第22話 反転重力場
勇者ポシェット=エルグランディスの能力は俺が考えていた以上のチート能力だった。
各将軍個々の実力やそれぞれの軍の規模も把握できていない為何とも言えないが少なくともウチのビースト軍団が攻め込まれたら一巻の終わり、という事だけは理解できた。
「大体の内容は分かりました。勇者ポシェット=エルグランディス、確かに脅威ですね」
「ほう……偉く涼しい顔をしているな。今の話を聞いても勝算有りと踏んでいるのかな?」
レモンバーム将軍が興味深そうに訪ねてくる。
正直現時点では何とも言えない。普通に考えれば無理ゲーだ。
だが……いや、ある程度情報の確証が得られてからでないと行動には移せないな。
「私の案を述べるより、もう少し現状を把握したいのですが宜しいでしょうか?」
「うむ。他には何が知りたいのだ?」
「そうですね……まずは今私の隣に座っている勇者エルグランディス。彼はプラムジャム将軍が傍にいる限り危害が及ぶことはない。先ほど将軍本人がそう仰っていましたよね? それはどういう事ですか?」
ここまでの話から俺の隣に座る青い髪の勇者エルグランディスはレベル30相当の
それが無害? そりゃおかしな話ってもんだ。
「ソレはな……私ニも良く分からないノダが私ガ傍にいる時は彼ラは大人シイのダ。」
「プラムジャムから少し離れると手が付けられない位に暴れるのだがな。こうして傍にいる時には落ち着いたものだ」
「タダシ彼らハ私ヲ椅子として扱おうトする節がアッてな。拒むとそれはそれで暴れるカラ彼らトいる時ハこうして仕方なく椅子とシテ生きる覚悟を決めているのダ……ア……チョットあんまり体重掛けなイデ……」
やっぱりな。
危害が及ばない「理由」は特になしか。特別な拘束具を付けているようでもなかったからそんな気はしていたが……。
「隣のエルグランディスの話だとプラムジャム将軍の支配地でもあるアトランティス大陸は解放されたと言っていましたが……勇者に敗れて占拠された……という事で宜しいので?」
「ヨ、宜しイワケあるカ!! 今でも私の統治下にアルワ!!」
プラムジャム将軍は耳からピッピーと蒸気を吹き出して怒っている。
「五月蝿いぞ。汽笛を鳴らすなプラムジャム。その耳そぎ落とされたいのか?」
「ヒッ……こ、これハ生理現象ノ一種でアリ決して悪気がある訳ではナイのダ」
先ほどの真空刃がよほど恐ろしかったのか悪くもないのにペコペコとレモンバーム将軍に謝罪するブリキ。
(お前等同格のはずだよな……)
「ピクルスよ。確かに勇者ポシェット=エルグランディスの軍勢は強力で『機械兵団』の善戦虚しくそのほとんどの地区の支配権は無くなってしまったのだ」
やっぱり占拠されてんじゃねーか。
「しかしプラムジャムは一人メカチックシティの科学機能のキーとなり
「
「メカチックシティを中心とした重力結界の事だ。理屈はよく分からんがメカチックシティにある一つの建物を中心として大陸全土から内側に重力が掛かっている」
「重力が内側にですか……つまり」
「ツマリ勇者達の殆どはメカチックシティ内に閉じ込めてアル、という事サ。私の力でナ!」
おぉ……なんだ、結構凄い奴なんだなこのブリキ将軍。
「まあ流石は超古代文明の遺産と言った所だな」
「あまり褒めるナヨ、レモンバーム、照れるゼ」
「いや、お前は褒めてないぞ? むしろ重力に圧し潰されて死ねば良かったとさえ思っている」
「……」
「クェクェクェ―。だがこの
「そう。その為プラムジャムは定期的にメカチックシティに戻って自分が動くための動力を核からチャージしているのだ。だがそれもそろそろ限界でな。これ以上
「だから面倒な事は抜きにして北の大地をプラムジャムごと吹き飛ばしてしまえばいい。私の『呪術軍』はこの時の為に術を磨いて来たのだからな」
(この時の為なんだ……ブリキ将軍が憐れすぎる)
プラムジャム将軍は四つん這いになったままフシューフシュ―と機械音を鳴らしながら答える。
「い、イイのだ。ミックスベリー、アールグレイ。元々は身から出タ錆、それニ魔王様のお蔭で動いてイル命でもあるノダ。
急に殊勝な事を言い出すプラムジャム。
「良く言ったプラムジャム。では早速我が呪術軍の全勢力を持ってしてメカチックシティごと吹き飛ばしてやろう」
「い、イヤ……レモンバームには言ってないカラ」
「見苦しいぞ。とっとと覚悟を決めろ鉄くず」
「ヒ……ヒィィィィ!! み、ミックスベリーィィィィ」
すがる様な目でミックスベリー将軍に助けを乞うブリキ。
(可哀想に……しかしレモンバーム将軍も頭は切れそうなのに意外と大雑把な性格だな。分析はできるけど計画は立てられないタイプか?)
正直呪術軍とやらが本当に町ごと吹っ飛ばしてくれるならそうして貰いたい。危険を冒して戦闘する必要がないならその方が絶対いいに決まってる。ブリキ将軍を助けてやる義理もないしな。
「無茶を言うなレモンバーム。そんな事が許されるはずがなかろう」
「それにいくらお前の軍でも一発でメカチックシティを吹き飛ばすのは無理ってもんだぜ。勇者を倒すより先に重力場の方が壊れちまうクェ」
まあそうだよな……そんな事ができるならとっくにこの将軍は実行してそうだ。
「対案も出さずにグダグダ抜かすなオタンチン共。貴様らの獣の皮も剥いでやろうか」
またガヤガヤと揉めだす将軍達。
はぁ……どちらにしても勇者ポシェットを倒すには行くしかないか。
北の大地アトランティスへ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます