ウイルス・エンカウンター 〜SideMも添えて〜
ハトノショ
【1部】 第1章 出会い
第1話 高校デビューしよう!
真実を映し出す銀色の悪魔にいくら念じたところで、顔のランクが変動することはなかった。
体長一六〇〇ミリという、高校一年生男子の平均値を下回る数値が変動することも、貧弱な体型が筋肉ムキムキマッチョマンになることもない。
分かってる……と己を諭しながら髪型を整えようとするが、生まれ持ったクセ毛はなかなか定まってはくれず、いつもの寝ぐせヘアになってしまうのだった。
(分かってる……分かってる……)
恵まれているものといえば『
あと、ツッコミどころがあると我を忘れてヒートアップしてしまい「なんかヤベ―奴」と周りから距離を置かれがちなところ……なのはむしろ欠点か。
ならやっぱり俺には城ヶ崎俊介というカッケー名前しか取り柄はないな。
普通……。それは俺にとって究極のコンプレックスだった。
『名前は格好いいけど、他は中の中ランクだよね(笑)』
女子のその一言が、俺の胸に深く突き刺さっていた。何かと心が撃たれ弱い中学時代に言われたからだと思う。
――でも普通なのは昨日までのことなのだ。何せ日本で五指に入るほど偏差値が高い、
(大丈夫……俺は普通じゃない……。今日から俺も、あの清キラ高生なんだ……)
清キラ高校に入った者は、必ずエリートの人生を歩むことで有名だ。
高校からエスカレーター式で上がれる付属大学は世界ランキング上位に食い込むほどで、一流企業への就職率はかなり高い。
だから今現在、親が最も入学させたい高校ランキング一位を十二年連続で獲得しているスーパー高校なのだ。
男女ともに制服は普通だが、左胸に『清』と青字で書かれた赤いワッペンが貼られていて、制服姿で街を歩けばエリートと指差される。
普通を脱却するため、俺は血を吐くほど勉強してその高校に見事合格した。
そう、もう俺は『普通』ではない。その弾みで色気づいた俺は、髪を染めるという未知の境地に走っていた。
ほんのちょこっと茶色くなった程度の染めだが、俺にとっては大きな冒険だった。
新たな自分の姿を見て自信が出て、清キラで高校デビューしてリア充生活満喫してやると息巻くほどノッていた。
「よっしゃ、行くか!」
俺は誇り高き学ランの第一ボタンとフックを丁寧に掛けてから、家を飛び出た。
学生鞄を肩に掛けて通学路を歩いていると、学校側から予鈴が聞こえてきた。
HRの予鈴だろう。家から学校が近いからといって、のんびりし過ぎてしまったらしい。
(やっべ……。初日から遅刻とか……)
走り出し、曲がり角に差し掛かった時だった。
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