第137話 黄金の援軍。


加藤かとう『チックショおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』


 最初に店内に響き渡ったのは、加藤の叫び声だった。


マリアさん『ツメが甘いですね!』


 どうやら勝ったのはマリアさんのラブリンビームらしい。

 ってことは……金剛力士像消滅した?


金剛力士像『か、完敗でやんす!』


 あれ、ご存命なんだけど。


マリアさん『私にUNOウノで勝とうなんて百年早いですよ!』


 ビーム対決はああああああああああああああああああああああああ?


 なんでUNOで勝敗決めてんだテメーら。

 明らかにビームの撃ちあいしてたよね。お互いのビームが逸れずに衝突する音鳴らしてたよね。

 そっからどう道を外したらUNO対決に逸れるの?


マリアさん『ふふっ。あなた方の敗因は、最後の一枚になった時に【UNO】って大声で叫んだからですよ』


 え、それがルールじゃないの?


マリアさん『そういう時は誰にも聞こえないくらいの声でボソッと言うのがコツなんですよ』


 それズルじゃねーか。

 居たわそーいうやつ。小学生の時に居たわUNOでそういう姑息な手使う奴。

 なんで向こうで小学校の昼休みみたいなこと繰り広げられてんだ。


マリアさん『さあ、敗者はとっととこのお店から出ていってください』


 間もなく、金剛力士像と、清キラの制服を着た加藤が奥の部屋から出てきた。

 二人は俺に気づくと、


「申し訳ないでやんす城ヶ崎じょうがさきの兄貴! オイラたちはここで退場でやんす!」


 悔しそうに言うと、金剛力士像はドタドタと足を鳴らしてメイド喫茶から出ていった。


「流石はメイドを極めし者だったわ」加藤は言った。「相手の隙を突くのが上手かった。まさか私たちに聞こえないほど小さな声でUNOを宣言するなんて!」


 それズルっていうんだけど。


「私が大声でUNOを宣言したばかりに!」


 いやそれがルールだから。今回に関してはオマエが正しいと思うけど。


「城ヶ崎くん、あとは頼んだわよ。大丈夫、もうすぐトアリさんが変装して忍びこんでくれるから。メガネくんの魂を奪還できるはず」


 ふふ、と笑ってから、加藤はメイド喫茶を出ていったのだった。


 ……え、アイツら何しにきたの? UNOしにきた?


 早くも魔王軍の戦力半減したんだけど。メガネくんの魂のアリカ微塵も掴めてないんだけど。


「ほっほっほ! 大したことなかったですね!」


 と、ご満悦な様子でマリアさんが奥の部屋から出てきた。


「皆さ~ん☆ 邪の者は退けたぞい☆ 引き続き、楽しんでいってくださいね~」


 マリアさんが大声で言うと、他の男性客が「は~い」とデレデレに返事をした。


「流石マリアさんね」岩田先生は言った。「ところで城ヶ崎くん、私とUNOしない? 今なら八千円で出来るキャンペーン中よ」


 なんでUNOの方がポッキーゲームより高いんですか?


「今日、あと八千円以上売り上げを出せば私の人気ランキングも上がるのよね」


 いや知りませんし。

 生徒からぼったくってまで上がる人気ランキングに価値を見出す教師はどうかと思いますが。


「遅くなりました!」


 と、メイド喫茶に何者かが入ってきた。


 ギシュリという音も聞こえた……。


 ま、まさか……。


早乙女さおとめ勇気ゆうきくんの魂、奪還しに来ました!」


 そう声を荒げたのは、間違いなくトアリだった。

 防護服を着たトアリだった。


 しかし、しかし……。

 いつも着ている白い防護服ではなく……。


 ピカピカの、金色の防護服を着ていた。

 黄金の防護服は、店内の照明を反射してキラキラ輝いている。


(え、ええええええええええええええええええええええええ?)


 変装はあああああああああああああああああああああああああ?

 まんま鞘師さやしトアリじゃねえか。忍び込む気ゼロじゃねーか。

 てか眩しっ。見てるだけでキラキラ眩しいんだけどぉ。


「な、なんですって? この店のナンバーワンの私より輝いているう?」


 マリアさんは驚いた様子で言った。

 いや確かに輝いているけども。ピカッピカだけども。輝き方の方向性違くね?


「はっ! いけないいけない! どんなに輝いていてもお客様! 妬んだりしてはいけない! いつも通り接客するのよマリア!」


 いや向こうの輝き方は物理的なものですが。

 太陽が眩しいとかそんな感じ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る