とある大学生たちの会話
とある大学生たちの会話。
「なあなあ、なんか面白い話して」
「なに、どした、唐突じゃね?」
「いや、講義まで時間あるし。なんか、ねぇの?」
「急だな、おい。お前こそなんかないのかよ」
「え、俺? そうだなぁ……」
「ほら、すぐに出てこねぇじゃん」
「あー、あるある」
「言ってみ」
「面白いと言えば、猫ミームってあるだろ?」
「あぁ、ショート動画のやつ?」
「そう。猫同士が会話してるやつ」
「それがどうした?」
「あれ見てて思ったんだけどさ。猫って定期的にバズるよな」
「たしかにな。ちょっと前にも『どんな箱にも入る液体猫』とかもバズったな」
「そうそう。でさ、もうちょっと前にバズった猫のやつ覚えてるか?」
「なにそれ? どんなやつ?」
「『宇宙猫』ってやつ」
「あーあったあった。小学生ぐらいの時じゃん? 宇宙と猫のコラ画像のやつだよな」
「そうそう。宇宙空間の写真背景に、猫がいるやつ」
「自分の理解の範囲を超える存在や出来事に遭遇したときに使う画像だよな」
「そう。それ」
「まさにお前みたいな存在に出会ったときに使うやつだよな」
「うわ。ひど」
「事実だろ」
「おま、やば。……あの猫の顔が独特だよな。驚いてる表情っていうか、『えっ!』って顔で一点を見つめてる目」
「あぁ。茶色い猫のやつだろ? 理解できないって顔してるよなアレ」
「そう」
「目が点ってやつ」
「だな。元々は海外で『スペースキャット』って名前で流行ったらしい」
「へぇ。知らんかった。で? なんで今さら『宇宙猫』なんだよ。どこが面白い話なんだ?」
「あぁ、この前、猫ミーム見てるときに、そういや昔、『宇宙猫』ってのもあったなって思いだしてさ」
「で?」
「猫同士が会話している猫ミームと繋がったんだよ」
「何が?」
「今でこそ『宇宙猫』ってフツーに使われているけどさ、『宇宙猫』っていうのは、実は猫は宇宙から来た宇宙人……もとい〝宇宙猫〟ってことなんじゃないかって」
「は? なに? どした急に? 頭ぶった?」
「いや、真剣」
「なんだよ、〝宇宙猫〟って」
「いや、だからさ。世界中にいる猫は、宇宙から来たスパイじゃないかって思ってるんだ」
「意味わかんない」
「だってさ、考えてみろよ。猫の目。あのつり上がったアーモンド型の猫の目ってグレイの目にそっくりじゃね。それに、猫って誰も居ないところでニャーニャー鳴いてることあるだろ? あれ、絶対、宇宙と交信してんだって。人間の生活を監視して、その報告してんだよ」
「おう、おう。ずいぶんと飛躍した話だな」
「いや、スパイだって証拠、他にもあるんだよ。例えばさ、あいつら暗いところだと目が光るだろ。ヤバいってあの目。地球上の生き物じゃない証拠だって」
「お前さ、中学生みたいな発想だな」
「いや、考えてみろって。あいつら、いつの間にかそばに来て、こっちじっと見てるときとかあるじゃん。あれなんか絶対監視してんだろ」
「あー。はいはい」
「信じねぇの?」
「まぁな。お前の話だし」
「狭いところにも難なく入るあの液体猫だって、高いところから落ちてもスルリと着地するあの身体能力だって怪しいだろ」
「いや、猫だしな。動物だから身体能力は高いだろ」
「人間社会のまねして、会話してる風の猫ミームだって、実は本当に猫同士は会話してるのかもしれないぞ」
「あれはネタだろ」
「お前、知らねーぞ。宇宙猫が地球侵略を始めるかもしれないんだぞ」
「どっからそんな自信が出てくんだよ」
「警告なんだよ。俺ら猫たちは全てを理解してるぞって」
「その辺にしとけ」
「世の中の猫は、猫同士で情報連携してんだよ。みんな繋がってるんだって」
「あー、はいはい」
「『宇宙猫』も『液体猫』も『猫ミーム』も流行らせたのは〝宇宙猫〟なんだよ。俺ら人間に何か警告してるんだって。それを気づいて欲しくて、定期的に猫をバズらせてるんだよ。もう始まってるんだよ」
「分かった分かった。信じる信じる。あ、ほら、もう始まってるぞ、講義」
「あ、おま、ちょっ。信じてねーな」
「すまん。ちょっと理解が及ばない。まさに今あたし『宇宙猫』状態なんだけど」
「お前、上手いな」
その会話を聞いていた少し後ろの大学生たちの会話。
「あのカップルさ、いつも漫才みたいな会話してるよね」
「ね。ふたりともカップルだと思えない口の悪さだよね」
「ね、会話だけじゃ理解が追いつかないと思う」
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