戦闘力のない浄化スキルで足掻いてみる
袴垂猫千代
第1話 所謂不遇職
世界中にダンジョンと呼ばれる事になった異空間が出現して、10年経った。
18歳以上で入場するか、15歳以上でモンスターを討伐すると、普通の善人ならば、身体能力とスキルが記載されたプレートが手に入る。
所謂ストレージのような、個人用の空間収納も得られる。
殺人はもちろん、殺人教唆や被害者を自殺に追い込んだ者、事故でも重過失の者も貰えない。
今の日本ではプレート無しは、歩いているだけで逮捕される。
僕、
温暖化の影響で夏がどんどん熱くなり、関東は亜熱帯と言われていて、
6年前から夏休みが7月1日から9月15日になった。
ダンジョンの外見は、厚さ1メートル直径50メートルの石板に乗った、長さも直径も10メートルの半石柱で、断面の直径も10メートルで横から見れば灰色の石柱なのに厚みがない。
全て入り口は真南、出口は真北を向いている。
内部は明るい曇り空くらいの明るさで、昼も夜もない。
幅10メートルの中央の道が直線で出口に繋がっている。
2キロ以上奥は道にもモンスターが現れ、この富士森公園は、5キロ先に反対側に出られる出口がある。
10メートルの中央道の、右横の5キロ先にいる通称ボスを単独討伐すると、出口から入れるようになる。
左側の4キロ5キロは穢れエリアと呼ばれていて、呪われたような重圧のある空間で、特別な許可を得た者以外は、民間人は入れない。
異次元の穴が開いたとか、異世界と偶然繋がったとかではなく、誰かが故意に造ったとしか思えない物だ。
プレートがあるのにこれが自然物だったら、それはそれで別方向に謎が広がるんだけど。
外から見た大きさは同じだが、中が10キロのものが、4年前に出現した。
日本には5キロが38、10キロが18あり、10キロは全部5キロのある県にある。
ダンジョンなし県と言う差別が生まれている。
八王子は市街地に5キロの富士森公園と10キロの北大谷古墳跡があり、2つの距離が世界一近い。
半円の両側には特異領域軍の監視所があり、半円の中は乾いた赤土色の道の両側に草原が見える。
向かって右側の監視所に、戸籍抄本と学生証と入場許可申請書を出して入場許可証を貰い、強力水鉄砲と、柄と穂先が一体形成の銅製の菊池槍を借りた。
素人にはこれが一番使いやすいと言われている。2メートルあるが、片手でも扱えるくらいに軽い。
中にある監視所の兵士に入場許可証を見せて、道の右の疎林に行く。
左は50センチくらいのカマドウマのドンマちゃんと、もう少し大きいエンマコオロギのコロギーが出て来るので、プレートを持っていない者が1人で入るのは危険。
右は直径2メートルほどの、茶色い縄が絡み合ったようなのたくる触手の塊、這い寄る焼き
5メートルくらいの高さに、監視カメラを搭載した気球が幾つか浮いている。
地面に置いておくと徐々に溶かされてしまうのだが、浮いているものは溶かされない。
ぽそぽそ立っている木を枝振りの外から眺めて、張り付いている巨大ヒルを探す。
黒いべったあは木から離れる時には、思い切り体を縮める反動で2メートルくらい跳べるので、木に近寄ってはいけない。
下も見ていないと危ないので見ていると、僕の胴より太い木の根元に縄の塊みたいのがあった。
探していない方が見つかるのは、お約束みたいなもんだ。
水鉄砲で撃つと、ぬたぬた近寄って来た。
オーラバリアみたいのがあるので、物理攻撃で仕留めようとしたら、最弱のこのモンスターでも対物ライフルが必要なんだけど、全くダメージがなくても攻撃されているのを感じたら向かって来る。
適当に木から離れたら、菊池槍の根元を持って振り下ろす。
向こうが振り回すツタは1メートルもないので、一方的にザクザクしていると、突然崩れてグラニュー糖みたいな結晶になってから、じわじわ消えた。
後に直径1センチの球体の霊核(英語だとマナコア)が残る。
拾おうとしたら、体がふわっと膨れる感じがした。
【 属性 風 融合適性 本体融合 従体2体
術技 浄化1 収穫3
基本技能 跳躍 敏捷 打撃 刺突 斬撃
霊力11
敏捷12
攻撃6
防御8
持久9
器用11
心力10
適性値38 】
頭の中に情報が一括開示される。
従体はファミリア若しくは従魔と呼ばれていて、装備扱いで収納できる。
従体の数は一度決まると増えない。
属性は血液型占いみたいなものと言われていて、今の処特別な意味がない。
第一取得術技、ファーストスキルが浄化だと、支援職に分類される。
今は中学生から危なくない入り口付近で野イチゴ狩りをさせるので、収穫は大概おまけで付いて来る。
何を示しているのか判らない適性値は、善行値とも呼ばれていて、故意犯は明らかに低くなる。
日本は15歳なら30、18歳は35が善良な一般市民の最低値。
公的免許と選挙権は30以上、被選挙権は35以上が条件になっている。
最初に得られる術技が能力の適性を決めて、戦闘用じゃないとモンスターを倒して別のスキルを得るラーニングが出来ない。
別のスキルを得るには、1人でモンスターを倒して、稀に出る技能玉、スキルオーブを狙うしかない。
更に問題なのが融合適性の本体融合。
フュージョナーと呼ばれていて、特別なモンスターの霊核で生身を強化して、宝石様の皮膚の追加装甲「霊晶甲」が出せるのだが、男が癒合体になると、Y染体が欠損と見なされてX染色体化して、外見が女性化する。
生殖機能が失われる訳ではなく、卵巣の位置に精巣があり、子宮膣部を意識的に伸長して疑似ペニスに出来る。
霊晶甲を出すと見た目が、肉体の最盛期の10代半ばから後半になるので、変身少女戦士と呼ばれる。
最適化されるので、普通は美少女戦士である。
力を得るために男を捨てたとか言われる。
秘儀を修得するために去勢して、気色悪い女装したオカマのジジイになるよりはましとも言われているが。
更に、皮膚の追加装甲を出す時には一旦全裸にならないといけない。
服などを着ていると、変身時の防護用に少し大きめになるオーラバリアで破れてしまう。
普通の皮膚の追加装甲のモンスター革の装甲を着けていても、弾け飛ぶ。
収納があるので、モンスター革の装甲は仕舞ってから変身して、変身を解いてから元の位置に出せる。
地球産の服は地面か手の平にしか出せない。
「取り敢えず、登録してから
拾った霊核を収納して、独り言ちて道を戻った。
僕には種違いの姉が2人いる。
10歳上の上姉が
サキちゃんとユキちゃん。
お母さん、
僕の俊春は奇跡的に普通。
二人はお母さんが商業高校を卒業して入った会社の、既婚者の上司との間に出来た子で、縁を切って子会社に行って、そこの上司の子が僕。
二人の父親と別れる時は被害者扱いで、手切れ金で前に住んでいたマンションを買ったけど、僕の時はただの浮気相手で、なんとか養育費だけは受けていたらしい。
どっちの男も一度も見たことはない。
認知されてないんだから、会いに来るわけもない。
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