第2話:サンドマン、レベルアーーーーーップ
「【四体】が限界か」
翌朝、森の中で、
大きさはリスくらいでそれほどではないが、魔力を分け与えることで
「グアアア」
「いけ、敵を――【倒せ】」
砂の剣を持った
料理を作らせるような細かいことはまだできないだろうが、戦う、守る、といった命令は問題なさそうだ。
耐久力は魔力で補強できるが、いかんせん土の依存度が高い。
魔狼の噛みつき攻撃を受けてしまい、一体がボロボロになるも、残りの三体が砂剣を突き刺して倒した。
ただふたたび手をふれば復活、魔力を多く分け与えれば強度もあがる。
しかし遠距離操作にも限界があり、離れすぎると身体が徐々に崩れていき、コントロールを失うだ。
このあたりは”レベル”をあげていけば操れる範囲も増えるだろう。試運転としては上々だ。
これから先、自由を謳歌するには強くならなければならない。
なぜなら【フリファン】では、とにかくイベントが多いからだ。
盗賊、山賊の類はもちろん、冒険者同士の小競り合い、国家間の争いまで。
そのすべての脅威に勝てる力を持てなきゃ自由なんて謳歌できない。
屋敷では肩身が狭く、大っぴらに訓練はできなかった。
記憶が戻ってからは早朝や深夜にこっそりしていたが、今後は気兼ねなくできる。
まずはイメージを突き詰めるのがいいだろう。
俺は【砂の国】を作る。
【フリファン】を知っている俺だからこそ、この世界が平等とは程遠い事を知っている。
既存の国を良くするなんて不可能だ。
だから俺は、自由で笑顔の溢れる国にしたい。
けど、それにはまず、俺が笑顔にならなきゃいけない。
「よし、
別に声に出す必要はなく、イメージがしやすいので叫んでいる。
四体の砂女子が
ちなみに砂スカートをヒラリとめくると、砂しか見えない。
俺がもっと強くなると色も付けられるかもしれない。ハァハァ。
続けて現れた魔狼を【シン・砂女子】で倒す。
一体にすると安定感はあるが、敵を翻弄できる利点を捨てるほどではないかもしれない。
【フリファン】は敵と戦ったり、魔力を鍛えるとレベルが上がる。
いずれは戦いながら分裂と合体を繰り返して操作することもできるだろうし、何だったら【シン・砂女子マーク改II】も作れるかもしれない。
いや、【シン・砂女子遠距離砲Ⅲ】で岩を弾に変えてバンバンと撃ってもいいだろう。
人造砂人間も作ろう。真ん中に乗り込めるやつ。
――サンド、砂に乗れ、乗らないなら帰れ。
ぐふふ、ぐふふふふ。
そんな砂妄想をしながらレベルをあげつつ進んだ。
砂女子を操作しながら戦って、夜は砂の家で眠り、時には砂遊びをして。
数日後、ようやく街が見えてきた。
名前は確か【アープル】。
他種族の住まう街で、宗教や風土、様々な事がごっちゃ混ぜになっている面白い街だ。
イベントもたくさんあったはずだし、冒険者ギルドだってある。
まずは冒険者となり金を稼ぐ。
家ではろくなご飯が食べられなかった。
お前の砂は大したことがないから、大したことがないご飯がちょうどいいと。
執事や家政婦が助けてくれなければ、俺は飢え死にしていたかもしれない。
「さて、いい
国を作るのはとても大変だろう。いくら俺が【フリファン】が大好きだからといって統治まで完璧にできない。
頭のいいやつはもちろん、能力が高いやつ、仕事ができるやつ、おもしろいやつ、音楽ができるやつ、砂遊びに付き合ってくれるやつ、色んな人を仲間にしていく必要がある。
地面に手をかざしながら崖に魔力を付与し、岩肌をつるつるにすると、滑り台の完成だ。
一気に下まで、と思っていたら、後ろから魔物の声が聞こえた。
振り返ると、魔狼がわらわらと俺を狙っている。
「何だ、敵討ちか?」
最後にとんだ
「グロオオオオオオオ」
「――恨みはないが、悪いな」
地面に手を置くと、砂がせり上がる。
やがて砂はボールのようになり、魔狼を瞬時に囲った。
これは俺の考えた新しい魔法。
名前は、
……むちゃくゃかっこいい名前だ。
【フリファン】ではスキルの名前は自分で付ける。
ネーミングセンスがないと言われていたが、きっと俺のセンスが妬ましいだけだろう。
「――じゃあな」
ゆっくり拳を握り返すように砂を閉じると、魔狼が一撃で息絶えた。
そのとき、脳内に声が響く。
レベルアップの音だ。
名前:サンド
レベル:2⇒3
体力:C
魔力:C
気力:B
スキル:【砂】
操作可能砂量:3㌧
装備品:ブラックジャケット ホワイトシャツ ブラックソックス
スキル:
ステータス:砂もいいけどお腹もすいた
称号:世界もびっくり
試しに【砂量】を出すと五体に増えていた。砂量はステータスだと多く見えるが、複雑な魔法だと扱える量も減る。
次は
まったく、俺の名前のセンスは世界一だぜ。
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