第12話 どうすればよいのだろう
赤鷲の情報は帰投と共に全国の軍に知らされ、翌朝には民間と外国にも伝わった。
機密にしておく必要もない。8キロの回し車エリアなんて、軍が本気で行かないと入れないから。
見た処機動性はいいようだけど、そこまで行って手に入れたいのは色に拘る人間だけじゃないかと思われる。
日曜は夕飯を食べて帰る予定だったけど、夕食の時に気になっていたことを大社少佐に相談した。
「5キロボスエリアの北って、回し車と同じですよね」
「そうよ」
「今の僕が行ったら、何か出て来ませんか」
「出るかもね」
「アルミXLからスキルが取れるのかも気になってます」
「そうね、延長する? 来週いっぱいうちの方で」
「それはいいです」
「ならなぜ聞くのよ」
「ずっと気になってたんで」
「こっちが気になっちゃうじゃない」
「誰かに
「悪い病気なの? 内山君が気になった事なら報告して当然だから、群司令に
あっという間に、日本だけでなく世界中の軍関係者と政府関係者に、悪い病気が
上のエリアで出ていたものが下で出るだけでなく、今までなかった物が出る。比較的楽な場所で。
何が出るか、気になってしょうがない。
春と聞かねば知らでありしを。
家に帰ったら、お母さんに
西門は、お母さんに僕を産ませた男だ。
「何で今更」
「あなたの能力を聞いたんでしょ。日本中の軍の上の方の人が知ってるから、どこからでも漏れるわ」
「で、なんだって」
「会って話が出来ないかって」
「出来ないって言ってやって。で、なんでお母さんに言って来るんだ」
「あなたはVIPよ。親族の緊急連絡でもなけりゃ繋がないわよ」
「そんなことになってたんだ」
「ずっと休みなしに仕事してて、その辺は聞いてないのね」
そう言われるとそうだなと、改めて気付く。
上位エリアの霊圧が怖くなくなったら、疲れもしないので、休みなしの仕事だと感じなかった。
軍の人達もその辺は感じないみたいだった。
二人きりになって、アイちゃんに聞いてみた。
「お義父さんが仕事で疲れたって言ったことあるかな。ダンジョンに入るようになってから」
「ないね。日本は無理をさせないから大丈夫だって」
「軍の人達がやたら仕事させたがるように思ったけど、自分が出来るから出来ないと思えないんだろうね」
「そうかも」
「それで、体調はどう」
「全く問題ないね。てか、ずっと絶好調な感じ」
「ならいいか」
「うん、思い切りしていいから」
そういうつもりで聞いたわけじゃないが。
月曜に天狗党首領の格好で学校に行ったが、誰も気づかない。
席に座ってから、タラオを呼ぶ。
「オーイ、タラオー」
「俺、もう駄目だ、シュンシュンが呼んでる」
「コッチコーイ」
「マジで聞こえる」
「いや、ここに居るから」
「やばい、なんか、ぼんやりと見える」
「ほんとに居るって」
隠れマントを脱ぐ。
「おお! おま、何様なの!」
「それは違うだろ」
まともに話が出来そうもないので、もう一度マントを着た。
「そんなに感じるのか。何がだ。霊力、心力、適性値、どれも僕より多い人はいくらでもいるが」
「どう言われたって恐れ多いわ」
「なにか漏れてるのか。コントロールの仕方があるのかな」
「出来るんならしてくれ。現状お前、居なかったり居過ぎたりするわ」
「居過ぎるってなんだよ」
ミャーちゃんが寄って来た。認識できていなかったのか。
「ねえ、こないだの4級オーブの契約書、まだ持ってる?」
「あるよ」
収納から出して見せる。
「一つちょうだい」
「この紙ならあげる。受けるの?」
「期間が2年になったの」
「そりゃよかった」
先生が来たので、不気味なお面をかぶってみる。
何も言われない。
暫くすると装着感がなくなるので、着けたまま迎えに来た車に乗ってしまった。
「何だか変じゃない?」
富士森で四分谷少佐に言われて気付いた。
て言うか、顔が隠れてるのも判らないのか。何処で僕と判断してるんだ?
他人が着けているのを見ていない。誰も着けたがらない。
ダンジョンに入ると、四分谷少佐は牛同士が戦う闘牛の牛くらいある、赤毛の狼を出した。
「2級ですか」
「そうよ。あなたのお陰。タツジって言うの」
「なんか、ぎりぎりな」
「ママがおかしかった頃に、ちょっと付き合ってた」
アイちゃんが睨み付ける。
「離婚したし。あれだけの男には排泄なのよ。するなって言うのが無理」
「それは判ってるつもり」
みんな早く終わってくれないかなって思ってる。
僕が止めるべきだとも。嫁姑の争いかよ。
「行きましょう」
さっさとお狐様を倒す。
「今日は行ける処まで北に行くのね」
「はい、お願いします」
4級オーブがゴロゴロ出て来る。嘴マスクも出たので、洗い替えだと言ってくれた。
浄化すれば洗う必要はないんだが。
短剣サイズの霊晶は、セカンドウェポンとして人気が出ている。
行政者が健康維持にダンジョンに入る時の、ファッションアイテムにもなっているそうだ。
ブドウの他に、無花果がなっている。増えたファミリアが採って来る。
「なんだか、森が豊かですね」
「あなたが来た時だけね」
「他にいないんですか」
「浄化師以外は適性値上げるにはスキルレベルが必要だったり、上がったりするから。浄化師で戦闘が出来ての条件でも、あなたが最初に言っていたように、場の霊圧に耐えられないのよ。レベルは2じゃないと駄目みたい。そこまでは努力で上げて、それ以上上がらないのは運営の所為だから」
「正直、今の僕は以蔵がいれば、クモザルに勝てそうなんですけど。やらなくていいのかな」
「適性値下がってないでしょ」
「以蔵を融合した時3上がって、その後も1上がってます」
「なら、それでいいんじゃない」
「キュ!」
誰かのリスが警戒音を出す。
斑の狐がこちらを見ていた。
「フュージョンモンスターです」
「獲る?」
「いえ、飛べるのがいいです」
リスのマスターの男の人が寄って来た。
「やらせて下さい」
「いいわ」
リスと共に前に出る。
近くの木を駆け上がったリスに向かって狐が跳ぶ。
マスターが撃つが、空中を蹴って避けた。
「空跳持ちか」
十字手裏剣を撒いて気を引き、撃つが避けられる。
左に回り込むように走りながら手裏剣を投げ、射撃するが、狐は巧みに避ける。
「これでどうだ!」
叫んだマスターを見据えた狐の背中の毛が、飛び散った。
リスが乗っている。
リスを振り落とすために空中で回転した狐に、初めて射撃が当たる。
リスは尻尾を膨らませ、手足を開いて落下、軽く着地した。
思った方向に蹴りを放てなかった狐が背中から落下し、頭を撃たれる。
起き上がろうとした狐の後ろ足のアキレス腱を、リスが斬った。
もう一撃、頭を撃たれて狐は倒れ、結晶の山になった。
崩れる山から琥珀色の珠が現れる。
「ああ!」
マスターが掴んで両手で握りしめる。
体が細くなり、女体化して行くのが見ていて判る。
「終わりました」
「変身する?」
「いえ、今はいいです」
「じゃ、行きましょう」
時間まで北に行ったが、狐は現れなかった。
北口から出て、南口に回る時に、斑狐のフュージョナーになった人に、お礼を言われた。
「6キロエリアでは霊気が濃いせいか、フュージョンモンスターに勝てなかったのです。攻撃力がなくて」
「良かったですね、獲れて」
「はい、本当に有難う御座いました。わたしは男の体が嫌だったのです。子供を産めるようにはなれませんが、この体になれて幸せです」
性同一性障害の人だったのか。
5キロボスエリアのフュージョンモンスターを見つけるのは、人の役に立つのか。
このまま行ける処まで行ってみるか。
「あ」
「どうしました?」
「適性値が1上がりました」
気の持ちようで上がるなんてこともあるのか。
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