海鳴の潜泳者

潜《クグル》

潜泳者試験

第1話 潜泳者

僕はいままで何者にもなれなかった。

ずっと人に支えられてばかり、自分で自分を鼓舞したって

結果はいつまでも実らなかった。


だが、そんな駄目人間な僕は今日生まれ変わる。


潜泳者ダイバーになるのだから。




第1話  潜泳者ダイバー


僕たちが住む都市リボラテはリボラテ海洋に面する小さな島の上にある。

この世界はいまから約2000年前におこった大災害によって9割の陸地が海に沈んだ。

したがって人類がいままで築き上げてきたすべての技術と多くの命を失い、ごく僅かに生き残った幸運なもののみが生を感じることができるのであった。

技術や優秀な人材を失った人類たちは原始的な暮らしを強要されている。

そのために潜泳者がいるのである。


潜泳者の仕事は旧人類たちが残した文明の片鱗を海のそこから引き上げることだ。

生身と言うわけにもいかないため海に生息する生物たちの皮を剥いで作った特殊なスーツを着用する。とにかく、人の役にたつにはもってこいの仕事なのである。


潜泳者になるためには18歳以上である程度の運動神経を持つものでなければいけない。

といっても潜泳者になるための試験自体は志願制であり誰でも受けることができる。

その試験に合格し最終面接に受かることができたもののみ海を自由自在に泳ぎ回る潜泳者となれるのだ。


今日、潜泳者適正試験が行われる。ここでいきなり受かることで僕の人生は一歩先に進むのだ。

潜泳者になるための心得を心の中で復唱する。

『第一に自分の命』

『第二に仲間の命』

『第三に危険生物の有無』

『第四に文明跡テッカー


この日のために努力してきた。絶対にいける。心地のよい緊張感を楽しんだあと、僕は会場に足を踏み入れた。

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