短い揺れ
不快な警報音が大音量でスマホから流れた。緊急地震速報だ。直後、カタカタとモノが静かに揺れ始めた。静止して揺れの度合いを判断しようとする。大きいのが来る?
そう思った直後、ガタンと縦に激しく揺れた。やばい、大きい!
対処するまもなく、テーブルの上に置いていたコップが床に落ちて割れた。
食器がカシャカシャなっている音が聞こえる。遠くで何か落ちた音もした。
やばい。危ない。ピクシーは? どこ?
「ピックー!」どうしたらいいか分からないまま部屋を見渡す。
「ピックー、どこ?」また何か落ちた音がした。
まもなくして揺れが収まった。その場から動けず、状況をゆっくりと飲み込もうとする。もう大丈夫……?
びっくりした。こんなに大きな地震久しぶりだった。
目の前にテレビのリモコンがあったので、それを手に取り、テレビをつけると、ちょうどバラエティ番組からニュース速報に切り替わった。震度四。震源地では震度五強となっている。大きかった。
ピクシーが見当たらない。
「ピックー? ピックどこ?」
キャットタワー、カーテンの裏、お気に入りのキャットハウス。どこにもいない。身体の小さな子猫だから、どこか家具の隙間に隠れ込んでしまったのかもしれない。
「おーい。ピクシー?」
ベッドの下を覗くと、ピクシーはそこにいた。いつでもすぐに走り出せるように姿勢を低くした状態で、そこからじっと動かないでいる。顎は引き、口はへの字、目は点になって、何が起きたのか分からない顔でこちらを見ていた。さらに、耳は横にピンと張った「イカ耳」状態になっている。
怪我はしてなさそうだ。
「ピクシー、もう大丈夫だよ、出ておいで」
手を差し伸べようとすると、サっと動いてさらに奥に行ってしまった。警戒しているようだ。
興奮してそうだし、しばらくひとりにさせておいたほうがよさそうだと思った。
そういえば、さっきコップが割れたのだった。また地震がきた時、モノが落ちてピクシーが怪我しないよう、家の中を少し片付けるか。
緊急地震速報の警報音に驚いたのか、揺れそのものに驚いたのか、そのどっちなのか分からないけれど、とにかくピクシーは揺れた時すぐにベッドの下に隠れたようだった。
姿勢を低くし、ベッドの下に隠れ、動かないでいる。
これがすぐにできるなんて、地震発生時の行動としては、よくできた猫だ、と思った。
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