第90話 名コンビ(sideM)


「よお、メガネくん」


 と、城ヶ崎じょうがさきくんが声をかけてきたのと同時、


早乙女さおとめくん、奇遇ですね、こんなところで会うなんて」


 ギシュリと鞘師さやしトアリさんも登場。

 二人はそれぞれお土産が入った袋を持っている。

 鞘師さんが持つ袋からは『破魔はま』と木刀がはみ出ている。


「あ、二人とも……。もうお土産買ったんだ?」


「ああ。ついでにお参りも終わらせといた」


 な? と城ヶ崎くんが隣の鞘師さんに言った。


「早乙女くん。あそこの神社、『なんでも願いが叶う』らしいですよ」


「えっ、何でも?」


「ええ」鞘師さんはギシュリと頷いて、「さっそく、城ヶ崎くんがジーから人間になれるように願ったら人間タイプGになりましたし」


「だから俺はもとから人間だっつの!」


 ツッコむ城ヶ崎くんを、鞘師さんはサラリとスルー。


「早乙女くんは何か叶えたいこととかあります?」


「え、ボク? まあ、そりゃあ、うん。ある……かな」


 へえ~、と声を揃える城ヶ崎くんと鞘師さん。

 なんだかんだで息がピッタリだなと、ボクは笑みを零してしまっていた。

 それを見てか、城ヶ崎くんと鞘師さんは頭に「?」を浮かべて顔を見合わせていた。


(うん……ボクの願いは一つだけなんだ……)


 人は『ささやか』だと笑うだろうけど、ボクにとっては大きな願いがあった。


「ま、いっか」城ヶ崎くんは言った。「とにかく時間までには戻って来いよ。バスに置いてかれるぞ」


 隣で鞘師さんがギシュリと頷く。


「じゃあまた後でなメガネくん。ほら行こうぜトアリ」


 歩き出した城ヶ崎くんに、鞘師さんが続く。


「またお会いしましょう、早乙女くん」


 すれ違いざまに、鞘師さんは言った。


「うん。またね、城ヶ崎くん、鞘師さん!」


 城ヶ崎くんは背を向けたまま手を振り、鞘師さんはギシュリと親指を立てて去っていった。


「ていうか城ヶ崎くん、メガネくんじゃなくて早乙女くんですよ」


「んなこと知ってるっての。ワリーけど俺はもうあだ名で呼べるくらいの仲なんだよ」


 というやりとりが、かすかに聞こえてきたのだった。


(ふふ……。またね……二人とも……)

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