助手席の女の子
まだ携帯電話なんてなかった頃の話だ。
しかも、特に田舎町。夜9時ともなれば、もう出歩いている人間なんて、ほとんどいなかった。
嫌だな、あの電話ボックス…
最近、あの中で女の人がひとり自殺してから、
話によると、それは長い髪にピンクのカチューシャといった、その自殺した若い娘の姿そのもの、だという。
しかし、こうして車で…とはいえ、いったん家に戻って、あらためて父親のタバコの銘柄を聞いてから、また…なんて、もちろん面倒だ。
しかたない…かくして、車から降りると共に僕は、暗い中にボンヤリと浮かぶ、そのバス停脇の電話ボックスへと向かった。
翌日…
バイトも終わって、仲間と談笑中、店の裏手から店長がやって来て…
「Aくん、車に女の子待たせてるんだろ。ダベってないで早く行ってやりな」
などと、笑顔で僕に告げた。
が、
「女の子です…か?」
そう、ぼくには全く身に覚えがなかった。
第一、助手席に乗せるような女の子なんて、僕にはいやしない。
「ああ、君の車の助手席に、ほら…こう、ピンクのカチューシャをした髪の長い…」
「髪の長い…? カチューシャ…?」
などと店長の言葉を復唱するうち、
ええッ?!
思わず僕は心の中で叫んだ。同じくして、裏の駐車場へと駆け出す。
カチューシャ…髪の長い女の子…ま、まさかっ…
これもまた心で呟きながら、まもなく僕は駐車場へ。そして、すぐさま自分の車の助手席を確認した。
確認した…が、そこには誰の姿もなかった。
ホッ…
でも、まあ…そうだよな。うん。
だが、ホッとしたのも束の間。今度は俄に恐怖心が頭をもたげてくる。
ま、まさか…店長が見た女の子って…
もしかして、昨晩あの電話ボックスから、僕に付いて…もとい
その晩、僕は恐怖で眠れなかった。
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これは、私の子供の頃のお話と、友人の体験談とを合わせ、さらにアレンジを加えたものです。
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