第17話 その現象に名前はありますか?(sideM)


(大丈夫かな、城ヶ崎じょうがさきくん……)


 城ヶ崎くんと警官二人はしばらく喋ると、


「なんだ、キミだったのか」と眼鏡の警官。


「不審者が居るって聞いて駆けつけたから、どんなやつかと思ったよ」とゴツイ警官。


 城ヶ崎くんは、「いやー、誤解させるようなことしてスミマセン」と笑って、三人は和やかなムードで話しだした。


(大事おおごとにはならなかったか……)


 ボクはホッと一息吐いた。にしても城ヶ崎くん、警官と知り合いって感じで話してるけど何でだろう。

 ……もしかして、あの悪い噂は本当で、中学時代によく警察にお世話になってたから?

 いやいや、まさか……。


「じゃあ俺は先に戻ってるよ」


 と、眼鏡の警官がコンビニを出て行った。


「朝は大変でしたね」と城ヶ崎くん。


「ははっ。まあ、なんてことはなかったけどね」とゴツイ警官。


 朝ってなに?

 ホントによくお世話になってたりする?


「にしてもきよキラの生徒かー。オレもなりたかったよ」


「いえいえ! そんな! ただのエリートですって!」


 やらしいよ対応が。早速さっき練習したこと発揮してんじゃないよ。


「オレの警察手帳と清キラのワッペンを交換できたらなあ」


 何を言い出してるんだアンタは。


「いやいやいや! 確かに警察手帳を遥かにしのぐものですけども!」


 失礼だよ城ヶ崎くん。


「オレもそう思うよ、羨ましいなあ」


 あなたには警察官としてのプライドは無いんですか?


「うーん、オレの拳銃と交換ってのはどうかな?」


 なに言い出してんの? あなたホントに警官か?


「いやー、それは無理ですね。拳銃とか使い方知りませんし」


 そういう問題じゃなくね?


「今なら手錠もセットで付けるから。ね?」


 なんでさっきからカードゲームのトレードみたいなノリになってんの?

 そんな軽いものじゃないよね。

 え、ボクがおかしかったりします?


「なーんて、冗談はやめとこうか」と警官。


「そうですね」と城ヶ崎くん。


 なんだ冗談か紛らわしいな。美容師と客みたいなノリで話さないでくれる?


「あ、そうそう」


 と、城ヶ崎くんは警官にヒソヒソ耳打ちした。そして、


「なるほど、了解した」


 言うと、警官は何故か、僕の方に真っすぐ歩いてきた。


「ちょっとキミ、良いかな?」警官がノソッと正面に立つ。


「え、あの、何か?」


 ボクが怯えていると、警官は「ちょっと待っててね」と飲料コーナーで飲み物を取り、そのままレジで会計した。のちに、ボクの方にやってきた。


「これ、あちらのお客様から」


 と城ヶ崎くんを視線で差しながら、警官はボクにオレンジ色の炭酸飲料(500ミリリットルのペットボトル)を渡したのだった。


(え、えええええええええええええ?)


 なにそのバーでよくある『あちらのお客様からです』のやつ(この現象の名前知ってる人居たら教えてください)。


「キンキンに冷えてますよ」


 言うと、警官はグッと親指を立てて城ヶ崎くんの方に戻った。そして城ヶ崎くんはボクと目が合うと、グッと親指を立てる。


(……なんだかよくわからないけど……)


 良くわからないけど……と思いながら、ボクは弁当を買ってコンビニを出た。


(城ヶ崎くんは……)


 城ヶ崎くんは、皆が思っているほど悪い人じゃないと思いました。

 そんな日でした。

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