、これってこの刀のせいか……? お、落ち着け、こんな時は──。


「ステータス!」


 呪文を唱えると、空中に魔法の文字でステータスが表示される。これは誰でも使える初歩呪文である。(ネット情報)



【名前】天霧あまぎりアヤカ(♀)


【クラス】サムライ【装備】呪われし妖刀


【スキル】酔剣すいけん→酔えば酔うほどパワーアップ!


     鋼の肝臓→酒を無限に飲む事ができる



「な、なんだこりゃ……?」


 なんか勝手に名前決まってるし。あと、この"妖刀"って……?


 装備の辺りに触れると、妖刀の詳細が明らかになった。


《呪われし妖刀》→呪われた装備。所有者の性別を”女”へと変えてしまう。元に戻る方法はない。


「なっ!? 元の身体に戻れない……だと!?」


 そんなの、そんなの──。


「最っっっっ高じゃねぇか……!!」


 俺は自分のデッカいおっぱいを誇らしげに張りながら宣言した。


「せっかくこんな美少女になったのに、誰がおっさんの身体に戻りたがるか〜〜!!」


 むしろ感謝してるぞ!! 妖刀の呪い、バンザーイ!!


 ……とまぁ、そんなわけで逆に喜んでいた俺であったが──悲劇とはそんな時に起きるものらしい。


「グルル……!!」


「ん……?」


 背後の闇からうなり声。そちらを振り向いてみると──。


「ガァァアアアア!!」


「わぁぁああああああ!?」


 そこにいたのは、三つ首のデカい獣だった!! 急いで相手のステータスを見る『スキャン』の魔法を唱える!!



【名前】キマイラ


【データ】ライオン・山羊・ヘビを合成して造られた魔物。強力な爪攻撃と炎のブレスを使って戦う。



(待ってくれよ!? 確かキマイラって熟練の冒険者でもやられるバケモンじゃねぇか!?)


 こんな強いモンスター、まだこんな浅い層には出てこないはず!! なのに、どうして!?


「グルァア!!」


「うわぁぁ!?」 


 まさに絶体絶命のピンチ!! そんな時、俺が取った行動は!!


「んっ! んっ! んっ!! ──ぷはー!! うめぇー!!」


 さらに酒をあおる事だった!! 


 まるで本能が反応するように、反射的にそうしてしまった!! ……なんで!?


「ガァォオオオオ!!」


 そして、当然ながら隙だらけなわけで──キマイラは目の前まで迫ってきていた!!


「ぎゃぁぁあああ!?」


 あ。死んだわ、俺……と思ってたのだが。


「ガ……ガウ……!?」


「あれ……?」


 気がつかないうちに、俺は妖刀でキマイラの爪を受け止めていた!


(なんだ、この感覚……? 不思議と身体が動く……!!)


 俺は一度後ろに跳び退いて距離をとり、正面のキマイラを見据えて刀を構えた。そして──。


「はぁっ!!」


「バウっ!?」


 すれ違いざま、キマイラは大きく声を上げ──そのまま崩れ落ちていった。俺は後ろを振り向きながら思わずつぶやいてしまう。


「あ、あれ……勝っちゃった?」


 ふと刀を見下ろすと、赤い髪の女が鏡面に映り込む。あんな強いモンスターを倒してしまったってことは──。


 俺、もしかしてかなり強くなってる……?

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