元恋人と家族ぐるみの付き合いになってしまうとは…罪多き僕らの再会は正解だったのか…

ALC

第1話訳ありな夫婦

須藤家。


「今日もかけるくんの家に遊びに行くの?」


私は学校から帰宅してランドセルを置いた娘の凛桜りおうに尋ねていた。


「うん!今日の体育でも走くんが凄かったんだよ!」


娘は嬉しそうにその様な言葉を口にして満面の笑みを浮かべている。


「そう。危ないからお母さんが車で送ってあげるわね」


娘はそれに頷くので私は用意していたお茶菓子を手にして車へと向かう。

そのまま娘の親友である走の家へと向かうのであった。



郡道家。


インターホンを押すと走の父親が玄関を開けた。


「おぉー。凛桜ちゃん。入って入って。走は部屋で待っているよ」


「わぁーい!おじゃまします」


凛桜は元気よく家の中へと入って行くと靴を脱いで二階へと急ぐ。



玄関に残された私と走の父親は少しの沈黙の後…


「はぁ…家には来るなよ…」


「だって…しょうくんに会いたかったんだもん…」


「会いたいって言ってもだな…家はまずいだろ」


「玄関先で意味深な会話をしている方がまずくない?

すんなりと家に入れたほうが良いと思うな」


「はぁ…分かったよ。昔から強引だな…夏菜かなは…」


そう…

何を隠そう私こと須藤夏菜すどうかな郡道翔ぐんどうしょうは元恋人同士なのだ。

大学卒業で別れた私達はそこから一切の関わりがなかったのだが…

子供が産まれて小学校に入学。

そこで偶然にも再会をしてしまう。

初めは知らないフリをしていたのだが…

何を隠そう子供同士が親友関係になってしまったことにより…

私達は家族ぐるみの付き合いへと発展していった。

そして私と翔は二人だけの秘密な関係へと発展していたのであった。





郡道家。


「今日も走と凛桜ちゃんは仲良く遊んでいたよ。

須藤さんのお母さんが送り迎えをして。

家にお茶菓子まで持ってきてくれた。

今度何かお礼しないとね」


僕こと翔は仕事を終えて帰ってきた妻の直美なおみに本日の出来事を伝えていた。


「そう。じゃあ次の休みにでも私が走を連れて須藤さんの家に行ってくるわね」


「あぁ。頼むよ。ありがとう」




須藤家。


「今日は凛桜が走くんの家に行くって言うから送り迎えをしたわ」


「そうか。次は走くんを家に誘ったほうが良いな」


仕事を終えて帰ってきた夫の寛治かんじに本日の出来事を伝えていた。


「そうね。凛桜にそう伝えておくわ」




そして後日の休日のこと。


「走。そろそろ出るわよ。支度できている?」


「うん。もう出られるよ。お父さんは?」


「お父さんは仕事。私が休みの日に働いてくれているのよ。知らなかった?」


「知っているけど…なんとなく気になっただけ」


「そう。須藤さんの家に行くよ。凛桜ちゃんと遊ぶの楽しみじゃない?」


「うんん。早く行きたい!」


「じゃあ行きましょう」


そうして私と走は車に乗り込むと須藤家に向かうのであった。




須藤家。


「凛桜。走くんとはどれぐらいの仲なんだ?」


「どれぐらいって?」


「どれぐらい仲良しかってこと」


「凄く!親友だよ!」


「あぁ…そうか。それは良かったな」


僕こと寛治はそれに苦笑のような表情を浮かべて無理に微笑んで見せる。


「今日…お母さんは?」


「あぁ。いつものように仕事だよ」


「そっか…分かった」


「何か心配か?」


「うんん。全然心配じゃないよ」


娘と話をしているとしばらくして家のインターホンが鳴って僕は玄関へと向かう。


「走くん。いらっしゃい。凛桜が部屋で待っているよ」


「はい。お邪魔します」


走は子供らしく、けれど行儀よく挨拶をするとそのまま二階へと向かう。

玄関にて残された僕と走の母親は少しだけ気まずい雰囲気に包まれていた。


「なんで来たんだよ…家はまずいだろ」


「そんなこと無いわよ。私の家にも夏菜さんが来たみたいだし。

家族ぐるみの付き合いだから別に変な風に映らないでしょ」


「そうかもしれんが…」


「ってか早く入れてよ。暑いんだけど?」


「あぁ…強引なところも変わらないな」


そう…

僕こと須藤寛治すどうかんじ郡道直美ぐんどうなおみは元恋人同士である。

子供同士が親友関係となり…以下略。




須藤夏菜と郡道翔。


須藤寛治と郡道直美。


偶然にも元恋人と再会を果たしてしまった僕ら私達。

僕ら私達が元恋人同士だと知っているのはまだ誰もいない。

僕ら私達しかこの二人だけの秘密の関係を知らない。


僕も…

私も…

このスリリングで過去に浸れるような何処か心地の良い関係をいつまでも続けたいと思った。



そしていつか関係が暴かれた時には…



僕ら私達は…

その時までこの背徳感に溢れた恍惚な関係を続けようと願うのであった。



罪多き僕ら私達に待っている運命とは…

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