第5話 旅立ちそれは……あいうえお順
いきなり身体の力が抜けて混乱していると、神子が俺の前にしゃがみこんだ。
――布が少ないんだからしゃがまない方がいいよ?
そう思いながら口に出来ない俺をどうかお許し下さい。
「魔力が切れたのですね」
「は? もう?」
俺はたった一回カードを選んだだけだ。それなのに魔力切れとは、魔力が少なすぎる気がする。
「もう一度魔法カードを発動してもらえませんか?」
「わかった」
俺は座ったまま「クレッシェレ!!」と叫んだが今度は魔法カードは出てこなかった。
「出てこない……」
つまり、俺は今のままでは一日一回しか、みぃ~みゃちゃんのカードが見れないということだ。
もうこの際魔法とはどうでもいいから、もっとみぃ~みゃちゃんのカードが見たい!!
俺は神子を見ながら真剣な顔で言った。
「ねぇ、魔力って使えば、使うだけ増えるんだよね?!」
「その通りです!! さすがリョウ様!! そんなにまで真剣に魔力を増やそうとされるなんて!!」
え?
どうしよう。意図とは違う方向の言葉!
俺が誤解だと言おうとすると、アルも俺のすぐ近くに跪いた。
「ありがとう!! リョウ!! 私たちのために!!」
私たち?!
なんか、語弊がありそうな言葉だけど、勇者アルと魔導士の俺の二人で旅に出るんだから……まぁ、それは……そうか……。
俺は二人を騙していると思ったが、本当のことも言えずに「がんばるよ」と答えたのだった。
それから俺は十日間で一日二回魔法カードを使えるようにまで成長したのだった。
必修取得単位その二、この世界の知識。
必修取得単位その三、この魔物の知識。
この二つは、魔法訓練の後、ふらふらになりながら可愛い顔をしてスパルタ気質の神子に、厳しく教えてもらった。
そして学んだこと。
この世界には生贄という習慣がある!!
この世界の魔物は魔素から出来ているので、繁殖で増えるのではなく、魔素が濃くなったら増える。
以上だ。
いや、もっとたくさん学んだよ?
それこそ、お金の単位や買い物の仕方、お風呂の使い方からトイレの使い方までたくさん。俺って、基本的知識が全くないので、結局は旅をするために最低限の知識を学んだだけだった。
これで俺たちは旅に出るのだ。不安しかないが、やらなければ終わらないので、やるしかないのだが。
俺たちは満月の夜に、この世界に来て始めに通された部屋で壮行会みたいなことをされた。
そして次の日。いよいよ旅に出ることになったのだった。
「アル様、リョウ様。お気をつけて!!」
旅立ちの日に、神子が笑顔で手を振ってくれた。俺よりもアルの名前が先に出て来たことが不満だが、あいうえお順ってことにしておこう!!
「いってきます!!」
俺は神子に全力で手を振ると、勇者アルと二人で不安しかない旅に出たのだった。
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