第4話 ケルベロス

 ケルベロスはもともと魔界まかい西にしてのちいさなまち、その裏路地ろじうら徘徊はいかいしていた子犬こいぬでした。おやにも見捨みすてられ、目前もくぜんせまったせっぽっちでありました。魔界の犬ですから魔力まりょくゆうしていましたが、それもちっぽけでるにらない野良のら犬の子であったのはちがいないです。

 かれひろったのが、まだ「魔王まおう」となるまえの、子どもの魔王でした。


 ケルベロスのも、魔王からあたえられたもの。つよくなれとのねがめて。


 当時とうじ魔王まおう孤児こじでしたが、魔界各地かくち放浪ほうろうしていました。魔王は「すさんだ魔界をえる!」とこころざしたかい、いわば勇者的ゆうしゃてき人物じんぶつでありました。


 ケルベロスは魔王と境遇きょうぐうていたこともあり、おともとしてえらばれたともいえるでしょう。慈悲じひか、あるいはまぐれか、そこは当時の魔王にいてみないとからないことですが。

 

 二千年にせんねん以上いじょうまえのことです。


 当時の魔界は肥沃ひよく人間にんげん世界せかいからはなされ、人間からはきらわれ、ものとぼしくそれをうば修羅しゅら世界せかい魔族まぞく(人間たい)、魔物まもの動物体どうぶつたい植物体しょくぶつたい。そのなかでもちからあるものを「魔獣まじゅう」とぶ)、いずれも本能ほんのうのみで跋扈ばっこしていたようなものでした。力だけが正義せいぎつよきものがよわきものを支配しはいする、地獄じごくのようにてた時代じだいでした。


 それをひとつにまとめたのが魔王だったのです。


 その偉業いぎょうにつきしたがっていた一人ひとりがケルベロスということになります。偉業をすために魔王は自身じしんの魔力を肥大ひだいさせつづけていました。それを間近まぢかつづけたことでケルベロスもまた強大きょうだいな力を宿やどすようになり、からだおおきくなったのです。一大革命いちだいかくめいともいえる魔界統一戦とういつせんのなかでもまれることで知恵ちえにつけていきました。ながきたすえとケルベロス自身は自慢じまんすることもないでしょうが。


 魔界を統一したさき当然とうぜんのごとくつぎてきとなったのは人間たちでした。魔王は魔界と人間界を統一しようなどとまではかんがえていませんでしたが。


 のちに「千年戦争せんねんせんそう」とばれることになる不毛ふもうたたかいの発端ほったんについてはいずれどこかで。きものではなかったことはさっせられると思いますが。


 その千年戦争で、ケルベロスは志願しがんして「門番もんばん」となりました。


 魔界と人間界のさかいち、不要ふような戦いをけようとの思惑おもわくがあったのでしょう。

 魔族、人間、双方そうほう犠牲者ぎせいしゃすくなくするために。

 そのねがいが人間につうじていたかどうかはともかく、魔王は長い戦いのなかでかつてのとうとき志もわすれ、残虐非道ざんぎゃくひどうちていきます。人間すべてをほろぼさんとしていたため、ケルベロスの「門番」としての行為こういは、それにはんする孤独こどくな戦いになっていました。


 辺境へんきょうくメリットはありました。

 魔王のそばをはなれたことです。

 魔王の横暴おうぼうめられなかったのはほぞおもいもあったでしょうが、魔王の影響下えいきょうかから離れたことで理性りせいたもてたとははっきりいえます。結果けっか、千年にもおよぶ戦争に嫌気いやけして、魔王にたいする義理ぎりももうたしたと、魔界を裏切うらぎるような行動こうどうに出て(王国おうこく結託けったく、「門番」を放棄ほうき)、それが停戦ていせんへとみちびくことになります。


 魔王にたいしてはあいにくしみにわるように、すでに「すくいようがない」と見捨みすてています。魔界に対する思いもおなじで、郷愁きょうしゅうさえないといっても過言かごんではないです。


 きずえたいま、モニカに見付みつからなければ、きっとかれ放浪ほうろうたびにでもていたことでしょう。おだやかな余生よせいもとめて。


 破壊はかい暴虐ぼうぎゃくの王とも戦争にはおそれられていましたが、平和へいわでそれはもう過去かこのこと。戦時の悲惨ひさんさをるからこそ、より平和をまもる、その象徴しょうちょうたるモニカを守ると気持きもちが変わったのは自然しぜんなことだったのかもしれません。


 ※このケルベロスの「裏話うらばなし」を本編ほんぺんで出さない理由りゆうは、「モニかな」はシリーズとおしてレイティングつけていないためです。全年齢ぜんねんれいけでこれらを説明せつめいしようとするとどうしても暴力ぼうりょく的になるので。きっと本編では断片だんぺんてきにしか出しません。

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