キミに会わなければボクはこんなに苦しむことはなかったのに。

@k0905f0905

第1話

「どうしたんだよ、ボーっとして?」

明日香夢先にクラスメートの鏡が

声をかけてきた。

全国模試が終わってちょうど気抜けしている

ときだった。

「いや、なんでもない」

夢先は窓際にいたが、チャイムがなったので

席に腰かけた。

「なんでもないことはないだろう。あれだろう?」

「あれって?」

「つける薬がないっていうあれだよ」

後ろの席から鏡が夢先の背中を

鉛筆で突っついた。

「違うよ。恋の病なんかじゃないよ」

「本当か」

「ああ、全国模試の結果が気になるんだ」

「わたしも、夢先くんのことが気になるわ」

右隣の席の相鷺黄埔(あいさぎこうほ)が

夢先にちょつかいをかけてきた。

「黄埔、オマエが好きなのは学級委員長の山崎だろう?

浮気はよくないぜ」

「あら、山崎くんまじめすぎてなかなかキスもしてくれないんだもの。

 なんかもう飽きちゃった」

「ひどい女だぜ。なあ、夢先もそう思うだろう?」

「志望校に入れるかな」

夢先がひとりごとのようにつぶやいた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る