第50話 六神獣の行く末


 昨日のダメージがまだ抜けていない左頬を擦りながら、俺は駅前の集合場所にいた。

 もうすぐ集合時間の午前十時になる。きよキラ高校の制服に身を包んだ生徒たちが大勢集まる中、奴がまだ来ていなかった。


「遅いな……。まさかサボるつもりじゃねえだろうな」


 対策も練ったし、絶対に行くと約束したから、来てくれるはず……。

 俺が三度みたび、腕時計を確認した時だった。


「あら城ヶ崎じょうがさきくん、ご機嫌いかが?」


 岩田いわた先生だった。黒スーツをばっちり着こなしている。引きつった笑みを浮かべた岩田先生を見て、俺は後退りをする。


「……おはようございます岩田先生……」


「あらあら、何を恐がっているの? 城ヶ崎くん?」


「え? 別に恐がってません――」


 ガシッと、岩田先生が肩に手を回して、耳打ちしてきた。


「いい? 昨日のことを言いふらしたら命は無いわよ?」


「な、何のことでしょう?」


「とぼけるつもり?」


 言いつつ、岩田先生は昨日ビンタを放った俺の左頬をギューッとつねった。


「城ヶ崎くん、普通の高校生活を送りたいわよね?」


「え、ええ……」


 岩田先生はつねる力を強める。


「だったら大人しく言うこと聞きなさい。いい? あの歳であの色の下着着てた~とか言いふらしたら命は無いわよ? 分かってる?」


「わ、分かってますって。言いませんよそんなこと」


「ならいいのよ?」


 離れた拍子にデコピンを放つと、岩田先生はツカツカとヒールを鳴らして教員の集まりに混じっていった。


「はあ……。折角汚名が晴れると思ったんだけどな……」


 俺が左頬を擦っていると、


「皆さん、極悪ごくあく非道ひどう六神獣ろくしんじゅう魔王まおうの城ヶ崎俊介しゅんすけには気をつけましょうね!」


 バカ(加藤かとう律子りつこ)がメガホンを使って叫びながら、目の前を通り過ぎていった。


「まさか微妙にグレードアップするなんて……」


 はあ……と、俺はため息を吐いた。

 その時だった。

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