第19話 ざまぁ実行
軍鶏は無難に
倒せば取れるシフトモンスターやフュージョンモンスターと違って、ファミリアは断られる可能性があるので、付き合えない。
8キロエリアの回し車に行きたいと軍に申請した。
こっちは軍が動いてくれないと入れない。
フュージョン出来ない4人を乗せるために、ガトリングホースを4体用意してくれた。
二人乗りでも行けそうだけど。
隊長がお義父さんなのは当然として、中佐が3人付いて来る。
「何が出るか判らないからな。狼派、鳥派、草食派の代表だ」
「シフトモンスターとは限らない、と言うより、赤鷲じゃないですか」
「通常が赤鷲で、レアが別ってことも考えられる」
「それ、獲ろうとしたらとんでもなくめんどくさい事になりません?」
「今までは、出るかどうかも判らなかったんだ。お前と行くと何かは出て来るだろ」
行ったら赤鷲だった。派閥の代表とは別に来ていた希望者が獲った。
「赤鷲の希望者もいるんだよ」
「何人くらいです」
「日本が70人、世界中は限がないから断ってる」
「70って」
「フュージョナーは結構いるからな」
「わたしも赤鷲がいいです」
「ズズちゃんはまだ無理」
「何日くらいやってくれる?」
「ここ確かめたら、六甲行くつもりだったんですけど」
怖い動物の頭が一斉に僕を見る。
「まだ、レアが出るかどうか判ってないじゃん」
「確かめたい事はあるんで、明日だけっていうのもなんですから、10日します。僕とは別に、リーナを6キロに入れられますか」
「ああ、人手はある。もう行けそうか」
「適性値は行ってますから。僕じゃないと駄目だったら、どうにもならない」
昨日の内に二人には確認しておいた。
シオンさんもシトロンのお陰で、一人で知らない人とも歩ける。
結果は、赤鷲が2体、軍鶏が2体で、6キロのアイテムの出具合も良かった。
シオンさんがガトリングホースを気に入って、三角山羊、ガトリングホースにしたいと言い出した。
道に出るモンスターの適当なのをシトロンと一緒に倒させて、実戦経験を積ませた。
結局赤鷲しか出なかった。赤鷲はアヌビスと同じ、高級量産機。
神戸は約束をしてある訳じゃないので、北大谷が終わったら、三角山羊を獲りに行った。
先に沼津の
誘き寄せからの不意打ちで先手を通り、全く攻撃させずに勝った。
名前は源三郎。誰だろう。
沼津に帰ったら銀山猫を獲って、5キロボス狩りを僕が見に来るのを待つそうだ。
六人の浄化師の中では控えめで、堅実に生きている。
シオンさんの番になり、シトロンが張り切っている。
大幅に強化されたシトロンだけだと、見た目はぬいぐるみのまま。
機敏入りのシオンさんが速射で牽制、シトロンがダメージソースになって、危なげなく勝った。
丈夫な山羊だから死ななかったけど、危ない処だった。危なげあったな。
焦げ茶と黒の斑だった山羊が、全体に赤茶色になった。
名前はブラッディ。
「これ程早く3級従魔を得られるとは思いませんでした。この後も精進致しますので、お導き下さい。フレアを迎え入れたいのです」
もう馬の名前も決めてあるんだ。ガトリングホースに赤いのいたっけ?
神戸のダンジョンは六甲西が5キロ、六甲下が10キロ。
先に5キロボスドロップと北上の確認をする。
ダンジョン内の入り口付近に、神戸中華街の出店があって、食事は主にそこでする。
当然ダンジョン内の方が調理スキルが生きるので、こちらが実質本店になっている。
一時、中華は周辺諸国を侮蔑する名称だと言って、禁止運動が起きたが、法で禁止されるようなことにはならなかった。
日本では自然に収まったが、台湾が国名を台湾民国にした。
六甲西は富士森と似たようなモンスターが出る。
富士森と違うのは、イノシシと鹿が出るくらいか。
ボスは丈夫一点張りの大イノシシ、六助。
突進速度は速いが、動きは単純。
ボスはエリアの境界や霧の壁、出口に当たっても出られないが、運動エネルギーを吸収されたように止まって、激突はしない。
ボスエリアには見えない高さ制限があって、手の届かない処から一方的に射撃は出来ないんだけど、突進以上に飛び付きは単純になる。
隙を見て撃ち、以蔵が高周波ブレードで重傷を負わせて勝った。
出たのは強健のスキルオーブ。防御力と回復力が上がる。
「これはまた、みんなを呼ばなきゃ駄目だ」
「そうしてもらえると有難い」
まだ先行隊長の、アカギツネのエインヘリヤル三隅少佐が、肯く。
第1攻略隊になるのは4月からだそうだ。
北上で出て来たのは、豹より一回り大きい焦げ茶と茶の二毛猫だった。
やや毛が長いが、どう見ても家猫。
「フュージョンモンスターです」
ズズちゃんが言う。
「獲る? アンディもだいぶ強くなったから、やれると思うよ」
「天駆はとれるんですよねえ。でも、一回パスさせて」
「では、欲しい方いますか」
フュージョン希望者が二人とも希望した。
順番は決めてあったので喧嘩にはならない。
170センチを越えている女性が、顔は山猫なのに体が赤トラのオオヤマネコと共に挑む。
手裏剣ばら撒きからの射撃の間に、ファミリアが横に回り込む。
横っ飛びで避けた処に気弾が当たる。
一瞬止まった隙に、胴にファミリアの頭突きを食らってしまった。
倒れたモンスターにファミリアが押さえ付けるような連続猫パンチ。
その間に頭を撃たれて、終わってしまった。
霊晶甲は琥珀なのかべっ甲なのか。
ネコさんチームの誕生である。
午後に一人エインヘリヤルを増やして帰ると、中年の男が外の監視所で待っていると連絡された。
シオンさんの父親を名乗っていると言う。
ダンジョンの乗った石板の上なら暫く変身したままでいられるので、安全のために変身したまま行ってみると、挨拶もせずに立ち上がって声を荒げた。
「詩音、どう言うつもりだ。顔も出さんとは」
「浄化師を洗濯女と侮った家など、顔を出す必要はありませんでしょう」
「そのような子ウサギ一匹手に入れただけで、随分と強気になったな」
シオンさんはわざと顔が見えるように、シトロンを抱えて持っている。
どう見てもぬいぐるみで、短い角が武器ではなく可愛さを増している。
「この子は見た目では判らないほど強いのですが、この子だけではありませんよ」
シオンさんが一旦仕舞ったブラッディを出す。
「なんだと、3級従魔?」
「ええ、実力がなければ得られないのは、ご存じでしょう。クオンに縋って譲って貰った訳ではありませんよ」
「なんだ……」
男が黙った。
「もう用がないなら、飯食おうよ」
アイちゃんが雑に言う。
「なんだ、貴様」
「挨拶もしないでいきなり怒鳴りだした、非常識な奴に名乗る名はない」
男の握りこぶしが震えているが、変身しているフュージョナーに生身で殴り掛からない、最低限の常識はあったようだ。
「五条電子CEO、五条満隆だ」
「日本国防衛軍、特異領域軍八王子駐屯隊、北大谷古墳跡先行隊長今村竜一中佐、の今のところ一人娘、今村愛理」
「マダラオオカミの娘か」
「10キロダンジョンの先行隊長くらいは知ってるのか」
アイちゃんがおもちゃを見つけてしまった。
止めるのは僕の役目。
「限がないから、ご飯にしよう」
「誰だ、お前は」
貴様とお前はどっちがましだろう。
「日本国防衛軍特級有能協力者、内山俊春」
「特級なぞない」
「僕の為に新設されたんだ。プライバシー保護で、軍は意図的に外に出さない様にしている。でも、地方に行って、地域ボスみたいなのに絡まれたら名乗れって言われた」
「なんだと」
「ご飯にしましょう」
「
自称シオンさんの父親のおっさんを残して、ダンジョンに戻る。
流石に追いかけては来ない。外で待っていたってことは、適性値が低すぎて入場許可が下りないのか。
「申し訳ありません、お見苦しいものをお見せしてしまって」
「シオンさんが謝る筋合いのものでもなし」
なかったことにして、夕食にする。
シオンさんにもう1体3級ファミリアがいれば、5キロボスは討伐できる。
それでもいいけど、まだ適性値の上りが少ない。
2級を獲ったら、一族も文句の言いようがないだろうと思う。
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